紹介本 『同調圧力の正体』/日本の美徳が見えない暴力へ

目次

同調圧力の正体 / 太田 肇 / PHP新書

この お勧め本紹介を通じて本を読むことで色々な価値観を知り、成長できることを紹介したい思っています。

今回は同志社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科教授の太田 肇さんの著書「同調圧力の正体」について紹介します。

太田 肇さんをの専門は、必要以上に同調を迫る日本の組織に反対する「組織嫌い」だからこそ、「個人を尊重する組織」を専門に研究しています。

ライフワークは、「組織が苦手な人でも受け入れられ、自由に能力や個性を発揮できるような組織や社会をつくる」ことで「個を活かす組織づくり支援協会」の顧問もされています。

大学での研究テーマは「承認による動機づけとマネジメントの研究」で著書に「表彰制度」があり、過去に携わた組織再生に活用しました。

人間の社会的欲求や自己実現欲求、経済的欲望に焦点を当てた組織論とは一線を画した承認欲求が人間の動機づけに与える影響やそれをマネジメントに活かす研究をされています。

聖徳太子が掲げた「和をもって貴したっとし)となす」という言葉は、元々「論語」が出典です。

日本の美徳の和の精神が呪縛に変わるとき、それが同調圧力と変化していきます。

「空気」を読むという日本人の感覚は、具体的な定義も明らかにしないまま、異端を許さない不寛容さにづながる恐れがあります。

コロナ禍を契機に感じた同調圧力の生きづらさを冷静に受け止めることで、今こそ正体に迫るチャンスと捉えることができます。

「事件」は共同体の中で起きる

コロナが剥がした日本社会のベール

今までの日常が感染症という目に見えない恐怖で行動制限せざるえない期間が1年半以上つづいています。

今までの日本社会のベールをはがすだけのインパクトがコロナ感染による緊急事態下にはあり日本の社会を大きく変える可能性があります。

例えば在宅勤務を勧められても頑として受け入れなかった会社員が、コロナ禍でテレワークを推奨されると。まるで掌を返したように出社しなくなったという話があります。

暗黙の行動規範がコロナ禍で逆転し、行動規範が変わってしっまた例です。

また、世界でもテレワークの生産性向上がすすまないと回答が多い日本は、上司からの監視や、同僚の出社へ罪悪感を感じる声もあります。

リモート会議における席順という理不尽な慣習に従わざるを得ず、頻繁に開かれエンドレスに続くリモート飲み会に閉口していた人も多くいます。

仕事だけではない。あらゆる行事が中止になり、マスクなしに外出すれば冷たい目線が送られるようになっています。

ワクチン接種率が上がれば自らマスクを取り外す国民性の国もあるなかアメリカを超える接種率になってもマスクなしの外出はいまだに出来ない状況です。

新型コロナウィルスの蔓延により、私たちは日本社会の同調圧力がいかに強いかを、あらためて目の当たりにさせられています。

同調圧力の功と罪は合わせ鏡

読書イメージ

同調圧力は、功と罪の両方を抱えながら、日本社会に深く浸透しています。

職場では、みな身なりを整え、後輩は先輩を見て振る舞いを学びます。育った環境や会社の社風で振る舞いも変化します。

世界でも治安がいいと言われ、よく、災害時などにも秩序正しく行動しることを報道されますが、それは、世間の厳しい目があるからこそだと著者は言います。

一方で、会社では同僚が休まないと休暇を取りづらく、自分の仕事が片付いていても、周りが残っていると帰りにくいといった問題は誰もが感じる出来事です。

大人であってもその状況なので、より世間の狭い子どもにとっては更に深刻なことです。

仲良しグループの中では細かい掟があり、返信を遅らせないためにトイレにまでスマホを持ち込む状況は異常としか言えません。

コロナ禍のもとで、同調圧力の弊害や問題点が指摘され、個人にとっても、組織や社会にとっても、マイナス面が、プラス面を上回っていると感じます。

昨年の緊急事態宣言時に話題となり、流行語にもなった「自粛警察」やSNSでの炎上などITやSNSの影響があり、いちだんと危険性を増しています。

職場も学校も共同体に変質する

集団(組織を含む)は、大きく2種類に分けることができます。

  1. 家族やムラのような、自然発生的で情によって繋がる「基礎集団」・「共同体」です。
  2. 特定の目的を追求するためにつくられた「目的集団」・「組織」です。企業、学校、政党などdesu。

本来であれば「目的集団」・「組織」であるべき企業さえも日本では共同体のような性質を持ってしまっています。

戦後の日本は会社組織をアメリカの中間層の会社員をモデルとし、 多くの日本企業が終身雇用制度を導入しました。

正社員になれば会社の一員として身分が保障され、終身雇用制や手厚い福利厚生などによって家族ともども安定した生活を送ることができました。

組織にぶら下がれるその体制は労働生産性が向上せず、欧米では早期に終身雇用制度は手放しています。

それにも関わらず、日本では労働基準法に手厚く守られた体制を未だに維持している状況です。

会社に全人格的に取り込まれるこの雇用形態は「メンバーシップ型」と称されています。

他にも学校やPTAなど、日本ではさまざまな組織が集まって一緒に活動することに価値をおく傾向にあり、共同体化しているといえる。

閉じやすい日本の組織

なぜ、日本の組織が共同体になるのか、そして同調圧力が生まれやすいのかを「閉鎖性」「同質性」「個人の未分化」3つの要素で説明されています。

  1. 「閉鎖性」とは、日本では、国から地方、そして地域、会社、学校、クラスまで、共同体型の組織の構造となっています。地理的にも島国で、海外からの移民も少なく、独特の言語などの存在が構造的に共同体化を後押ししています。
  2. 「同質性」とは、そもそも日本は外国人や外国にルーツを持つ人の割合が極端に少なく、同質性の高い社会です。閉鎖的なところに同質性が加わることで、いっそう共同体としての性質が強まります。
  3. 「個人の未分化」とは、日本の企業や役所では集団で行う仕事が多く、分担が必ずしも明確でない状況などです。集団で行う仕事では相互依存度が高く、誰かがサボると他の人が迷惑するという理由もあり、同調圧力は生まれやすくなります。

同調圧力に立ち向かう3つの戦略

日本社会の同調圧力を「減圧」するには、共同体型の組織や集団という仕組みを変えていく必要があります。

「閉鎖性」「同質性」「個人の未分化」という構造を変えていくには、かなりのエネルギーが必要です。

流動性を高めて閉鎖性を減じる

組織・集団の閉鎖性を崩すためには、参入と退出を容易にし、流動性を高めるという方法です。

よく話題となる終身雇用神話からの脱却です。

私見では、労働基準法の解雇規定のに直しと転職が不利益とならない転職市場の更なる活性化が必要と思います。

一部のエリート階層や都市部では、転職、キャリアアップはポジティブに捉えられていますが、地方及び低所得層において転職・失業は未だにネガティブな印象は否めません。

会社組織としては、中途退職が組織と個人の両方にとって大きな損失につながらない制度やしくみ、いわば「短期に精算される人事」への切り替えが必要となります。

これからの日本の労働環境をテーマにしていた番組で、あるコメンテータが全労働者10年退職制度を提案していました。

政策的には、それぐらい大きなのインパクトが必要なのかもしれません。

この本では能力開発にかかるコストの一部を個人が負担する仕組みや、業界団体が育成を支援する制度の拡充などを提案されていました。

今回のコロナを機に「ひとつの組織・集団に全面的に抱え込まれないよう、別の居場所を持つこと」を更に進める必要性も伝えられたいます。

テレワークやリモート学習の普及によって、その可能性は広がっていると感じます。

個人が複数のコミュニティに属すことや、副業や個人で事業立ち上げなどの広がりを積極的に促進していく政策も必要と思います。

異端者を入れ同質性を崩す

つぎに同質性を崩すためには、いわゆる「異端者」を受け入れることです。

共同体型のシステムは、強固なようでいて実は意外と脆い前提のうえに成り立っています。

例で挙げられていたのは、全会一致を原則とする意思決定慣行のもとでは、ひとりでも反対者がいると決められないことはあります。

会合においても、このような声の大きい人が全体の方向性を変えてしまう場面もあります。

現在は村八分のよう異端者を排除することは、人権の観点から認められていないので、内部に異端者がいると共同体型のシステムは機能不全になります。

逆張りの発想で異端者を入れることで、同調圧力を跳ね返し、空気が一変する可能性もあります。

最近よく耳ににするようになりましたが、今後の組織に必要なのは、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性とその包摂)の促進です。

健全で成熟した社会をつくるためにも、異質な人々が一定の存在感を示すことが望ましいことです。

役割分担を明確化する

「個人の未分化」については、個人の分担や役割を明確に定めることが必要です。

そうすることで、自分のペースで仕事や活動ができるし、周りに気兼ねすることもなくなります。

これまで日本社会を規定し続けてきた同調圧力は、いまITの進化とSNSの普及によって、新たなかたちで広がろうとしている。

内部告発など隠ぺいは社会構造的にも難しくなってきていますが、それに歯止めをかける仕組みができたとしても、同調圧力は姿を変えるだけで存在し続けます。

著者は、日本社会の深層に横たわる共同体主義の存在に気づき、そこにインパクトのある政策でメスを入れることの必要性を伝えています。

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