SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
今回は、化学肥料や合成繊維の原料として使われるアンモニアが脱炭素の切り札として注目を集めていることについて紹介します。
「アンモニア」に産官が注目
2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする政府目標の達成に向けて、官民の具体的な動きが始まっています。
NEWS PICSの討論番組2 sideで「原発再稼働 vs 自然エネルギー」という討論を石川和男さんと猪瀬 直樹さんがされていて具体的で分かりやすい内容でした。
2050年のカーボンニュートラルの目標を掲げたことは、お互い評価されていましたが、経済産業省でエネルギー政策に携わっておられた石川さんは現実的には不可能という見解でした。
自然エネルギーへのシフトはお互い合意されていて、その過程において廃炉計画を立てながらの原子力発電には頼れざる得ない状況もお互いの認識でした。
安定供給が難しい太陽光・安定的な風が吹かない日本における風力発電は蓄電技術の向上がないとメインの電力にならないというのが石川さんの見解でした。
炭素を排出しない「脱炭素」の電源や燃料を、いかに拡大できるかがカギとなりますが、太陽光や風力といった再生可能エネルギーだけでは安定供給は難しい状況です。
そこで新たな「脱炭素」エネルギーとして注目されているのがアンモニアです。
「石炭火力+アンモニア」でCO24000万トン削減
経済産業省は2021年8月4日、エネルギーに関する国の中長期的な政策指針となる「エネルギー基本計画」の改定案をまとめました。
30年度の電源構成目標に、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない「水素・アンモニア」を新たに1%見込んだことでアンモニアに注目が集まっています。
官民は具体的な目標として、2030年までに石炭火力発電にアンモニアを20%混ぜて燃やす「混焼」の実用化を掲げています。
経産省の試算では、大手電力の石炭火力発電をすべてアンモニア20%の混焼にすると、年間の電力部門が排出するCO2の1割に相当する約4000万トンを削減できるということです。
水素より扱いやすく
アンモニアは同じく燃焼時にCO2を出さない水素よりも扱いやすい特徴があります。
常温で気体の水素やアンモニアを大量輸送するには、液化して体積を圧縮するのが不可欠です。
水素はマイナス253度まで冷やす必要があるのに対し、アンモニアはマイナス33度でいいため、実用化にはアンモニアのほうが向いていると期待が高まっています。
零下253度以下にする必要がある水素に比べ、現在の貯蔵タンクが使え、運搬もしやすい。
有害な窒素酸化物を出さない燃焼法が見つかり、上記の通り石炭火力発電所向けの燃料として実用化を目指しています。
グリーンアンモニア
再生可能エネルギーで作りCO2をまったく出さない「グリーンアンモニア」についての日経新聞の記事を抜粋紹介します。
肥料大手の米CFインダストリーズは2023年に年間2万トンの「グリーンアンモニア」の商業生産を始める。
約1億ドル(約110億円)を投じ、ルイジアナ州にあるアンモニア製造施設に、水を電気分解して水素を作る設備を建設する。
2万キロワットの再エネを使う水素製造設備はドイツの鉄鋼・機械大手のティッセンクルップが納入する。
CFインダストリーズは北米や英国に所有する9つのアンモニア製造拠点で脱炭素化を進める計画だ。
トニー・ウィル社長兼最高経営責任者(CEO)は「アンモニアは水素の貯蔵と輸送を可能にする重要な要素」と期待する。
グリーンアンモニアへの移行は世界の流れで、日本でも同様の計画が進む。
旭化成と日揮ホールディングス(HD)は福島県浪江町に実証設備を建設し、24年度から1日に数トンを生産する計画だ。
旭化成が稼働させた1万キロワットの電力を使う水素製造設備に加え、アンモニア合成プラントを設ける。
国の助成を受けながら、27年度には水素製造装置を4万キロワットに引き上げ、量産によるコストの大幅な低減を目指す。
日経新聞記事 抜粋
まとめ
冒頭に紹介した討論番組2 sideの「原発再稼働 vs 自然エネルギー」 で90年代に経済産業省は原子力発電以上のポテンシャルがある言われている地熱発電について調査した経緯が紹介されていました。
エネルギー政策は長期の目標が必要で限らえた財源の中ですぐに結果が出せなかった地熱発電に予算を取り続けることが難しかった経緯があるようです。
番組の最後に猪瀬さんは、世界の投資がカーボンニュートラルの方向に向かう中、日本も強いリーダーシップのもと、自然エネルギーへのメッセージを国民に伝えていくことの必要性を述べてました。
自動車にしてもハイブリッド車の技術力を踏襲しながら過疎化でガソリンスタンドが閉鎖されていくエリアから現実的にEV車にならざる得ない将来も見据えていく必要があります。
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