NY初の酒蔵「Brooklyn Kura(ブルックリン・クラ)」の挑戦
2018年、NYに初のSAKEの醸造所が誕生し、ニューヨーカーは度肝を抜かされました。
その理由は蔵を立ち上げたのがアメリカ人のブライアン・ポーレンとブランドン・ドーンだからでした。
多くのアメリカ人にとって日本酒は東洋のミラクルなアルコール飲料で、寿司バーで出されるHot-sakeはアルコールの高い「アブナイ」飲み物で決して味わって楽しめる飲料でないイメージです。
次第にアメリカでも冷やした日本酒を提供する店が登場し、本来の香りや美味さに気づく人が増えています。
そんな日本酒の繊細で米が原料にも関わらず果物の香りする発酵の神秘に取り憑かれてしまった二人が探究心から酒造りにハマり自分たちの蔵を造ってしまう決断に至ったのです。
二人の出会いから酒造りに至るまで
2013年二人の出会いは共通の友人の結婚式で来日したときでした。
会話のなかで、日本で飲む高品質な酒と、アメリカの寿司レストランで提供される品質の良くない”hot-sake”について話が盛り上がり、京都や飛騨高山などの酒蔵をいっしょに巡ることになったのだそう。
「伝統的な酒蔵で飲んだ日本酒は本当に美味しくて、さらに魅了されてしまいました。
と同時に、アメリカではクラフトビールが人気で醸造技術も高まってきているのに、なぜ、同じ醸造酒であるSAKEがあまり造られていないのか、疑問に思ったんです」(ブライアン氏)
この疑問を胸にアメリカでの酒造りを決心した2人は、滞在中に一連の酒造りを学びアメリカに帰国。
すぐに、自宅での醸造に挑戦し始めたのだとか。
以前から、趣味としてクラフトビールを造っていた経験を生かして、インターネットで情報を集めたり、酒蔵に知り合いからアドバイスをもらったりしながら、ほぼ独学で酒の醸造技術を高めていきました。
「試行錯誤を何度も繰り返すうちに、より美味しいSAKEを造れるようになってきました。とてもうれしかったですね」そう話す2人は、SAKEがもつ本当の美味しさや品質の高さをニューヨーク中に広く伝えたいと、酒蔵をオープンすることを決意します。
小規模での実験醸造を経て、ついに2018年、インダストリー・シティーの一角にタップルーム付きの醸造所を開設。本格的な酒蔵として始動しました。
SAKE TIME 抜粋
二人が造るSAKEは、アメリカ産の米とNYの水道水で仕込んだアメリカの地酒です。
それを蔵に併設されたタップルームでタンク直汲みで飲ませるSAKEは、フレッシュでフルーティーで飲みやすくたちまちニューヨーカーを虜にします。
「BROOKLYN KURA」とシンプルに名付け掲げた外観は、酒蔵とは思えないモダンなデザインで青いドアが目印です。
ここブルックリン地区は、NYでもクリーターやアーティストが注目するトレンド発信地になっています。
タップルームは昼間から多くの市民で賑わい、生ハムやチーズをつまみにグループで SAKEのグラスを傾けます。
今アメリカでSAKEの造り手が増えているのか
この「BROOKLYN KURA」でSAKEへの関心が高まるMYでは、新しい蔵開設に向けて動きも始まっています。
日本からは「獺祭」で知られる旭酒蔵が開設を目指しています。
アメリカ西海岸には、「セコイア・サケ・ブルワリー」など15のSAKE醸造所が操業しています。
いま、海外でSAKEを造る小規模醸造所が増えています。
中でも、トップの醸造所数を誇るのはアメリカ。きた産業株式会社の統計によれば、 日本国外にある33の小規模SAKE醸造所のうち、約6割にあたる19蔵がアメリカに存在 しています。
このほか建設中の蔵もあれば、数年で廃業に至ってしまうケースもあるため、数値は絶え間なく増減しています。
アメリカは海外のクラフトSAKEブームをリードする存在だと言うことができるでしょう。
ホーム・ブルーイングから醸造所へ
次々と小規模醸造所が誕生しているアメリカですが、このようになった背景には、「禁酒法」の歴史がありました。
1920年に施行された禁酒法(Prohibition)。
1933年の廃止に至るまでの約13年間、アメリカではアルコール類の製造、販売、輸送が全面的に禁止されていたのです。
禁酒法前にあった1000を超えるビール醸造所の中で、禁酒法時代を生き延びたものや、1933年以降に復活できたものはほんのひと握り。
これにより、愛好家たちは、自分が飲むためのビールを自宅で造るようになりました。
当初は違法だったホーム・ブルーイング(自家醸造)を、1978年、ジミー・カーター大統領が合法化しました。
これをきっかけにホーム・ブルワーが続々と誕生し、その中には、趣味をビジネスに変えるクラフトブルワーたちが出現しはじめます。
2000年以降アメリカでは誰でも簡単にビールがつくれるようになり、経験を積んだ人たちが、クラフトディスティラリー(蒸溜所)を開設します。
小規模醸造所の優遇制度
禁酒法の廃止以降、アメリカでは小規模醸造所を税制面で優遇する制度が度々施行されてきました。
年間生産量200万バレル未満の醸造所に対し、6万バレルまでの酒税を1バレルあたり7ドルから3.5ドルに半減 するというものです。
このように、アメリカでは小規模醸造所を立ち上げやすい環境が整っています。
そうした中で、 もともと日本酒/SAKEを愛飲していた人々がSAKE造りにチャレンジしはじめているほか、「ビールとの差別化」としてSAKEを造る醸造家たちも増えてきている のです。
仙禽 × みむろ杉 From Brooklyn
日本酒が広く世界で認知されるためには、世界各地でクラフトSAKEが造られる必要がある言われています。
そのような日本酒蔵元の取り組みも別の機会に紹介していきたいと思いますが、世界中に日本酒を広めるために若手蔵元を中心に飛び回っています。
2019年秋、「仙禽」蔵元・薄井氏、「みむろ杉」蔵元・今西氏の2人は国酒を伝えるために渡米し、ニューヨークに広がる日本酒の世界やBROOKLYNの酒蔵(=Brooklyn Kura)との出会いを経て、多くのパッションを感じ取りました。
この2人がインスパイア―された「Brooklyn Kura」の日本酒に敬意を表し、アメリカ産カルローズ米を使用し、同様の醸造方法で各蔵醸造しました。
Q.具合的なスペックは?
麹米は「山田錦」(仙禽は栃木県産、みむろ杉は奈良県産)、掛米は「アメリカ産カルローズ」(特別にに輸入しました!)、「精米歩合:60%」、「酵母:9号」、「アルコール分:15%」となります。
※「Brooklyn Kura」と同様の仕込配合です。
Q.味わい、仕上がりは?
共に良い仕上がりとなりました!両蔵とも初めて使用するカルローズ米。そして、アメリカ産。両蔵とも入念も醗酵シュミレーションを行い、酒造りに向き合いました。
両蔵の個性を表現しながらも、これがカルローズ米のニュアンスなんだろう、と感じられる部分もあり、飲み比べを楽しんでいただける酒質となっています。
原料米 : 麹米・山田錦(仙禽・栃木県産、みむろ杉・奈良県産)
掛米・カルローズ(アメリカ産)
精米歩合 : 60%
酵母 : 9号酵母
アルコール : 15%(原酒)
産地: 栃木県 (株)せんきん
奈良県 今西酒造
保管方法:冷蔵庫(一回火入れ)
*クール便推奨
参考図書 教養として知りたい日本酒
にほんブログ村
コメント
コメント一覧 (5件)
[…] 「家飲み 日本酒 世界戦略」「家飲み 日本酒 世界戦略 HINEMOS(ひねもす)」「家飲み 日本酒 世界戦略 WAKAZE」 […]
[…] 「家飲み 日本酒 世界戦略」「家飲み 日本酒 世界戦略 HINEMOS(ひねもす)」 […]
[…] 日本酒 世界戦略 Brooklyn Kura(ブルックリン・クラ) […]
[…] 「家飲み 日本酒 世界戦略」「家飲み 日本酒 世界戦略 HINEMOS(ひねもす)」 […]
[…] この家のみブログでも紹介しました「NY初の酒蔵「Brooklyn Kura(ブルックリン・クラ)」の挑戦についても詳しく経緯を紹介されていました。 […]