独学大全/読書猿/ ダイヤモンド社
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回はこのブログ「読書 習慣化のお勧め読書法」でも紹介した読書猿さんの『独学大全』 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 です。
ダイヤモンド社の著者の紹介では、正体不明、博覧強記の読書家であり、独学の達人である読書猿と紹介されています。
ペンネームは、「読書家、読書人を名乗る方々に遠く及ばない浅学の身」ゆえのネーミングだそうです。
昼間はいち組織人として働きながら、朝夕の通勤時間と土日を利用して独学に励んだそうです。
知性と謙虚さを兼ね備えた人だと感じます。
「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
前回も紹介しましたが、読書猿さんは、もともと、勉強や読書のモチベーションは全然なかったようです。
勉強は嫌いで、継続できずなっかたしょうですが、苦手科目の克服が趣味というところが独学に生きているように思います。
本人は本を読むこと自体、とても苦手であったようです。
にもかかわらず読めるようになりたい思いから、色々試されたようです。
そして学ぶために多くの失敗を繰り返します。
失敗のパターンをつかんで、いろいろな工夫の経験談がびっしりとこの本に散りばめられています。
今までに自らがやってきたことを体系で重要と思うことから順に記されています。
全てに学問的裏付けがありことが知識量の多さに驚かされます。
読み心地のいい成功哲学や脳科学神話など(あなたの脳は10%も使えていない)実践に役立たないものを排除し、さぼってしまう人の性質を前提に書かれています。
歴史における独学者たちが開発してきた方法(読書猿さんはこれを「外部足場」と読んでいます)を収集し、自らの方法と合わせて紹介されています。
正直読んでいてそこまで実践出来ないなという実践例も多々ありますが、「学ぶこと」をあきらめたくない人には、役立つ技法は必ずいくつか発見できると思います。
この本のゴールは、独学する内容、ジャンルを問わず「何を」「どう学ぶか」を自分で決めて実践できることなので、学び続けたい人にはお勧めです。
なぜ学ぶのか?
この本のまえがきには、独学にとって大事なことから順に説明し、そこからより細かな技法などを紹介してくことを読書猿さんは伝えています。
まずそもそもなぜ学ぶのか?では、50歳の夏目漱石が新時代を担う芥川龍之介、久米正雄に送った激励の手紙について紹介されています。
「勉強をしますか。何をしますか。」
「君方は新時代の作家になるつもりでしょう。」
「僕もそのつもりであなた方の将来を見ています。」
「どうぞ偉くなってください。」
「しかし無闇にあせってはいけません。」
「ただ牛のように図々しく進んでいくのが大事です」
「世の中は根気の前に頭を下げることを知っていますか?火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません」
文豪として大成した夏目漱石が若手にあせらず学び続けることの大切さを伝えています。
学問を成し遂げるために考え出されたこの「独学大全」には生涯学び続けられる技法が多く紹介されていますので、まずは自分が出来そうなことから試してみるといいと思います。
本書ではまず独学の技法として、第一部「なぜ学ぶのかに立ち返ろう」といって、なぜ学ぶのかをしっかりと認識・知覚させるところから始まrます。
元々学ぶことの習慣がある人はサラっと読み飛ばしてもいいとも思いますが、習慣のない人は「なぜ学ぶのか」を強固にする為に初めから丁寧に読んでいくことをお勧めします。
なぜ自分は学ぼうと思ったのか、なぜ学ばないといけないと考えたのかという、動機づけの部分がしっかりしていると、挫折したときに何度でも立ち返りことが出来ます。
独学全書では、読書猿さんの失敗経験も踏まえた構成です。
第一部は「なぜ学ぶのかに立ち返ろう」といって、第一章「志を立てる」、第二章「目標を描く」第三章「動機付けを高める」と、何度でもやり直せるコツを大事にしています。
独学大全の技法一部紹介
ここ独学大全に書かれている技法を一部紹介します。
学びの動機づけマップ
「学びの動機づけマップ」は、なぜ始めようと思ったのか動機をマップにするのが技法です。
学びのきっかけとなった出来事を探す
- そもそも自分が学ぼうと思ったのはなぜか、書き出してみる。
- その理由を考え、そう思うようになったきっかけを書き出してみる。
- 出来事や(人や書物との)出会いについて書き出してみる。
- 複数あるなら、まずは全てを箇条書きする。
- 書き出したら、一番重要そうなものを選ぶ。
- それがいつ頃、どこにいて、誰と一緒で(あるいは独りで)等、詳しく思い出し書き出す。
- その時にどんな感情を抱いたかも、できれば書き出す。
- 最後にその大切なきっかけに、自分なりの名前(タイトル)をつける。
- できるだけ通り一遍でない名前にする。
- ぴったりなものが見つかるまで、名前を付け直す。
その出来事の影響範囲をマッピングする
- 大切なきっかけに自分なりの名前がつけられたら、そのきっかけが与えた影響を考える。
- きっかけが変えた自分の行動や習慣や考え方。
- そうして変わった行動、習慣。
- 考え方が、周りの人達に与えた影響・・・といった具合に直接的なものから間接的なものへ進む。
効果的なマッピングには「マインドマイスター」をお勧めします。
ネット環境でいつでも、どこでも簡単にマッピング出来ます。
影響の評価を行う:
- ポジティブかネガティブかを評価する 。
評価に理由付けをする
- 大切なきっかけが生んだ影響が良いものは、そう評価する理由は何かと自問自答する。
- こうすることで大切なきっかけがもたらした出来事を、もう1度自分や自分の学びに結びつけれる。
- そのことで、動機づけを支える援軍に変えられる。
1~4を繰り返す
志の強さは、それを立てた瞬間にではなく、自身の行為や思考を絶えず志に結び直した、その繰り返しの中に生じるのです。
記憶力と理解力を高めて学ぶ「PQRST法」
PQRST法とは、記憶力と理解力を高める読書の手順です。具体的には次の5ステップで読書を進めていく技法です。
予 習
覚えようとするテキストについて、はじめにざっと目を通して、全体の概要を掴んでおく
質 問
テキストのポイントとなる部分についての質問を作る。5W1Hを活用すると、作りやすいはず。
精 読
質問の答えを探しながら、あとで答えられるように、テキストを読み込んでいく
自己暗唱
読み終えた情報を自分の中で、繰り返し心の中で唱えて記憶する。
テスト
テキストを見ずに、質問だけを見ながら答えを書き出していく。終わったら答え合わせをする。
以上の5ステップで、記憶して理解するというのがPQRST法です。
全体をざっと掴んで、質問の答えを探しながら読み進め、最後は確認のためにテストする。
まとめ
圧倒的な本の厚みに読書に慣れていない方は躊躇されるかもしれません。
子供の頃に国語辞典や漢字辞典を用意したように独学辞典として学びたい箇所だけ目次から拾って読んでみてもいいと思います。
読書に慣れている人はじっくり通して読んでもおもしろいと思います。
この本では、単純に技法を紹介するだけでなく、読書技術を大量に紹介しています。
第12章「読む」技法を読むだけでも自らの読書に役立ちますし、技法の歴史やエピソードも面白く興味深い余談が沢山も盛り込まれています。
ただただ圧倒される独学技は、我が家の息子が勉学に少し興味を持ったときにそっと紹介してみようと思った本でした。
「読む力」を底上げする名著
NEWS PICKSの記事によると読書猿さんが『独学大全』の中で紹介された『現代文解釈の基礎』(遠藤嘉基、渡辺実/初版1963年)は、長らく絶版で入手困難でした。
それが、『独学大全』を読んだ人たちの反響を受け、昨年ちくま学芸文庫から復刊されてヒットしています。
この本は、いわゆる「国語の参考書」ですが、昭和の参考書が令和の時代にウケている理由は何なのでしょうか?読書猿 『現代文解釈の基礎』は、ひとことで言うと「文章を読むとはどういうことか」を説いた本です。
数々の評論や小説を題材に、重要な箇所をどのように見分けるかを、実例を織り交ぜながら徹底的に解説しています。
学校採用されていた時代もあったらしく、当時は100万部売れていたとか。
その意味では「隠れたベストセラー」であり、日本人の国語力を底上げした1冊といえます。
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