人新世の「資本論」斎藤 幸平
お勧め本紹介ではSDGsについても取り上げ、新しい未来を切り開く為の世界共通の目標として紹介しています。
今回紹介する人新世の「資本論」ではSDGSやグリーンニューディル政策では、今の地球環境の課題は解決出来ないという問題提起の本です。
今、山積している課題はSDGs(持続可能開発目標)を達成することで改善できる未来を想像しSDGsに関するブログでも紹介してました。
開発目標自体が環境に負荷をかける現実を事例で紹介さています。
人新世という時代
人新世(じんしんせい・ひとしんせい)という言葉は聞いたことがありませんでした。
好書好日のインタビューで著者は以下のように述べています。
地質学の概念なのですが、言わんとすることは単純です。
人類の経済活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味です。
たとえば、地球のすみずみまで、人間が作った道路やビル、河川敷、農地などがありますよね。
海に目を向ければ、海洋プラスチックゴミだらけ。
大気には、拡大する経済活動のせいで、二酸化炭素が増え続けています。
さらにはプルトニウムやセシウムが飛んでいる地域もある。
とにかくどこに行っても、人類の活動がなんらかの形で覆ってしまっています。
これをどう見るべきでしょうか。
人間が地球全体を自由に支配し操れる時代になったわけではありません。
むしろ逆に人間が制御できないような、様々な自然現象が生じている。
その際たる例が気候変動です。気候変動の影響で、スーパー台風、ハリケーン、山火事などの異常気象が発生しています。
このまま放置しておくと、水不足や食糧危機などの問題が起き、生物の多様性が失われて、多くの場所が人間の住める地球環境ではなくなってしまう。
そういう時代に突入しているということです。
好書好日インタビュー
脱成長コミュニズム社会 共有財産=コモン
この本ではSDGsの様に世界で課題解決に合意が得られている持続可能な開発目標はベースはやはり資本主義で成長を基本としています。
新たな持続可能なテクノロジーで解決してとしてもそのテクノロジーが何かの犠牲の上に成り立っているのであれば課題解決になっていないと指摘しています。
例えば、先進国で達成したかに見えても、そのツケは途上国に押し付けられている事例も紹介しています。
ガソリンに替わる電気自動車がクルマの未来の形ともてはやされ、テスラー社の株は企業業績以上の期待値で推移しています。
その電気自動車に必要なリチウムやコバルトは、途上国での貴重な水の浪費や過酷な労働を犠牲で成り立っている事例など示しています。
またはファストファッションの為の綿作りのインドの現状も同じ事がいえます。
資本主義は利潤のあくなき拡大を目指してすべてを市場と商品化に巻き込んでいきます。
国立環境研修所研究者五箇 公一氏は今回のコロナウィルスの拡大は行き過ぎた資本主義が人類未開の地に踏み込んだ結果でこれからも頻繁に起こる可能性を示唆しています。
本のある生活/ takamyu本棚で紹介しました「それをお金で買いますか」でも行き過ぎた資本主義の事例を紹介しています。
自然の略奪、人間の搾取、巨大な不平等と欠乏を生み出してきたからには、それを変えなければ、解決できないというのが著者の考え方です。
「コモン」についてインタビューで著者は以下の様に述べています。
「書籍『未来への大分岐』で対談したアメリカのマルクス主義者マイケル・ハート氏も主張するように、『コモン』(共有、公営化)の領域が広がる。
コモンとは、水や電気、公共交通機関、情報通信、教育、医療といった、本来人権にかかわり、貨幣がないとアクセスできないのはおかしい財や生産手段を利用者が共同管理しようという考え方だ。
企業に任せてはならず、むしろ、無償で万人に提供されなくてはならない」
「この考え方に立てば、財産の私的所有は残るにせよ、市場の役割は大きく縮小する。
財やサービスは、例えば①道路や軍事、郵便は国有財産、②スマートフォンや自動車などは私有財産、③それにコモン――という3つに分かれる」
「コモンの原理は自治だ。そうすれば、参加者の問題意識や関心が高まり、自立する。
地方自治体や協同組合を中心に運営すれば、管理費や安全性についての情報公開も求められる。
最終的には生産活動もコモン化するだろう。
ワーカーズコープのように労働者自身が出資し、雇用関係を決め、事業を運営する仕組みだ。
自分たちで管理できれば働き方は大きく変わり、モノを作りやすくもなる。
そのための条件は生産の分散化・水平化だが、3Dプリンターの登場でそうしたアイデアは夢物語ではなくなった」
まとめ
人新世の資本論で著者はマルクスの「資本論」から進んだソビエトを含む共産・社会主義とは違った未来をイメージしています。
行き過ぎた資本主義にz世代の大半がNOを突きつけている中、コモンという概念が未来を切り開く可能性を提唱してます。
水や電気、公共交通機関、情報通信、教育、医療といった、ライフサービスを公でも企業でもない新たな市民の代表が管理する手段を提唱しています。
ブランドやマーケティングに様に元来必要性がないモノやサービスに購買意欲もたらす行為のなくすことを伝えてもいます。
多様な価値観の中、潜在意識にない新たなニーズを掘り起こすマーケティングへの疑問に一定の理解は示せます。
ただこれ程SNSが進化しアルゴリズムやビックデータで個人の嗜好や欲求が表面化した今、脱成長はある意味我慢を強いいる結果となります。
頭で理解する環境問題と目の前の欲求とのバランスです。
著者の提唱する未来はある一定の知識層・情報リテラシーの高い方には十分理解できる未来ですが、日頃会話する一般の方にはなかなか理解できない現実が予想されます。
世界的課題の定期的な真実の情報提供と検索で上位に示される結果は国に期待したいです。
コメント
コメント一覧 (3件)
[…] この本はこのブログで紹介した「人新世の資本論」について真っ向から否定している本です。 […]
[…] そのひとつの考え方が「人新世の資本論」かもしれません。 […]
[…] このブログでも「紹介本 『人新世の資本論』」で斎藤さんの著書を紹介しています。 […]