このブログでは「介護役立つ情報」を紹介します。
介護保険制度は3年に1度改定されます。2024年改定の重要な焦点「ケアプラン有料化」について紹介します。
2021年改定 ケアマネ関連記事
2024年ケアプラン有料化 財務省提言
以前から議論されてきた居宅で介護保険サービスを受ける時の居宅介護計画(通称ケアプラン)について有料化を改めて財務省が提言しました。
現在介護サービスを利用する場合、利用者は所得や資産に応じて自己負担として1~3割支払っています。
そのサービスを受ける際の居宅介護計画(通称ケアプラン)費用は現在全額公費で支払われています。
下記が現在の費用ですが、仮に1割負担となった場合約1000円~1300円の費用負担が増える計算になります。
<居宅介護支援費>
要介護1・2 = 10,472円/月 要介護3・4・5 = 13,608円/月
財務省は財政健全化に向けた施策を検討してきた財政制度等審議会を開き、従前から繰り返し主張してきたケアプランの有料化を改めて盛り込みました。
財務省は報告書で、「他のサービスに自己負担があることも踏まえれば自己負担の導入は当然」と持論を展開。
膨らみ続ける給付費の抑制につなげる狙いがあり、「ケアマネジャーのサービスのチェックや質の向上にも資する」と言い張った。
ケアマネジメントについてはこのほか、「福祉用具貸与のみを行うケースの報酬を引き下げるなど、サービス内容に応じた報酬体系とすること」も提言。
こちらも実施時期まで踏み込み、「2024年度改定で実現すべき」と明記した。
ケアプラン有料化の財政効果は決して小さくありません。
2019年度の居宅介護支援費の全国計は4768億円。仮に1割負担を徴収するとなると、単純計算で476.8億円の支出を毎年削減することが可能となります。
ケアプランの自己負担の経緯
我が国の介護保険制度では、介護保険サービスは制度発足当初より1割の自己負担が発生し、現在で利用者の所得に応じて1割~3割の自己負担が発生します。
ただし、制度発足当初よりケアプラン費用については「無料」とされてきました。
「無料」の理由については必ずしも明確になっていません。
介護保険の制度設計時、厚生労働省の老人保健福祉審議会(当時)では「高齢者がケアマネジメントサービスを積極的に利用できるよう、利用者負担について十分配慮する必要がある」との見解が示されていました。
「ケアマネジメント」は、利用者の状態などを把握し、適切な介護サービスを組み合わせるという、いわば介護保険制度の「入り口」です。
ここに利用者負担を設定することは「ハードルを上げてしまう」という意見が多かったようです。
制度導入時に広く利用される為の配慮があったと考えられます。
また、「無形のサービスに費用を支払うことには抵抗が強い」という国民性も関係していると思われます。
制度発足から時間が経過し、ケアプランという概念が広く浸透し、「ケアマネジメント(ケアプラン)に保険財源が使われており、利用者負担を求めるべき」という議論がなされてきました。
有料化慎重論の意見
介護現場に携わる立場の人は、比較的自己負担導入に慎重な意見が多いようです。
- 所得に応じた自己負担割合の引き上げや補足給付の見直しなど、「自己負担増」が続いている。
- 介護保険の入り口を狭める。
- ケアマネジャーが作成したケアプランについて、家族の意向による「変更」が少なからずある。利用者負担導入により、家族意向が助長される可能性がある。
有料化積極論の意見
学識者等や費用負担者の導入に積極的な立場の意見は以下ような内容です。
- 小規模多機能型居宅介護などではケアマネジメント費用も介護報酬に含まれ、自己負担も発生している。
- 利用者や家族は「ケアマネジメント費用を誰が負担しているのか」を知らない。
- ケアマネジメントの質を担保するためにも利用者負担を導入すべきである。
- 公平・中立なケアマネジメントを確保するためには利用者負担を導入すべき。
- その際、セルフプラン(ケアマネによらず利用者・家族が作成するケアプラン)は廃止する方向で検討すべき。
ケアプラン有料化は無能ケアマネ増加の失策
介護現場に詳しい淑徳大学・結城康博教授の意見は、財政面から机上で議論されている財務省の立場と違い 、現場感覚に近いので紹介します。
ケアマネ性悪説を完全に否定することは難しい、というのが私の立場です。
専門職としての知識、技術が乏しく、そもそも高齢者の生活を守るモチベーションすら持たないケアマネが一定数いることは、やはり事実だと言わざるを得ません。
ですからこれまで一貫して、そういうケアマネは速やかに介護現場を去るべきだと言い続けてきました。
財務省の主張で決定的に欠けているのは、必ずしも理想的とは言いきれない利用者・家族がこの社会に少なからず存在している、という視点ではないでしょうか。
単に自分が楽をしたいがために介護サービスを使えるだけ使う − 。そういう人が全くいないことを前提として論じているようです。
ただ、やはり現実は”利用者性善説の神話”とは異なります。
自立支援の考え方なども踏まえた素晴らしい利用者・家族が本当に大勢いるわけですが、そうでない人も一部にいると言わざるを得ません。
当然、介護サービスの性格上ある程度は仕方がないことです。
だからこそ、介護保険にはこのことを念頭に置いた仕組みがたくさん組み込まれていますよね。
財務省はそんな基本もお忘れでしょうか?
これぞ現場を知らない空論。目先の数字のみにとらわれた近視眼的な施策で混乱させるのは、もういい加減やめて頂きたい。
ケアプランを有料化すれば、法制度の趣旨を度外視して都合よくサービスを使おうとする利用者・家族が増えてしまいます。
これに抗えるケアマネはどれくらいいるでしょうか。
なんとか頑張るケアマネが大多数だと思いますが、何も意に介さずただただ迎合する無能なケアマネも増加するでしょう。
その方がお客さんに選ばれやすく、経済的な合理性が高いこともまた問題です。
結果としてサービスの適正化は遠のき、給付費の膨張に拍車がかかると言わざるを得ません。
目的と全く逆の効果が生じるわけですから、財務省にはぜひ慎重に検討して頂きたい。
日本介護支援専門員協会も反対声明を出していますが、少し迫力にかけますね。
今度こそ力技で押し切られてしまうのではないでしょうか。心配です。
改めて明確に言っておきますが、大多数のケアマネは非常に有能で、利用者・家族も素晴らしい人がほとんどです。
ただ、著しくモラルに欠ける例外も一定数いるのが現実で、ケアプラン有料化はそういう人を助長する改悪となるでしょう。
いわゆる「言いなりプラン」の問題は介護保険の根底を揺るがすリスクを有しており、財務省はそのことをもっと強く意識すべきだと考えます。
介護ニュース JOINT
まとめ
このブログの本紹介で「それをお金で買いますか」で行き過ぎた資本主義の悪例を紹介しました。
売買されているものについて、臓器売買、人間の身体を使った広告、大学への裏口入学、無料演劇をお金を支払い代わりに列に並ぶ行為などです。
資本主義の観点から、両者がお金の受授に納得して行われいる行為だったとしても、その行為に嫌悪感を持つものが多いのは道徳的価値観が崩れていくことにある様です。
一定数介護保険制度を悪用しようとするサービス事業者・利用者(家族)がいた場合、公正・中立な立場を謳うケアマネージャーの立場を揺るがすのは有料化だと思います。
淑徳大学・結城康博教授が述べられた「目先の数字のみにとらわれた近視眼的な施策」という点は、「失敗の本質」という本で書かれた大東亜戦争時の日本軍敗因の考察を思い浮かべました。
優秀な日本官僚が自身の組織利益優先の目先施策から脱却するのはかなり困難ことではありますが、組織の構造的課題解決には政治力の必要性を感じます。
コメント
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