紹介本 『落合陽一34歳、「老い」と向き合う』

目次

落合陽一34歳、「老い」と向き合う / 中央法規

この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。

今回は情報テクノロジーの専門家である落合陽一さんがここ数年仕事で「老い」に関わる取り組みを行った経験を活かし書かれた本です。

このブログの介護に関わるブログでは介護に携わる仕事の現状や課題について紹介してきました。

今の制度設計では今後増え続ける高齢者の数にサービス提供者が圧倒的に不足する未来があり、その課題克服のためにはテクノロジーによる解決は必須です。

この本の冒頭で落合さんは、高校生の頃、アルツハイマー型認知症を患わった祖母に会うため訪れた老人ホームに行った頃から、「老い」にかかわりたいという想いを醸成させて様に感じています。

医学者でも生物学者でものない、テクノロジーの専門家ならではの関わりで、将来の介護現場が変化する可能性の為に挑戦を始めらています。

本 イメージ

世界はデジタルネイチャーへ移行している

「老い」に限らず落合さんは、「現代はデジタルネイチャーに近づきつつある」という前提に立って思考している様です。

「デジタルネイチャー」と落合さんがデビュー作「魔法の世紀」で提唱した考え方です。

ここでは、「デジタルネイチャー」すなわち計算自然とは、コンピューターとそうでないものが親和することで再構築される、新たな「自然環境」と説明しています。

テクノロジーが発展し、質量ある元来の自然と質量なきデジタルの自然が親和する、サイバー空間と現実空間の区別つける意味がなくなった世界を「デジタルネイチャー」と読んでいます。

デジタルネイチャーが自明となった世界では、ロボットは限りなく人の近づき、人もロボットに近づく未来です。

コンピューターの所在を意識することなく使える環境「ユビキタス・コンピューティング」の世界の将来は20世紀から予測されていました。

いまやあらゆるモノがインターネットにつながった「IOT」の時代になっています。

読書イメージ

「老い」を考え「成長」を定義し直す

人間は元来ある程度身体や能力を拡張しながら生きてきました。

視力を拡張するためのメガネや共同作業のための腕時計などです。

老いることで自然に無理しすぎないようになり、そこに平均寿命がのびたことも重なり、よそ見できる時間増えたととらえることができます。

社会がどんどん多様性を帯びていく可能性もあり、働き方や生き方、好きな死生観の中で生きるようにもなると考えています。

現在の日本の介護は人に介護される「二人称」的で機械に介護されることは「一人称」的でも「三人称」的でもあります。

現在の介護職は看取り介護という「二人称の死」に向き合い続ける仕事でもあります。

養老孟司さんとの対談で養老さんは「死」を三種類に分けて考えられています。

  • 自分自身の「死」を指す「一人称の死」
  • 自分の親しい人の死のことを表す「二人称の死」
  • 赤の他人の死を意味する「三人称の死」

臨床を通じて患者と親しい関係になると、患者が亡くなったとき「二人称の死」となります。

トラウマを抱えることを避けるため「三人称の死」のほうにずらし、データの集まりとして見たがるよう変わってきた様です。

今でも介護施設で亡くなられたとき葬式に参列する光景を目にしますが、言い換えると利用者の死を当事者的にとらえ「二人称の死」となっているのが介護の現場とも捉えられます。

介護職が他者の「死」といかに向き合うか、死に対するストレスをマネジメントすることが重要になってきます。

発展するテクノロジーと変わる「老い」

介護というイメージについて一般の多く方は介護職が高齢者が乗った車椅子を後ろから押しているように思われていると落合さんは言います。

落合さんは、「人の手による介護」というイメージに固執してしまうことに疑問を投げかけ、テクノロジーが浸透すれば、よりよい介護を実現できると信じています。

私自身も他業種から縁があり、介護事業を運営する会社でマネジメントに関わってきましたが、デジタルテクノロジーの話が出ると「人の手による『温もりを重視』すべき」という反応です。

介護保険制度がスタートした頃は制度が浸透しく為に報酬単価も高く人員体制にも余裕がありました。

事業運営者は利益が出ることで持続的な経営が行えるのであり、利益には高稼働率と適正な人員配置が必要です。

少人数の利用状況から利用者が段階的に増えていく過程で適正な人員配置であったとしても職員の増員が無ければ介護事故が発生するというような訴えは現場から聞こえてきたものです。

この本にも説明されていますが、「介護」という言葉には明確な定義はありません。

介護保険法第一条にある「要介護者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」にサポートする定義には「人の手による介助」という内容は含まれていません。

高齢化問題が深刻化する日本では、「人の手で行われる温もりのある補助」は重要な側面だとしても、それだけでは全ての人を支えていけない現実を理解していく必要があると思います。

「身体の機能の補完」としてテクノロジーによって身体機能が補完されてきた「メガネ」や「補聴器」を使うことである程度日常生活を送ることができたいます。

身体の補完はサイボーグを目指すのではなく、言い換えれば「身体の拡張」ともとらえることが出来ます。

紹介されたテクノロジー

  • 「パワードスーツ」「HAL
  • 耳で聞かない音楽会
  • xDiversity

「介護テクノロジー」のいま

後ろから押す必要のない自動運転いす

Telewheelchair]は遠隔操縦自動運転車いすです。

車いすにARカメラや360土撮影可能な全天球カメラを組み合わせた遠隔操縦自動運転車いすです。

遠隔操作以外にも、障害物を自動で検知して停止、発進したり、前方の車いすを後続の車いすが認識し追従あうる「カルガモ走行」もできる。

網膜投影型ディスプレイ

通常の遠視や近視、老眼といった症状は、ピンと調整機能の衰えや障がいによりおこります。

メガネ等ピント調整機能ですが、網膜投影ディスプレイは調整機能を用いず直接投影するアプローチのため比較的クルアにものを見ることができます。

失語症の方を手助けできるメガネ型デバイス

OTON GLASS」は字が読めない「失語症」や「ディスレクシア」の人向けに開発されたスマートグラスです。

日本国内で盲学校、福祉施設を中心に購入され、多くの方を救っています。

髪の毛で音を感じる装置

Ontenna」は、ヘアピンのように髪の毛に装着することで、振動と光によって音の特徴を感じることができるインターフェイスです。

音楽や映像作品を楽しむだけでなく、日常生活で使用することができるため、電話やインターホンに反応出来たり、交通事故防止につながると期待されています。

ろう者にオーケストラを聴いてもらう

「耳で聴かない音楽会」「変態する音楽会」「交錯された音楽会」は聴覚障がいのあるなしにかかわらず楽しめる音楽会は日本フィルハーモニー交響団が演奏したクオリティの高いイベントです。

その音楽会では、Ontenna」に加え以下のようなデバイスも使用されました。

  • ボディソニックは音を振動に変換し、身体中に音を伝えます。
  • SIUND HUGは振動で音楽を視覚と振動で感じられる風船型のデバイスです。
  • LIVE JACKETは振動で音楽を体感できるジャケット型のウェアラブルデバイスです。

足首の動作を再現した義足

xDiversityでは義手・義足の研究や社会実装にも取り組んでいます。

サイボーグ義足

歩く、座る、階段の上がり下りといった動作を想定したロボット義足です。

特徴的なのは、従来のバネやバンバーを用いず、能動的に関節を動かすモーターやバッテリー、コンピューター、センサーを搭載して人の足の動きに対応する仕組みです。

乙武義足プロジェクト」にも利用されています。

途上国向け義足

途上国で使用されることが想定された、安価でクオリティの高い義足です。

材料から技術まで全て現地で調達することで、安価で提供することを実現しています。

競技用義足

障がい者アスリートの多くは100万近く費用がかかる義足のオーダーメイド開発が経済的事情で叶わず、自分に合わない量産型の競技用義足の装着を余儀なくされていました。

その課題を改善することを目標に国内外の選手と契約しています。

日本におけるパワードスーツ

日本におけるパワードスーツ先駆けはロボットスーツHALです。筑波大学発ベンチャー企業で現在、ドイツの保険機関を事業パートナーとし、世界展開を進行中。

そのほかにも「マッスルスーツ」・「アシストスーツ」・「パワードウェア」・サポートウェアの「DARWING」などさまざまなパワードスーツの開発・商品化が進められています。

「まごころ」のケアの困難さ

まごころのこもったケアを重視するあまり介護職に大きな負担がかかっている現状を見過ごさずテクノロジーと両方に価値があり、ある程度テクノロジーにシフトする考えを唱えています。

介護職に高齢者と家族のような関係を築く要請こそが介護職の過重労働につながっているという問題提起もなされています。

今の介護職に求めらている過剰なコミットメントは美徳ではなく、歪と感じている落合さんに共感します。

良質な信頼関係の構築手法を否定しているのではなく、「労働」としては正しくありません。

例えば、看取り時に職員が毎回「死の責任」をストレスというかたちで与えられている状況は改善が必要です。

人間的な「見守り」を担うテクノロジー

見守りの手動の例はナースコールです。ナースコールと同時に居室のテレビ画面が切り替わり介護職員が映し出されるだけで利用者の安心感は向上します、

人とコミュニケーションをとってくれるロボット

家族型ロボット「LOVOT」についはこのブログでも紹介しました。

大切な家族との、次世代コミュニケーションツール「BOCCO」や気ままな同居人ロボット「ニコボ」、

テーブルトップサイズのロボットプラットフォーム「Sota」などさまざまなロボットが開発・普及しつつあります。

外出が支援できる分身ロボット

会話のみならず、「外出する」という行為を支援してくれる技術開発も進められています。

遠隔操作ロボットと活用することで「移動」が拡張されます。

子育てや単身赴任、入院など距離があり行けない人のもう一つの身体、それが「OriHime」です。

まとめ

テクノロジーの発達により、身体機能の補完や情緒的なケアのサポートを誰もが手軽に活用できればサ高住や介護施設に入居したりする必要性が薄れる可能性もあります。

ケアインフラ整備が進んだ社会においては、身体機能の補完はテクノロジーで賄えることに介護職の方が担う負担は少なくなる可能性もあります。

ケアインフラが整うことでそのツールを最大限に活用し、自分らしく、幸福に生きれるようにライフコーディネートをしていく役割が介護職の新たな役割になる未来があるかもしれません。

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