紹介本 『22世紀の民主主義』

22世紀の民主主義/ 成田 悠輔

この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。

今回は忖度なしの歯に衣着せない発言が特徴で、番組のコメンテーターとして出演する機会も多い成田 悠輔さんの「22世紀の民主主義」を紹介します。

成田悠輔さんは、夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表取締役をしています。

専門はデータアルゴリズム数学ポエムを使ったビジネス公共政策の想像とデザインです。

東京大学卒業時には最優等卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞する天才です。

以前から「残りの平均寿命による選挙の1票の格差」の発言など、興味があり、成田さんが考える未来の民主主義について読んでみたいと思いました。

成田悠輔さんはひろゆきさんと日経テレ東大学でHackという番組にも出演していて、「ひろゆきと考える 竹中平蔵はなぜ嫌われるのか?」はこの番組の収録を元に出版されています。

民主主義というゲームルールを変える 革命

断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは日本は何も変わらない。

これは冷笑ではない。

もっと大事なことに目を向けようという呼びかけだ。

何がもっと大事なのか? 選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることだ。

ゲームのルールを変えること、つまり革命であるーー。

出版元 SB Creative 紹介

イェール大学助教授をしている成田さんは、学術論文を読む機会も多いだろうし、本書も論文の様に要約を初めに書かれています。

要約でこの本な内容をざっくり理解し、面白いと思った人が根拠や背景、詳細を本文で示されています。

出版元 SB Creative 紹介文にしても本書のはじめに断言したいことで詳しく数字の根拠も持って書かれています。

日本人の平均年齢が48歳くらいで、30歳未満の人口は全体の26%。全有権者に占める30歳未満の有権者の割合は、13.1%だそうです。

若者自身の行動も追い打ちをかけ、20代~30代の自民党支持率は、60~70代とほとんど同じかむしろ高く、若者が選挙に行ったところで選挙結果は変わらず、政治家にプレッシャーを与えることができません。

今の選挙の仕組みで若者が超マイノリティである以上結果は変わらない。

本書で伝えてある内容は、選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることです。

資本主義と民主主義

経済と言えば「資本主義」。政治と言えば「民主主義」。勝者を放置して徹底的に勝たせるのがうまい資本主義はそれゆえ格差と敗者を生み出していまします。

生まれてしまった弱者に声を与える仕組みが民主主義です。

暴れ馬・資本主義と民主主義という手綱を掛け合わせることで世界の半分は営まれていて2000年ぐらいまではうまくいっていました。

本文のデータからも、今世紀に入り民主主義の国ほど経済成長が低迷し、コロナ禍の期間にも、民主国家ほどコロナで人が多く亡くなっています。

21世紀に入りネットやSNSの浸透とともに進んだ民主主義の「劣化」凄まじいこととなっています。

劣化を象徴するヘイトスピーチやポピュリズム的政治言動、政治的イデオロギーの分断(二極化)など民主主義の劣化が進んでいます。

超人的な速さと大きさで解決すべき課題が爆発的に増えている世界では、凡人の日常感覚(=世論)に忖度しなければならない民主主義はズッコケるしかないのかと疑問を呈しています。

重症の民主主義においても、支配者層が大多数の被支配者層の政治的関与を認めず恣意的に統治を行う専制政治よりはましで、課題を解決するための三つの処方箋を本書で具体的に提案しています。

民主主義再生の三つの処方性

闘 争

闘争は、民主主義と愚直に向き合い、調整や改良によって呪いを解こうとする生真面目な営みです。

例としては、政治家の注意を目先・内向きの世論だけでなく長期の成果へと振り向けるGDPや平等・幸福なでの成果指標と紐づける手法なでおです。

政治家のインセンティブを改造する「ガバメント・ガバメンス(政府の統治)」に加え選挙制度の再デザインの提案などについても本書では多くの事例が上げられています。

逃 走

闘争は既存の選挙制度で勝った現職政治家がこうした選挙制度改革を行いたくないことを考えると難しく、いっそ闘争を諦め、民主主義から逃走してしまう提案です。

既存の国家を諦め、デモクラシー難民となった個人や企業を、独立国家・都市群が誘致したり選抜したりする世界観です。

新国家群が企業のように競争し、政治制度や商品やサービスのように資本主義化した世界についても具体的な事例を多く紹介していて、実に面白い発想です。

試みが進行中のものとしては、どの国にも支配されていない公海の特性を逆手にとって、公海を漂う新国家群を作ろうという企てなどです。

21世紀後半、資産家たちは海上・海底・上空・宇宙・メタバースなどに消え、民主主義という失敗装置から解き放たれた「成功者の成功者による成功者のための国家」を作りあげてしまうかもしれません。

構 想

逃走はどこまでいっても逃走でしかなく、民主主義に絶望した選民たちの楽園に逃げ出す資産家たちは、民主主義に内在する問題を解決は行いません。

求めれるのは、民主主義を瀕死に追いやった今日の世界環境を踏まえ民主主義の再発明することが構想です。

構想としては「無意識データ民主主義」という発想で、無数の民意データ源から意思決定を行うのはアルゴリズムです。

このアルゴリズムのデザインは、人々の民意データに加え、GDP、失業率、学力達成度、健康寿命、ウェルビーイングといった成果指標データを組み合わせた目的関数えお最適化するように作られます。

(1)まず民意データに基づいて、各政策領域・論点ごとに人々が何を大事だと思っているのか、どのような成果指標の組み合わせ・目的関数を最適化したいのかを発見します。

(2)(1)で発見した目的関数・価値基準にしたがって最適な政策的意思決定を選ぶ。いわゆる「エビデンスに基づく政策立案」に近く、過去に様々な意思決定がどのような成果指標に繋がったのか、過去データを基に効果検証することで実行されます。

まとめ

政治にも、政治家にも、選挙にも興味が持てない成田さんが、この本の目的としていることは単純明快で選挙や民主主義をどうデザインすればいいか考え直し、改造案を示すことです。

政治やそれを縛る選挙や民主主義の課題に挑戦することが本書の隠れた目的以下の2つの戦略をとっています。

  1. 政治や選挙や民主主義をちょっと違った視点から眺めることで、考え直す楽しさや面白さを作りだす。
  2. 民主主義をどう改造してどう参加すればいいか、色々な方向に向かう戦略や構想を示す。

本書で書かれている構想は現在においては実現不可能と思われるイメージですが、2000年以降のインターネットテクノロジーによる社会変化を考えるとその方向に進んでいく世界も想定出来ます。

テクノロジーを活用した民主主義の革命が起こり、誰もが幸福を感じられる最適解が生まれることを期待したいものです。

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