紹介本 『「超」入門 失敗の本質』 / 日本的組織の弱点

目次

「超」入門 失敗の本質 / 鈴木 博毅 

お勧め本紹介では今までに読んだ本の中で自分なりのお気に入りの本を紹介したり、人に紹介してもらって今後読みたいと思っている本なども紹介していきます。

今回紹介する「超」入門 失敗の本質は、大東亜戦争の検証を行い「失敗の本質」の解説書です。

原書は具体的に、ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦の6つの局地戦における戦い方を詳細に取り上げています。

日米の戦い方を詳細に比較し、後編で日本軍に足りなかったことを分析している形です。

原書「失敗の本質」も購読をしましたが、戦術的なことや当時の時代背景を詳細に描かれていて、理解に苦しむ事もありました。

「超」入門 失敗の本質は、現代に生きる私たちの学びとして、そしてビジネスシーンで役立つ内容でしたのでこちらを紹介します。

現在のコロナ禍の対応等、非常時における日本の組織構造の課題は「失敗の本質」から学べると、落合陽一さんをはじめ多くの方が勧められていてので、購入しました。

歴史から現在直面する課題を読み解く

「失敗の本質」で日本軍が敗北した大東亜戦争末期の戦術や組織・人災とも言える事実を読んでいくと、日本人としてはせつなくなります。

また、現在直面する日本の課題の多くも当時と原因が似ていることに不安も感じます。

当時の日本軍及び政府という大きな組織帯の意志決定までのプロセスが現在の日本企業における弱点にも通じます。

多くの学びがある本ですので、その中でも現在の日本の課題を優先し事例を紹介します。

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目的があいまいかつ失敗から方向転換できずない組織

各紛争の具体的な戦略は「失敗の本質」に譲りますが、日本では戦略目的があいまいなままに戦闘が開始されてしまいます。

時代背景として大東亜戦争開戦前は、圧倒的に物資や装備が不足していて「勝てない戦争」という認識でした。初戦を有利に展開し、講和・終戦までの戦略があいまいでした。

紛争の勃発時の指揮命令系統のあいまいさや命令内容が具体的でない例も多くあいます。

また、作戦が明らかに失敗していても、戦力をさらに小出しつぎ込んなど、悲劇を拡大させてしまします。

戦略・作成決定に関しても目的があいまいなままで「組織内の空気」によって作戦が決定されていくことは現在にも通じる内容です。

一方通行な権威主義

大東亜戦争前の日本においてエリート集団の多くは軍の上層部に所属し、個々においては学業・体力共申し分のない人材が揃っていました。

現場最前線の士気と能力も高く、戦略や作戦を決める上層部にも優秀な者が多くいました。

個々の能力は優れていても組織として指揮・命令がなされる場合に目的があいまいで最前線に意図が伝わらないことや愚かな判断が続き敗北します。

上層部が現場の声を活かせず、失敗を続ける作戦は、現在のコロナ対応にも通じ、組織が硬直し縦割りで非常事態に迅速に対応できない状況です。

リスク管理

東北の大震災と原発事故における日本的なリスク管理の危険性は今回のコロナ対応にも活かされることはありませんでした。

戦争を起こらない・起こさない前提で戦後憲法を運用してきた日本においては、国家緊急権がありません。

国家緊急権は戦争や大災害の際に憲法秩序を一時停止し、国民を守るための緊急措置を取る権限甚大な権限です。

他国では憲法などに緊急事態条項として規定されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大で、外出禁止違反者への罰則をはじめ、私権を制限する法整備が日本にはありません。

万一の事態に備えた計画が不在であることは戦前の日本軍と現代の日本組織に共通する大きな欠陥でもあります。

変化の激しい時代に、適切なリスク管理ができないことは、今後さらなる危険を生み出すことにつながります。

「想定外」という言葉でなくあらゆる視点でリスク管理を行い起こることは「想定内」で対応していく必要があいます。

過去の成功体験から打破

大東亜戦争の戦術の多くに日本軍が輝かしい成果を上げた日清・日露戦争が模範とされていました。

大東亜戦争の初期には大きな成果も上げました。その成功体験を信じ、上層部の硬直した考え方で、戦略をとらず、戦術を重視した戦法を取り続けました。

その結果、ガダルカナルの戦いで戦力を大幅に喪失することになります。

一方米軍は、日本軍の戦法を常に研究し対策・作戦で日本軍を圧倒していきます。

トライ&エラーを続ける米軍の進化に、日本軍は対応出来なかった事も敗因の要素です。

変化に対応できない 思考法の違い

日本は、新たな指標(戦略)や価値の創造、ルール作り、ゲームチェンジが得意ではありません。

既存価値の改良は得意で幕末の欧州列強からの技術習得でも、改善は得意です。

日本人が得意とする領域は、「職人芸」とか「練磨」といった同じ戦略の中でのプロセス改善です。

「カイゼン」が世界で通じたり、守・破・離などはこの典型的な技術習得法とも言えます。

戦争当初日本の職人芸に押されていた米軍が新たな指標(戦略)に打って出ます。

アメリカは、システムという指標で対応しtていきます。

例えば、当時日本の零戦の戦闘力は優れていて、1対1の戦いでは勝てないと理解すれば戦略を変更します。

単独飛行から2機1組の体制とし、重装備を施した1機が標的にされている間にもう1機が攻撃する挟み撃ちに戦術を変更します。

このような日本軍の熟練された職人技に対して、システムを取り入れ、日本人の指標を無効にすることに成功します。

この概念の違いを『失敗の本質』では次の様に紹介されています。

シングル・ループ学習 = 問題の構造が固定的だと考えること
ダブル・ループ学習  = 問題の構造は変化することもあると考えること

(例)前者は「高い技術」のみがビジネス唯一の成功要因だと盲信すること。
(例)後者は「技術」以外にもビジネスの成功要因があると考えることです。

まとめ

80年代には自動車・家電など世界市場を席巻した日本企業が、現在、苦戦・敗北をしています。

モノ作りに関してはプロセス改善や職人芸は活かされ品質で他国を圧倒していましたが、その時代は長くは続きません。

モノ作りの市場原理は労働力の安い地域で品質を担保出来るようになれば、日本から中国・東南アジアに生産拠点はシフトしていきます。

しかし、日本企業も日本人も努力を怠っているわけでは決してありません。

だからこそ、既存の戦術に固執して無残に敗北した、日本軍と同じ失敗を疑う必要があるのです。

現在アメリカ経済を牽引しているGAFAMもモノからコトへのゲームチェンジで大きく飛躍した企業です。

日本が世界市場を席巻する前にモノ作りで世界を席巻していたゼネラル・エレクトリック等など今でも名を馳せる企業は提供価値を大きく変容しています。

失敗の本質に出てくる事例は戦後70年以上経った現在においても日本の組織の弱点であり続ける現実があります。

多くの人が旧日本軍の失敗の本質を知り、優秀な個々は現代組織に活かそう考えます。

組織という同調圧力から抜け出し、起業家を称賛する文化が日本に根付けば多くのジレンマから開放され、変化出来る可能性も感じていきたいと思っています。

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