日本酒 世界戦略 米国日本酒ECサービス「Tippsy Sake Club」

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米国日本酒ECサービス「Tippsy Sake Club」

(Tippsy, Inc)

この10年で、寿司やラーメンは、世界を席巻する日本食となりつつあります。

日本酒が

その寿司にしかし、その次に「日本酒」がブームとなりつつあることを知る人はまだ少ないかもしれない。

国内の日本酒販売量が減少する中、多くの酒蔵元が海外での日本酒販売に取り組んでこられた結果輸出額は順調に伸びています。

コロナで輸出が一時減りましたが、経済回復にあわせて2021年は過去最高を記録しています。

財務省貿易統計によると、全国約1,700の蔵元が所属する日本酒造組合中央会は、2021年度(1月~12月)の日本酒輸出総額が401.78億円(昨対比:166.4%)に達しました。

12年連続で前年を上回る金額に、また数量も32,053キロリットル(昨対比:147.3%)と過去最高となったことを2月7日(月)に発表しました(財務省貿易統計)

この日本酒のポテンシャルをいち早く見いだし、米国で日本酒ビジネスを立ち上げ、猛進するのがTippsy Sake Clubです。

プレスリリースによるとロサンゼルスを拠点に、テイスティングキットのサブスクリプションを中心とした日本酒ECサービス「Tippsy Sake Club」を運営するTippsy, Inc(代表取締役:伊藤元気)は、プレシリーズAラウンドにて、W venturesをリード投資家として、DEEPCORE、KSK Angel Fund、Justin Waldronおよび複数の個人投資家から合計約2億円の調達を実施しています。

2018年、ロサンゼルスを拠点に創業された「Tippsy」は、すでに3年あまりで20万本を売り上げるまでに成長しています。

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アメリカにおける日本酒のイメージ

アメリカで認知されている日本酒といえば、長きにわたって、おちょこをビールの中に入れて一気飲みする「Sake Bomb」と呼ばれるものだったことです。

Sake Bomb

  1. 日本酒をおちょこに一杯用意する
  2. ビールジョッキに3分の2ぐらいビールを注ぐ
  3. お箸2本ををビールジョッキの上に置く
  4. 2本のお箸の上に、酒が入ったおちょこを乗せる
  5. かけ声に合わせて、机を力強く両手で叩いて揺らし、箸の上のおちょこをビールジョッキの中に落とす
  6. 勢いに任せて酒ぼんを飲む。

日本酒好きな方からすると、酒ボンは冒涜とも思えてしまいますが、他国の文化であるし、日本酒は匂いがキツいので、ビールで割るという発想になったのかもしれません。

もうひとつのイメージは、現地生産の日本酒を使った「Hot Sake」のイメージも強く、そういうローカルな経験だけで、みんな「SAKEなら知っているよ」という認識もあります。

このブログで紹介したNY初の酒蔵「Brooklyn Kura(ブルックリン・クラ)」の挑戦など美味しい日本酒を飲む人が増えてきています。

アメリカでの日本酒流通に関する課題

アメリカのアルコール流通の課題として、約100年前の禁酒法時代から続く「Three-tier system(スリー・ティア・システム)」という制度があります。

インポーター(輸入業者)、ディストリビューター(卸)、リテーラー(小売業者)それぞれのライセンスが売り先を制約する構造となっています。

これがアルコールのサプライチェーンに強く影響し、日本酒市場の成長に多大な影響を及ぼしています。

NEWS PICKS 抜粋

日本酒に関する情報とアクセスの課題

商社が日本酒を日本から持ってきて卸売業者に販売しても、その後知識のないセールスマンらがワインやテキーラと一緒にして日本酒を売るので、現地のレストランやショップに情報が届きにくいのです。

一方で、日本の蔵元さんは、海外で売るリソースもないし、自分たちで営業活動ができるわけでもありません。

結果、輸入業者が消費者に向けたブランドコミュニケーションと啓蒙をサポートできないのが実情でした。

だから、一部の高級レストランは別として、小売りレベルではなかなかおいしい日本酒は手に入らないのが実情です。

もし、スーパーなどに置いてあったとしても、アメリカ産の安いものになってしまうのです。

NEWS PICKS 抜粋


消費トレンドの変化と市場規模

アメリカのミレニアル層(1981〜1996年生まれ=現在20代後半〜30代)は、学生時代からインスタントラーメンやカリフォルニアロール、HOT SAKEなどの日本生まれのカルチャーに慣れ親しんだ世代です。

いまや、都市部では1杯2000円以上するラーメンに行列ができ、KAISEKI(懐石)やOMAKASE(おまかせ)は食通にとっての重要なキーワードになっています。

その影響から、日本酒市場はここ10年近く二桁成長を続けており、このまま伸びれば、数年後には日本産の日本酒がアメリカの現地生産清酒を抜き、2025年には1600億円規模の市場になると予測されます。

PRITIMES 引用

Tippsy Sake Clubの戦略

サブスクで消費者を育てる

Tippsyは日本酒を販売するeコマースのプラットフォームです。

もともとは、自分でサイトを作って、マーケティングのビデオを撮り、商品も自分の車でピックし、自分で梱包することから始めました。

今は、日本酒の品揃えや情報を提供することで、アメリカでもトップの日本酒セールスチャンネルに成長しています。

小売業者なので、先述の規制上、日本酒の輸入自体はできないのですが、前職の経験を生かして、蔵元さんとも信用を築いてきたので、協力を得られています。

やっぱり伝統業界なので「海外でEC」という新しい試みには、コネクションも重要です。

さらに、蔵元のストーリーを伝えたり、日本酒自体についての教育コンテンツのほか、日本酒の甘さや辛さを示す日本酒度や酸度などのデータを集め、消費者が日本酒を選びやすいような資料にも取り組んでいます。

NEWS PICKS 抜粋

多くの日本酒関係者の地道な努力とITの活用でThree-tier system(スリー・ティア・システム)」という制度の壁から新たな日本酒市場が生まれつつあることは喜ばしいことです。

日本酒は職人の手で作られていて、何百通りのつくり方があって、素材や地域性によって味が違って、何百年も歴史があります。

日本の食文化が海外で需要があることからも流通や販路が確立するとさらにこの流れは広がっていくと感じます。

失われた30年と言われ新たなテクノロジーやイノベーションでは後退しつつある日本において、日本の自然のめぐみによる食文化には大きな可能性を感じます。

ひいては高齢化の進む農業を含む第一次産業の可能性が再認識され、持続可能な産業としてイノベーションされることを期待したいものです。

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