君たちはどう生きるか 吉野 源三郎
お勧め本紹介では今までに読んだ本の中で自分なりのお気に入りの本を紹介したり、人に紹介してもらって今後読みたいと思っている本なども紹介していきます。
この本は当初、『日本少国民文庫』の最終刊として編纂者山本有三氏が執筆する予定でしたが、病身のため代わって吉野源三郎氏が出筆することになったそうです。
昭和12年の本にもかかわらず、100万部突破のベストセラーとなった様です。
児童文学の形をとっていますが教養教育・倫理観に関する教えとなる本です。
あらすじ
本書の主人公は、コペル君というあだ名の15歳の少年です。
コペル君は父親を亡くし母親と2人暮らしの生活と優秀な学生です。
その学校生活を中心に誰もが経験する学生時代の小社会の出来事を中心に物語は進んでいきます。
そんなコペル君の学校を中心とした日常の物語と、もう一つ物語の重要な部分はコペル君の叔父さんが書いた「ノート」でやりとりするシーンです。
各章の終わりにありここでの哲学的なやりとりがこの物語で伝えたい部分となります。
学校生活でコペル君は、自分とは異なるタイプの様々な友人に出会っていきます。
ネタバレになるので、詳しくは伝えませんがいじめに関してコペル君が勇気を出せず躊躇します。
そんな中、勇気を出しいじめを止めるクラスメイトのシーンがあります。
勇気を出したもう1人に対して立派だというコペル君に対して伯父は心の中で感じた思いを言葉に出来るコペル君を立派だと褒めます。
大人社会においても起こりうる様なシーンです。
コペル君に立派な人なってもらいたいう、亡くなった父の思いを伯父はコペル君に伝えます。
自分の弱さに打ちのめされる主人公の経験は誰もが自分に置き換えて自分自身の行動を予測し、主人公と同じ感情を持つ人が多い点も共感されると思います。
多感な時期の少年がよく経験する友人達との出来事とその事を中心に叔父と交わす「ノート」が物語の骨格です。
叔父との交流を通じ精神的に成熟していくさまは少しほろ苦くて、大人が読んでも、共感出来る事が多いです。
読者は、コペル君の心の動きに、いつか感じたことがオーバラップして哀愁に浸れる内容です。
そして、叔父さんの包容力と知性によって、心の学びが出来ます。
物語ではありますが思春期の多感な時期に叔父さんは、コペルくんが落ち込んだときに、力強く、温かい言葉で激励シーンは羨ましくも思えます。
環境で人は変化していきます。
思春期に身近な人がここまで丁寧に少年と接する環境は、伯父もかなりの教養があり、当時の生活レベルにおいてはかなり恵まれた環境ではあります。
この本の3つのおすすめ
1、叔父さんが書いたノート
2、時代背景と特権階級の学び
3、「君たちはどう生きるか」という問い
叔父さんが書いたノート
各章の物語の終わりに叔父さんからのノートを読むシーンで構成されていて、「ものの見方」や社会の「構造」、「関係性」といったテーマが語られます。
物語中、貧困について考えるところで、叔父さんはコペル君に対して、
「君は何も生産していないけど、大きなものを毎日生みだしている。それは何だろうか?お互い人間であるからには、一生のうちに必ずこの答えを見つけなければならない」と問題を出します。
時代背景と特権階級の学び
本書が書かれた1930年代は軍国主義による閉塞感が高まる中で有り、そんな中少年少女に自由で進歩的な文化を伝えるために企画された本でした。
旧制中学二年(15歳)の主人公であるコペル君の父親は亡くなるまで銀行の重役で有り、家には女中やばあやがいます。
通っている学校の同級生には実業家や大学教授、医師の子息が多く息子が多く、主人公たちの恵まれた家庭環境や高い「社会階級」の設定であった為、本書では主人公達に「君たち」と呼びかけます。
主体的な生き方のできる(つまり教養ある)人間は当時少なく、その特権的な男子たちを題材にして物語は書かれています。
君たちはどう生きるか
子供であるコペル君が現実を観察し、色々な事を発見していく過程と叔父さんからの手紙という形で主人公の発見を補完する構成になっています。
本書の「君たちはどう生きるか」という問いかけには、「いかに生きるべきか」という倫理的な問題だけでなく、どういった社会科学的な認識のもとで生きていくかという問題が提示されています。
そして、その答えは作品の中には書かれず、読者の一人一人が考えることになります。
そして、そうやって他の人に役立つよう、「どう生きるか」を考えて行くのですが、そうやって生きて行くのは何のためでしょうか?
それは、叔父さんにも分からないと、こう告白しています。
「一人一人が、それぞれ自分の一生をしょって生きてゆくということにどれだけの意味があるのか、どれだけの値打ちがあるのか、ということになると、僕はもう君に教えることができない」
最後にコペル君は叔父への返答としてノートに自分の将来の生き方について決意を書き綴り、語り手が読者に対して「君たちは、どう生きるか」とたずねてこの小説は終わります。
まとめ
人間が生きて行く、生きる意味は分からないくても考えることに意味があります。
1930年代に、若い読者へ向けて書かれた本書は、幅広い年代の読者を獲得しつづけながら今日まで読み継がれています。「君たちはどう生きるか」という問いに、あなたならどう答えますか。
そして下の世代に、どう答えてほしいでしょうか。それぞれが自分なりの答えを見つけてほしいという思いが込められいると思います。
この本を読んだきっかけはジャーナリストの池上彰氏、コピーライターの糸井重里氏も絶賛されていましたので、読んでみようと思いました。
このお勧め本紹介ブログで紹介している通りスキマ時間を利用してでも読書をするといっぱい、いい事が起こってくると私は思っています
2017年には羽賀翔一氏により漫画化され、『漫画 君たちはどう生きるか』のタイトルでマガジンハウスから出版され、2018年3月には累計200万部を突破しました。
出来れば小説から読んでコペル君とか想像した後に漫画を読めばより物語が理解でき、より深く考えると思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] このブログで紹介した「君たちはどう生きるか」や夢を叶える象のように、読書に慣れ親しんだ経験の少ない人も理解が深まり学びが多い本です。 […]
[…] ちなみに『君たちはどう生きるか』をこのブログでも過去に紹介しました。 […]