ミカドの肖像 / 猪瀬 直樹
今回紹介する本は1987年第十八回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した猪瀬直樹さんの「ミカドの肖像」です。
この本を読むきっかけは、安宅和人さんがブログで以下のように述べていたので、読んでみることにしました。
猪瀬直樹さんの『ミカドの肖像』は現代人の基本教養書の一つと言えると思うので紹介しておこう。なぜ、品川駅前に大きなプリンスホテルがたくさんあり、これらがなぜ「プリンス」ホテルと名付けられているのか、なぜその脇に「竹田」と表札がかかった大きなビルがあるのかなどはこの本を読むとよく分かる。
ニューロサイエンスとマーケティングの間


ミカドの肖像:皇居の神秘と日本人のアイデンティティ
東京の中心に位置する皇居。巨大な都市の中心にあるにもかかわらず、そこには何か「空虚な中心」が感じられると猪瀬さんは本書で述べ、この本は始まります。
その不確かさの中心にあるのが天皇制と日本人のアイデンティティの問題であり、猪瀬直樹氏の『ミカドの肖像』は、これらの深いテーマを掘り下げるための大著です。
本書を手に取ると、多くの読者は知らなかった情報に触れることができます。
例えば、西武グループが旧皇族の土地を手に入れていたことや、当時の皇太子が泊まる「千ヶ滝プリンスホテル」が実はホテル業の登録さえしていないという事実。
また、1885年に初演されたオペレッタ「ミカド」や、米ミシガン州に「ミカド」という町があること、イタリア人画家キヨソーネが明治天皇の肖像画を手がけたことなど、天皇と関連する驚きの事実が満載です。
しかし、これらの知識を得ても、天皇の存在の不確かさ、神秘性は増すばかりで、このような歴史的背景を持つ天皇について、日本人自身があまり知りません。
その疑問は、日本のアイデンティティそのものと深く結びついていて、皇居と東京の間には見えない結界があり、天皇陛下の存在は私たちから遠いものとして感じられています。
猪瀬氏がこの本を書いていた1984年頃、日本は経済大国としての地位を確立し始めていました。
しかし、その背後には薄っぺらな経済大国の影があり、天皇制という「空虚な中心」がその象徴として浮かび上がってきます。
この書籍は、日本のナマな姿、不可解さ、不合理さを探求するためのものであり、天皇という手の届かないブランドの背後に隠された真実を解き明かそうとする猪瀬さんの情熱が感じられます。
『ミカドの肖像』は、日本の真実を探ろうとする猪瀬氏の情熱と業を感じることができます。
この800ページを超える大著を手に取り、天皇制と日本人のアイデンティティについて考え、その神秘性と矛盾を再認識することができます。
猪瀬氏の筆によって、日本の「空虚な中心」とは何か、その答えを探る旅へと読者を誘います。
そして、その中で日本の深い部分、不確かな部分、そして私たちが忘れてしまった部分を再発見することができると思います。



コメント