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介護保険制度は3年に1度改定されます。
2021年改定で物議を醸しているデイサービス新入浴加算について『改定デイサービス新入浴加算 ケアマネの壁』でも紹介しました。
今回は2月9日に公表された厚生労働省の最新の「介護給付費等実態統計」からみた新入浴加算の算定状況について紹介します。
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『改定デイサービス新入浴加算 ケアマネの壁』でも紹介しました。
新入浴加算算定わずか4%の算定
介護給付費等実態統計によると、従来の区分に該当する入浴介助加算(I)の算定回数は全体に占める割合は66.4%でした。
その入浴加算の上位加算として設けられた入浴介助加算(II)の算定はなんと4.0%しか、算定されていませんでした。
厚労省は新区分の評価を55単位/日に設定。一方の従来区分は40単位/日とし、それまでの50単位/日から10単位の引き下げされています。
安易に入浴加算を引き下げることへの抵抗も予測しての上位加算の新設と揶揄されかねない現状です。
新入浴加算は「利用者がそれぞれの住まいで、自分自身の力によって、あるいは家族などのサポートも受けながら、なるべく自立してお風呂に入れるようにしていく − 。」視点に基づく目的として、設けられています。
具体的な要件は、
- 専門職らが利用者宅を訪ねて浴室の環境を確認すること
- それを踏まえた個別計画を多職種連携のもとで策定すること
- 計画に沿った入浴介助を事業所で実践すること、などです。
実際に新入浴加算算定の届け出を行った事業所においても説明しても理解が示されず従来加算を算定している事業者も多くあります。
全国老人福祉施設協議会が昨年8月に行った調査の結果によると、事業者からは新区分については以下の様な意見が多く寄せられています。
- 「労力やコストを考慮すると算定は困難」
- 「利用者の希望がない、ニーズに合致していない」
- 「家族やケアマネへの説明、理解が難しい」
要件に利用者宅への訪問も含まれていることから、コロナ禍が算定率に影響を与えている可能性も考えられます。
新たなニーズの創造を厚労省が促す意図は理解できますが、それであれば、従来加算はそのままの加算単価で上位単価にする必要があります。
介護サービス開設時には収支計画を提出し事業に参入しまが、デイサービスの開設において初期費用で一番かかるのが入浴設備です。
仮に入浴設備に1000万の費用が掛かったと想定します。
2021年までの入浴加算投資回収試算
以前の入浴加算で地域密着サービスで月利用300人の方が全員入浴したと想定した場合300人×500円=150000円
水道光熱費を売上の4%で換算すると売上300万円想定で120000円です。
空調・調理等による水道光熱費と入浴に関する水道光熱費を3分の1で按分すると40000円です。
1000万÷(15万-4万)でおよそ90か月およそ7年半以上掛かります。
2022年以降の入浴加算投資回収試算
改定後の報酬単価試算すると300人の方が全員入浴したと想定した場合300人×400円=120000円
1000万÷(12万-4万)でおよそ125か月およそ10年半以上掛かります。
まとめ
簡単な試算ですが、設備投資等も報酬見込みで行うことから入浴加算の引き下げは投資回収出来ていない開設間もない事業者には大きな痛手となります。
在宅生活において一番困難となっているのが入浴であることを踏まえると機能訓練など設備投資をあまり要しない加算の引き下げとは大きく異なります。
障がい者の通いサービス「生活介護」などにおいては、重度身体障がい者の入浴ニーズに併せて制度で入浴加算がなくても、市の予算で補助している行政もあります。
グループホーム等で火災が頻回に発生し、スプリンクラー設備の設置義務が事後に設けられた際には、設置に係る設備投資に大きな補助金が設けられました。
設備投資に莫大な費用がかかる内容に関わる加算の引き下げについは、慎重な議論を進めて欲しいと思います。
今回の改定の算定状況は多くの事業者にとって、このインセンティブの見直しが減収の一因となっている現状が改めて浮き彫りになりました。
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