あなたのための短歌集 木下龍也
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回する「あなたのための短歌集」はビジネスメディア「PIVOT」のGO三浦×COTEN深井の対談でhe Breakthrough Company GO代表で・PR/クリエイティブディレクターの三浦 崇宏さんが「深井龍之介・麻布競馬場・木下龍也は新時代のスター」と紹介されていて興味があり購入しました。
前回紹介した『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』も独特の切り口で三浦 崇宏さんがコメントされていて、面白く読めたので、初めて短歌集を購入することにしました。
【プロフィール】
木下龍也(きのした・たつや) 1988年山口県生まれ。
歌人。 歌集に『つむじ風、ここにあります』、『きみを嫌いな奴はクズだよ』(共に書肆侃侃房)。
小社刊行書籍に、岡野大嗣との共著『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』、谷川俊太郎と岡野大嗣との共著『今日は誰にも愛されたかった』、『天才による凡人のための短歌教室』がある。
「あなたのための短歌1首」の活動内容
歌人・木下龍也さんは、「お題」を受けて作歌する短歌の個人販売プロジェクトを行っています。
「あなたのための短歌」は、購入者にお送りし、木下龍也さんの手元にはない短歌を依頼者の協力を得て、これまで作歌した700首の中から100題100首を一冊に収めた本です。
歌人がひとりの想い(お題)と向き合うことで生まれた短歌が詰まった歌集です。
購入者からの「お題」をもとに短歌を作り、便箋に書いて封筒でお送りする。
制作した短歌は僕のもとには記録として残さず、公表しません。
短歌をどう使うかは購入者の自由です。
2017年から始めて、現在も続けています。
もともと本にする予定はなかったのですが、ナナロク社から書籍化の提案があり、購入者からの提供が集まればという前提と、僕は印税を受け取らないという条件で『あなたのための短歌集』を作りました。
――依頼者の反応はいかがですか?
Twitterで「泣きました」「家宝にします」とつぶやいてくださる方、BASEのサイトにレビューを書いてくださる方、お手紙をくださる方もいらっしゃって、嬉しく思っています。
ただ、毎月10首から15首くらい作って、何かしらの反応をくださるのは全体の2割くらいです。
ほとんどの場合はお題をいただいて、短歌をお送りして、それっきり。
依頼者のみなさんがどう思っているかは正直わからないですね。だから満足せずに続けられているんだと思います。
こうして振り返ると、楽にできた歌はないんですよね。
早めにできたとしても、別の案を考えます。
どのお題に対しても最低2案くらいは並行して作っていくんです。
お題は大抵メールでいただくのですが、それを何度も読み返しながら、なにを言うか、というのをバーっと箇条書きしていって、最終的には二つくらいを短歌のかたちにします。
それのどちらか一方をお送りすることもありますし、二つお送りすることもあります。
「あなたのための短歌1首」って言ってるんですけど、僕は自分の歌の良し悪しを自分で判断するのが苦手なので、2首お送りすることもあるんです。
「あなたのための短歌展」(2020年に東京・高円寺で行われた「木下さんが短歌を制作している姿を展示する」展示会)のときは1首しか壁に貼れなかったので、2首作って村井さん(ナナロク社の村井光男氏)に「どっちがいいですかね?」って客観的に選んでもらうこともありました。
好書好日 インタビュー抜粋
印象的なお題は?
いままでで難しかったお題はありますか?
簡単なお題はひとつもないのですが、どなたかが亡くなられたというお題については、かなり慎重に、何をどうお伝えするか言葉を選びます。
『あなたのための短歌集』の中にも、お父さまが亡くなられて、葬儀でお読みになった弔辞の全文を送ってきてくれた方がいらっしゃいました。
そのときは僕に言えることなんて何もないんじゃないか、とかなり苦しみました。自分の父親が亡くなったら自分はなんて言うだろう、などいろいろリアルに考えて、けっこう辛かったです。
好書好日 インタビュー抜粋
【お題】父の葬儀のときに、私が読んだ「おわかれの言葉」を添えました。亡き父の思い出として、短歌をお願いします。
好書好日 インタビュー抜粋
――「オムレツ」「たこ焼き」「鶏肉」など、単語ひとつのお題もありますね。
単語ひとつのお題の場合は「ああ、試されているな」と思います。
そのお題に対して、ある程度どういう短歌が来るかって、依頼者は予想すると思うんですよね。
だからその予想を裏切るような短歌を作ろうと思っているんです。
「たこ焼き」は、短歌をお送りした後に、依頼者ご本人が「夫と付き合って食べるようになった思い入れのある食べ物なんですよ」というのを教えてくれて、なんで「たこ焼き」というお題だったのか理解できました。
好書好日 インタビュー抜粋
【お題】お題は「たこ焼き」です。夫と付き合ってから食べるようになった思い入れのある食べ物です。
好書好日 インタビュー抜粋
短歌を未来につなぐために
――木下さんは『あなたのための短歌集』の印税を受け取らず、印税分で歌集を購入し、学校など希望する施設に寄贈する計画があります。
歌集を購入して、少しでも今の歌人を応援したい気持ちがあります。
寄贈については、小さい頃から図書館とかに普通に歌集があるような環境にいて、それに触れていれば、将来その子どもが何か書きたいなあと思ったときに、小説とか、詩とか、考えていくなかに短歌も選択の一つとして挙がると思うんですね。
そういうふうに短歌というものを未来につないでいきたい。
そして、その子どもたちの作る短歌を読んでみたい。
だから村井さんと相談しながらこういう計画を立てました。
ただ、短歌教室を開催しているのも、歌集を寄贈するのも、これから短歌を始める人たちが将来作るであろう素晴らしい短歌を僕が読みたいっていうのが根底にある。
だから本当は、自分のためでもある。よい歌を読んで、よい歌を詠みたいというのは常にあります。
好書好日 インタビュー抜粋
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