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無資格の介護職員に【認知症介護基礎研修の受講】を義務化
2021年4月の介護保険制度改定において無資格の介護職員に【認知症介護基礎研修の受講】を義務化されました。
訪問系、居宅介護支援及び福祉用具貸与(販売)を除く全ての介護サービス事業者が対象です。
介護労働安定センターの調査結果によると「無資格」の介護職員は全体の6%ほどとされています。
経過措置3年はありますが事業所単位で研修受講計画が必要となります。
認知症介護基礎研修とは
認知症介護基礎研修とは、認知症介護に必要な基礎的な知識や技術を習得するための研修となります。
厚生労働省が策定している、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に基づいて、各都道府県ごとに研修が実施されてます。
認知症介護においてもっとも基礎的なレベルの研修です。
現在は、講義と演習で合計6時間程度のカリキュラムとなっています。
厚生労働省は、このカリキュラムの内容を整理し全てをeラーニング化する事によって、スムーズに受講できる取組みを行う予定です。
受講対象者の具体的要件
今回の改定でこの義務化の対象とならない職員の範囲について解釈通知とQ&Aで具体的に説明しています。
対象外となるのは、認知症ケアに関する基礎的な知識・技術を既に習得している職員です。
以下の資格を持つ人は各サービスの運営基準の解釈通知にて義務化対象外として明記されています。
■ 義務化の対象外となる職種
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修1級課程・2級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
次に厚労省から、3月26日に発信された介護報酬改定のQ&AのVol.3で以下の解釈も明らかになりました。
○ 養成施設で認知症に関する科目を受講したが介護福祉士の資格を持っていない人は、事業所や自治体が卒業証明書、履修科目証明書で科目の受講を確認できることを条件に対象外とする。
○ 福祉系高校の卒業生は、卒業証明書で単に卒業が証明できれば対象外として差し支えない。
○ 認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修などを修了した人は、対象外として差し支えない。
○ 認知症サポーター養成講座の修了者は対象外とならない。(結構受講されている方は多いですが外されました)
○ 人員配置基準上、職員の員数として算定される職員以外の人、直接介護に携わる可能性のない人は、義務付けの対象外とする。
○ EPA介護福祉士、在留資格「介護」などの有資格者を除き、外国人も義務付けの対象となる。
《関連記事》無資格の介護職への研修義務化、新人は1年間だけ猶予
無資格の介護職員への義務付けは、サービスの質の底上げや本人の尊厳の保障につなげることが狙いです。
今年度から2023年度までは努力義務(経過措置)で、2024年度からは完全義務化へ移行する予定です。
各サービスの事業者は今後、全ての無資格の介護職員に研修を受けさせる責務を負うことになります。
認知症高齢者に対する虐待が多い
全国の施設の虐待事例では認知症高齢者に対する虐待事例が多く報告されています。
北海道で認知症入居者を平手打ちした介護職員は、虐待を行った理由として、「いうことを聞いてくれず、攻撃的になってしまった」と答えたそうです。
このケースでは虐待は半年続いています。
入居者はだれに何をされたか覚えていないため、発覚に時間がかかったといいます。
虐待の発生要因
内容 | 件数 | 割合(%) |
---|---|---|
教育・知識・介護技術等に関する問題 | 246 | 65.6 |
職員のストレスや感情コントロールの問題 | 101 | 26.9 |
虐待を行った職員の性格や資質の問題 | 38 | 10.1 |
倫理感や理念の欠如 | 29 | 7.7 |
人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ | 29 | 7.7 |
虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ | 22 | 5.9 |
この結果をみると、認知症に対する正しい知識がないまま介護職に従事し、感情をコントロールできなくなっている介護者の姿が見えています。
介護スタッフが不足している現状では、新人であっても即戦力としての能力を求められます。
学校で介護を学んでいても、実践となると戸惑うこともあるでしょう。
慢性的な人手不足となっている介護業界では、経験を積む前に多くの仕事を一人でこなさなければなりません。
また一方では、認知症知識のない介護職員が増えているのではなく、知識を生かす余裕がないといった側面もあるように感じられます。
ま と め
人手不足の介護業界では、無資格、未経験の方にも求人も多くあります。
介護のお仕事をする上で切っても切れないものの1つに「認知症ケア」があります。
虐待の発生要因でも説明した通り、虐待事例の大半は教育・知識・介護技術等に関する問題であり、今回の義務化の一因と考えられます。
特に認知症に関する正しい理解のない職員が引き起こす虐待事例は介護職・本人・関係者にとっても不幸な出来事です。
上記も踏まえ、これから介護の仕事を始めようとされている方にとって、認知症に関する理解はとても重要です。
認知症の人への理解や対応の基本、またケアの留意・注意点など、基礎的な知識を身に付けることで、結果介護サービスの質を高めることになります。
「認知症ケアの研修」には3つのランクがありますので簡単に説明します。
「認知症介護基礎研修」⇒「認知症介護実践者研修」⇒「認知症介護実践リーダー研修」
認知症介護実践者研修はグループホーム等認知症ケア専門施設の介護計画者に必須の研修です。
認知症介護実践リーダー研修は多くの福祉施設における認知症ケア加算算定に必要な研修のため、
チームで認知症ケアの専門性高める為の研修です。
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