介護仕事 2021年ケアマネ試験受験者数から見る課題

在宅生活において居宅介護支援事業所のケアマネージャー(介護支援専門員)(※以下ケアマネ)の役割は大きいものです。

また、入居施設における介護計画書の作成においてもケアマネ資格は必須となっています。

以前このブログにおいて「介護転職 失敗しない職場選び【ケアマネ編】」でケアマネの仕事については具体的に紹介しました。

今回はケアマネの資格取得の受験状況や最新のケアマネの仕事事情などについて紹介致します。

目次

2021年 受験者速報

今月10日に実施された今年度の第24回介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数が、厚生労働省の公式サイトで発表されました。

ケアマネ試験の受験者数
JOINT参照

ケアマネジャーの受験者数は、2017年度までは13万人前後で推移していました。

ところが、受験資格の制度改定が行われたこともあり、2018年度試験は4万9,332人と前年度から約8万人も減少しています。

その原因の1つが、受験資格の厳格化です。

2017年度試験までの受験資格は、以下の4つのうちいずれかを満たせば良いとされていました。

  1. 国家資格等に基づく業務経験を5年
  2. 相談援助業務経験を5年
  3. 介護資格+介護等業務経験を5年
  4. 介護等業務経験を10年

ところが受験資格に関する制度改正が行われ、2018年度からは「国家資格等に基づく業務」「生活相談員」「支援相談員」「相談支援専門員」「主任相談支援員」の通算業務年数が5年以上、と規定されました。

2017年度までは認められていた3と4の受験資格がなくなり、十分な実務経験があったとしても、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)や上記の資格を持っていない人はケアマネジャーを目指すことができなくなりました。

未経験からケアマネ試験を受講する場合3年の実務経験で介護福祉士(国家資格)を取得し、それから5年の実務経験が必要となります。

年によりましうが、全国で新たなケアマネ有資格者が4分の1に激減しています。

keamae-image

居宅ケアマネが抱える課題

木居宅介護支援事業所で問題や困難と感じる点上位3位(複数回答可)

出典:『令和3年度介護報酬改定にあたっての要望』(日本介護支援専門員協会)を基に作成 2020年9月16日更新

受験資格要件による受験者の減少と上記「居宅の感じる問題」がケアマネの受験者数減少の要因のひとつになっているとも推測できます。

介護職員のみに導入された「介護職員等特定処遇改善加算」

ケアマネジャーの報酬の低さが目立つようになった原因の1つが、2019年10月からスタートした「介護職員等特定処遇改善加算」の導入です。

限らえた財政の中で介護職の賃金が多職種と比較し低いことから導入されました。

この新たな「介護職員等特定処遇改善加算」の対象者に居宅ケアマネは含まれていません。

介護職員等特定処遇改善加算は、「勤続根数10年以上の介護福祉士に、月額平均8万円の処遇改善を行う」の方針に基づいて制度設計が行われました。

今回の改定で課題も浮き彫りとなり運用に関してはある程度事業者の裁量の幅が広げられました。

その改定においても居宅ケアマネは対象となっていません。

また、本体の介護報酬に付随する提供体制加算においても介護福祉士資格者の割合は厚遇され、事業者の介護福祉士争奪戦が繰り広げています。

介護福祉士など介護職員の給与額はアップされ、厚遇で募集される環境です。

特にベテラン介護職員の中には、ケアマネジャーより高い賃金を得るという状況も生じ、介護職がケアマネジャーを目指す動機が薄れてしまいました。

上記の日本介護支援専門員協会が、昨年10月に要望書を提出した中でケアマネジャーの処遇改善に関しては、55.2%の事業者が「問題・困難」と回答しています。

居宅介護支援事業所は公正中立な立場と位置付けられていても単独運営で収益が出ない状況が併設サービスに頼らざるを得ないので、囲い込みの問題が発生します。

囲い込みの問題はサービス付き高齢者向け住宅だけの問題でなく、法人内の他サービス利用の囲い込みは現実には発生しています。

囲い込みが蔓延すれば、居宅介護支援の公正中立は崩壊し、ひいては介護サービス全体の信頼性を喪失させてしまいます。

ケアマネの囲い込みの問題。処遇改善と報酬単価、ケアプランの利用者負担、ケアマネ担当件数の緩和は全て繋がった問題です。

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まとめ

限られた社会保障費の中でケアマネジャーの報酬をあげていくには多くの課題があります。

介護報酬を議論する国の審議会で会長を務める慶應大学の田中滋名誉教授が、今月14日から16日にかけて千葉県の幕張メッセで開催された「医療と介護の総合展」で今後の課題について次のように述べています。

今後は85歳以上の比較的元気な高齢者が急増していくと説明。

元気であっても暮らしの中の困りごとが増え、それらの対応が「大きな社会課題になる」と指摘した。

医療や介護の充実だけにとどまらず、生活を支えていくという視点に立った施策の強化が一段と重要になるとしている。

医療と介護の総合展

大きく変わるテクノロジーにより、健康を維持しつつも、最新の家電がうまく使えない、キャッシュレス決済に対応できないといった困りごとに直面する社会課題が更に発生していきます。

在宅サービスを支えるケアマネには、公的サービス以外のサービス提案の幅も広がっていきます。

全て一度に解決は出来ませんが専門性を有した新たな世代がIOTを活用したケアプランニングには大きな可能性があります。

その若い世代がケアマネの仕事に魅力を感じ受験を行うような政策と規制緩和が必要となってきます。

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