人間の本性を考える: バカと無知

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紹介本『バカと無知 』人間、この不都合な生きもの / 橘 玲

今回久しぶり面白い本に出合えたので紹介します。

紹介する本は2022年に発刊された 橘 玲 著『「バカと無知 」人間、この不都合な生きもの』です。 

橘 玲 さんの本はこのブログで『幸福の資本論』や『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』など切り口が斬新な本を紹介しています。

『バカと無知 』の著者 橘 玲氏とは

(たちばな あきら )氏は、日本の男性作家。

本名は非公開。 早稲田大学第一文学部卒業。元・宝島社の編集者で雑誌『宝島30』2代目編集長。

日本経済新聞で連載を持っていた。海外投資を楽しむ会創設メンバーの一人。

「宝島30」編集長としてオウム真理教を精力的に取材した。1998年までに宝島社を退社。

日本から個人でアメリカ株を購入できないことに疑問を感じたことがきっかけとなり、海外投資をするためにオフショア銀行の口座を開設した。

このときの体験を『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』(1998年)に書き、人気を博したことから、「海外投資を楽しむ会」の友人たちと海外投資の方法を「ゴミ投資家シリーズ」としてマニュアル化していった。

デビュー作となる『マネーロンダリング』は、この頃に知った非合法な脱税法について小説化したもの。

正体不明の書き手の方が面白いと編集者に勧められ、ペンネームを国籍や性別が曖昧な「橘玲」とした。

1回限りのペンネームのつもりだったが、『マネーロンダリング』が予想外に好評だったため、『ゴミ投資家のための人生設計入門』の改訂版を橘玲名義で『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』として出版し、作家として独立。

wiikipedia 抜粋

デビュー作は経済小説の『マネーロンダリング』で初期の頃は投資や経済に関するフィクション・ノンフィクションが多いが、 2010年以降は社会批評や人生論の著作が多くどの分野も興味深い執筆です。

バカと無知とは

バカの問題は、自分がバカだと気づかないこと

本書では“人並み以上効果”を紹介し、多くの人が、自分は人並み以上の能力を持っていると思っている事例を紹介しています。

ある実験で、学生に対して“論理的推察能力”に関するテストを行いました。

このテストは、最低点0点~最高点100点、平均点50点になるように設定されたテストです。

まず、これを受ける前に学生たちに、「何点くらい取れそうか?」と質問をします。

その自己評価の平均は、66点でした。

これは、人並み以上効果によるもので、自分を平均点以上だと予測した、本来の平均の50点を大幅に超えた66点と回答します。

能力が低い人は自分の能力を過大評価する

この実験が面白いのは、成績下位25%の学生たちの平均点は12点でしたが、このグループはなんと平均して68点取れそうだと答えています。

実際は12点の人が、予測では 68点で、自分の能力を5倍以上過大評価しています。

一方で、成績が上位25%の学生たちの平均点は86点でしたが、予想時の平均点は74点でした。

成績上位者が点数を低く見積もるのは、「自分がこれだけ解けたから、他人も解けているだろう」と、他者を過大評価したがゆえの見積もりだということがわかっています。

この研究から、能力が低い人は自分の能力を過大評価し、能力が高い人は他者の能力を過大評価することが分かりました。

無知とは

無知とはそのままでですが知らない、わからないということです。

バカという定義は自分をバカだと気づいていないということですが、賢い人たちは何について無知なのかを理解しているということです。

このことは、人間のメタ認知能力に関わる重要な議論です。

メタ認知能力が低い人は、自らを客観的に見ることが難しく、自己評価が客観的な基準から乖離してしまいます。

一方、メタ認知能力が高い人は、自己評価を客観的な視点から行い、それに基づいて行動します。

このポイントを拡張すると、例えば、能力の高い人が自己評価を過小評価する理由には、自己成長への欲求や完璧主義的な傾向があるかもしれません。

彼らは自分の限界を常に超えようとし、そのためには自らを厳しく評価する必要があると考えるのです。

一方、能力の低い人が自己評価を過大評価する理由には、自己防衛や自己肯定感の欠如が関わっているかもしれません。

また、メタ認知能力が低い人は、自らを客観的に見ることが難しいため、他者との比較によって自己評価を行います。

そのため、彼らは自らを客観的な基準ではなく、周囲の人々と比較して評価する傾向があります。

このようなメカニズムによって、能力の低い人々は自己評価を過大評価し、能力の高い人々は自己評価を過小評価するのです。

民主制と意思決定

本書では、民主制がベストな方策を実現できないという議論も提起されています。

能力の低い人々が自己評価を過大評価する傾向があるため、彼らは自信満々に意見を述べ、その意見に従うことを求めます。

一方で、能力の高い人々は他者を過大評価する傾向があるため、彼らは他者の意見を重視し、自己の意見を控える傾向があります。

その結果、民主的な意思決定においても、ベストな方策が実現されないという問題が生じます。

このポイントを拡張すると、例えば、民主制において意思決定が行われる際には、参加者の能力や意見のバランスが重要です。

能力の高い人々が意見を述べる場合、その意見が優先される可能性が高いため、彼らの意見が全体の意思決定に大きな影響を与えることがあります。

そのため、民主的な意思決定が行われる際には、参加者の能力や意見のバランスを考慮し、公平かつ客観的な意思決定を行うことが重要です。

テクノロジーの発展と民主主義の相性は悪いとう側面もあるようにも感じます。

規模的にひとつの企業が国家を上回っているほど強大化したということもありますが、それよりもSNSに危険がはらん

2022年に起きた炎上件数・言及数

2022年に観測されたSNS炎上事件の総数は247件。(前年比119件増)
そのうち、炎上期間に言及された関連キーワードの総数は10,025,819、平均炎上日数は21日となっています。

WE LOVE SOCIAL 参照

バカな人間の割合は昔から変わっていないと仮定しても、SNSによって一人ひとりの発言は強くなっています

本書では、バカな人が騒ぎ、賢い人が黙るのであれば、SNSは魔の巣窟と化していると指摘しています。

また、日本においては、SNSで話題になったことをそのままニュースにするメディアも増えています。

ひとつの思想や発言がまたたくまに広がり、それが多数派の意見のように見えてしまう危険があります。

美男美女と幸福感

本書では美男美女にとってルックスが良いことが当たり前であり、それに対して得だと思ったり、幸福感を感じることはないとも提起されています。

美男美女がその他の人々に比べて得をする機会は多いかもしれませんが、本人たちはそれが日常であり得をしているという実感が薄くなるという指摘です。

幸福感に関係するのは客観的な魅力ではなく、主観的な魅力であるとされ、自己の魅力を認識することが幸福感に繋がるとされています。

このポイントを考えると、美男美女が自己の魅力を客観的に評価することが難しいため、彼らは幸福感を得ることができません。

彼らは自己の魅力を主観的に認識し、それに基づいて自己肯定感を維持する必要があります。

そのため、彼らは他者との競争や比較から逃れることができず、幸福感を得ることが難しいのです。

まとめ

橘玲氏の著書『バカと無知 人間、この不都合な生きもの』は、人間の心理や社会に関する興味深い洞察を提供しています。

この本を通じて、私たちは自己評価や意思決定、幸福感など、日常生活における様々なテーマについて考える機会を得ることができます。

正直「それを言っちゃおしまいよ!」て感じる部分も多々ありますが、常識とか新たな価値観や知識という面では、印象的な本でした。

これからも、橘玲氏の著書から目が離せないですね。

読者の体験と感想

読者の感想とレビュー

シリーズ3作目。細切れになってるので前作までの方が私は好きだったかなぁ。

興味深いと思ったことのメモ。

人のアイデンティティ(自尊心/自己肯定感)は所属する集団とその中の地位によって決まる。

すると社会は多数派上位/下位と少数派上位/下位の4つに分類される。昨今度々耳にする弱者男性は多数派下位に属し、男性であることしか誇ることがない非モテとなり、フェミニズムを脅かす。

一方スペックの高い女性は少数派上位に属し、マイノリティながら自らの手で自尊心を獲得して来たので、弱者男性と対立する。確かにこの構図よく見るなぁ。

読書メーター これっと さん参照

とても論理的に書かれた本であり、感情的に見ると言ってはいけないことが書かれている。 タイトルであるバカと無知は前半部分だけであり、前半部分が最も面白かった。集団で議論をすると賢い人だろうがバカに引っ張られる。それは人間の本能に関わる部分に起因している。バカは自分のことをバカだと認識しておらず、集団の中でハブられないように誇大して見せる。逆に賢い人は足を引っ張られないよう自分の能力を低く見積る。なるほど、自分もバカである可能性を頭に入れつつ生きていくしかない。

読書メーター akirasira さん参照

被害の記憶は重要、加害の記憶は価値無し。目立ちすぎて反感を買うと共同体から放逐、目立たないと性愛のパートナーを獲得できず子孫を残せない。欧米先進国の民主的な意思決定システムより、中国のような独裁の方が高いパフォーマンスを達成しているのではないかとの疑問。ワンマン企業が成功するのは独裁者の意思決定によってバカに引きずられる効果を避けられるから。バカと利口が熟議すると悲惨なことに。科学的知見を人種問題に適用すると差別主義者のレッテルを貼られ社会席生命を奪われる。PTSDは病者の大国の市民権となった。

読書メーター ky さん参照

痛快だった。
無知は良いが、バカはダメ。

バカとは自分の能力を過大評価する人。自分の能力以上に誇示したがるから、SNSなどによってバカな人の意見は拡散されやすい。
一方で本当に能力のある人は、思慮深く、決して自分の能力以上に誇示しようとはしないので、実はあまり目立たない。

研究データをもとにした理論を、「バカは〜」とまとめることで、とてもシンプルで分かりやすい。

無知を知り、バカにならないように、自らを戒めようと思った。

ブグログ ntreachの感想 参照

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