SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
今回は、使用してもCO2を排出しない次世代のエネルギーとして期待される水素の中でも注目される再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の製造開発について紹介します。
水素には「グレー」「ブルー」「グリーン」がある
使用してもCO2を排出しない次世代のエネルギーとして期待される水素は、石炭やガスなど多様な資源からつくることができる点も大きな特徴であり利点です。
水素の製造方法には大きく分けて3種類あり、エネルギー庁のサイトが目で見て分かりやすいので紹介します。
上記の様な製造工程で大きく分けて 「グレー」「ブルー」「グリーン」 水素と呼んでいます。
勿論上記のイラストを見ればカーボンニュートラルの目標にはグリーン水素がいいですが、そこにはもう一つ生産コストの問題があります。
製造工程と水素をつくったり運んだりする際にかかるコストを低減していくことが必要であり、そのためには以下の3つを実現していくことが求められます。
水素の低コスト化のための3条件
- 安価な原料を使って水素をつくる。
- 水素の大量製造や大量輸送を可能にするサプライチェーンを構築する。
- 燃料電池自動車(FCV)や発電、産業利用などで大量に水素を利用する。
このうち1.については、“多様な資源からつくることが可能”という水素の特徴を生かしています。
あまり使用されておらず安価な「褐炭」(低品位な石炭)や、未使用のガスなどを原料として使う研究が進められています。
地球温暖化問題に関しての意識が高い欧州においては、グリーン水素の開発にプロジェクトが動き始めています。
「グリーン水素製造」日本出遅れ
2021年12月13日の日経新聞の記事によると、グリーン水素に関して欧州勢が南米開拓の動き始めています。
日本勢がオーストラリアなどで手掛ける海外事業は欧州と比較すると小粒で、出遅れ感が否めない状況です。
■製造コスト、日本より4割安く
フランスの電力大手エンジーは南米チリのグリーン水素プロジェクトに20億ドル(約2270億円)以上の投資を検討していることを明らかにした。チリ中部から北部の砂漠地帯は太陽光発電の適地で、南極に近い南部では風力発電が盛んだ。
グリーン水素を製造するために必要な再生エネのコストは安く日本より4割以上安い。
■独シーメンス・ポルシェは合成燃料
水から水素を製造する水電解装置で世界大手の独シーメンス・エナジーは9月、ポルシェなどと共同で水素と二酸化炭素(CO2)から作る合成燃料のプラントの建設プロジェクトをチリ南部で始動した。水素は化石燃料に代わる発電用のエネルギー源のほか、船舶・自動車の燃料、製鉄の低炭素化など幅広い分野で需要が拡大している。
■アフリカでも存在感
欧州企業はアフリカでも存在感を示す。ノルウェー太陽光発電会社のスカテックは10月、エジプトでグリーン水素製造に乗り出すと発表した。モロッコやチュニジアでも欧州企業が参入している。アルジェリアなどから既存の天然ガス用のパイプラインを経由して水素を欧州に輸出する計画も持ち上がっている。
■日本は「グレー水素」優先
欧州が官民一体で新興国でのグリーン水素の開拓を進める一方、日本勢の動きは鈍い。日本政府は10月に閣議決定したエネルギー基本計画で30年の電源構成における水素・アンモニアの比率を1%とした。
しかし資源エネルギー庁は「既存の水素供給源を最大限活用する」として、当面は化石燃料由来の「グレー水素」の輸入を優先する姿勢を崩していない。
日本政府は30年までに最大300万トンの水素を活用するとしているが、大半はグレー水素になる。
EUは30年に最大1000万トンのグリーン水素を製造するとしており、格差が大きく開きそうだ。
現在、世界で流通する水素は天然ガスなど化石燃料由来の「グレー水素」が大半を占める。
製造技術が確立されており1キロ当たり1~2ドル程度と安価だ。
今後はグレー水素製造の際に生じるCO2を回収し地下に貯留する工程が必要で、割高になると指摘した。
グリーン水素は「製造コストの50~80%を占める再生エネの価格が大幅に下がり続ける」と分析。
チリ政府は50年までに水素や関連製品の輸出額で年300億ドル(約3兆4000億円)を目指す計画を立て、世界中から投資を募る。
日本企業はチリの鉱業に投資して成功したが、今後10年、20年はクリーンエネルギーでも再現できるとして、投融資や技術開発でも連携を求められている。
日経新聞記事 抜粋
まとめ
世界の投資マネーがクリーンエネルギーへとシフトしていっている中、官民連携の国家プロジェクトにおいては、スピード感がない日本というイメージは否めません。
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の記事によると、欧州委員会は7月8日、「欧州の気候中立に向けた水素戦略」と題したコミュニケーション(政策文書)を発表しています。
同戦略では、2050年までの気候中立(二酸化炭素の排出実質ゼロ)を目指す欧州グリーン・ディールの一環と位置付けられました。
同日に発表された「エネルギーシステム統合戦略」(2020年7月10日ジェトロ記事参照)を補完するものです。
EUで排出される温室効果ガスの75%はエネルギーの生産から消費の過程で発生しています。
消費時に二酸化炭素を排出せず、鉄鋼や化学など二酸化炭素の排出量の多い産業でも利用可能とされる水素エネルギーは、欧州グリーン・ディールの目標達成に必要な技術として近年重要視されています。
欧州は、南米やアフリカでグリーン水素製造始め、2030年には最大1000万トンの製造を目標としています。
2050年のカーボンニュートラルのを目指す日本も水素関連技術の開発への投資を拡大していく見込みです。
グリーン水素では、現段階では、出遅れている感は否めませんが、これからの巻き返しに期待したいものです。
日本もまた、水素関連技術の開発への投資を拡大していく見込みだ。
グリーン成長戦略として、政府はこの先10年間で3700億円の投資を決めている。
もちろん日本でも水素関連技術の開発や商用化は進められてきた。
中でもグリーン水素については、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2013年から、小規模施設による実証事業を実施しており、2016年からは国内2カ所で電気分解設備の大規模化に取り組んでいる。
そのうち1カ所は山梨県における、東京電力ホールディングスや東レなどによる実証プロジェクト「H2-YES」で、2021年度から同施設で製造した水素を山梨県内の事業所への供給を開始する。
2016年から着手された本事業は、2018年にプラント建設を開始、2020年には設備が完成し、現在すでにグリーン水素を製造、供給している。
最近では、2021年5月に富士スピードウェイで開催された24時間耐久レースにおいてトヨタの水素エンジン車の燃料として使用された。
また、ENEOSを通じて東京オリンピックの聖火リレーにもFH2R製のグリーン水素が使われた。
MIT Tech Review 抜粋
コメント