紹介本 「それをお金で買いますか」/ 市場主義の限界

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それをお金で買いますか マイケル・サンデル/ ハヤカワ文庫

ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』の著者マイケル・サンデルがお金の論理について書かれた話題作でした。

このお勧め本紹介のテーマ「読書経験の少ない方へ本の面白さを伝える」のに「テーマが「お金」で分かり易い内容です。行き過ぎた資本主義のお金の使われ方をいろんな立場や視点を切り口に語られいます。

あまり考えた事がないお金の使われ方は人それぞれに正義があるので、自身の価値観が広がる内容です。

「お金で買えないもの」の基準が人によって違う

「世の中にはお金で買えないものもある」と人は口にしますが、実際お金で売買されている事例において疑問を呈しています。

例えばこの世で実際に売買されているものについて、臓器売買、人間の身体を使った広告、大学への裏口入学、無料演劇をお金を支払い代わりに列に並ぶ行為などです。

資本主義の観点から、両者がお金の受授に納得して行われいる行為だったとしても、その行為に嫌悪感を持つものが多いのは道徳的価値観が崩れていくことにある様です。

私が感じたこの本の3つのおすすめポイント

①市場主義における道徳的価値観の限界

②行き過ぎた市場主義による不平等

③お金で人が動くことによる腐敗の懸念

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市場主義における道徳的価値観の限界

市場主義が進むことはより効率的に市場ニーズが反映され相互利益をもたらすいい面もありますが、市場主義による競争がなじまない分野で弊害を起こしていきます。

本来は歴史的・文化的に醸成されてきた道徳的な社会領域に市場主義が進み侵入していくことに違和感を持つこととなります。

具体的には家庭生活、友情、生殖、健康、福祉、教育、環境、自然、芸術、市民性、スポーツ、死等といった領域に市場主義が進むと道徳的価値観がなし崩し的になっていく可能性があります。

空港の手荷物検査や公聴会やコンサートの待ち行列の並ぶ時間を短縮する為、先頭に並ぶ権利が売買されている事例や高額を出せばいつでも医療相談出来る会員サービスなどです。

売買する両者にはメリットがありますが、その事がどの領域まで許されるかという問題を含んでもいます。
営利目的のUSJとディズニーでアトラクションの待ち時間を解消するためのファスト・パスに関して方針が違います。

ディズニーの理念としてゲストは平等であるため、ファスト・パスも早い者勝ちですが、ユニバーサル・スタジオでは、お金を出す事で待ち時間を減らせます。何度も行けない遠方者には、メリットかもしれません。

この本では、営利目的でないシーンでの代行列並びを多く取り上げています。

その事例においても当初は道徳的観点から市場の侵入に抵抗感も多くありましたが、時代を経るごとにその意識も薄まっていくことも多くあります。

市場の道徳的限界

すべてが売り物となる社会について2つの側面での懸念を示し、事例を紹介しながら、市場経済に関して疑問を唱えています。

二つの懸念とは、不平等にかかわるもの腐敗にかかわるものだ。

不平等について

裕福であることのメリットが、ヨットやスポーツカーを買ったり、優雅な休暇を過ごせたりといったことだけなら、収入や富の不平等を懸念することはありません。

機会の不平等で紹介された事例は、

  • 政治的影響力 お金で並ばすロビー活動
  • すぐれた医療を受ける権利
  • 犯罪多発地域ではなく安全な地域に住む機会
  • 問題だらけの学校ではなく寄付による一流校へ優先入学など 

上記のような事例がお金で買えるようになるにつれ、収入や富の分配の問題が大きくなります。

腐敗を招く傾向

すべてを売り物にすることによる懸念の二の目は、市場は腐敗を招く傾向があるということです。

子供が本を読むたびにお金を払えば、子供はもっと本を読むかもしれない。しかしこの事は読書が心からの満足を味わわせてくれるものではなくなってしまします。

経済学者の中には、市場は自力では動けないし、取引の対象に影響を与えることもないと述べる人もいます。

イギリスは無償で献血を行い、アメリカは有償と無償献血があり、後者では無償ボランティアが減る事実があっても影響ないと主張します。

大切にすべき非市場的価値が、市場価値に押しのけられてしまうこともあります。

この本による以下のような問題提起について議論や考える必要があります。

  • 公共生活や人間関係において市場が果たすべき役割は何か。
  • 売買されるべきものと、非市場的価値によって律せられるべきものを区別するには、どうすればいいか。
  • お金の力がおよぶべきでない場所はどこか。

行き過ぎた市場主義による不平等

裕福であることのメリットが、ヨットやスポーツカーを買ったり、優雅な休暇を過ごせたりといったことだけであれば、収入や富の不平等が現在ほど問題となることはない様に思えます。

たくさんの事例にあるそれをお金で買うのはどうだろうということへの不平等感にある様に思われます。

一流大学の入学が支援金によって影響を受ける事例などは、将来の富の形成に学歴が影響することを考えても、収入や富の再分配にも影響を与えることとなります。

もちろん日本においても生まれた地域や親の所得によって子供の学歴に影響を与えている問題も提起されていますし、機会の平等の前提が崩れていますが、更に加速する状況でもあります。

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お金で人が動くことによる腐敗の懸念

市場には腐敗を招く傾向で紹介のあった子供が読書することを促進する為にお金を与えることは、将来子供が読書を心からの満足する機会を奪います。

面倒な仕事だと教えている危険性も含んでいてブログのテーマからいくと由々しきことであります。

もうひとつの事例として、薬物中毒の女性が不妊手術か長期の避妊処置を受ければ、300 ドルの現金を与えることが紹介されていました。

そもそもその事は慈善事業の一貫として行われていて、提案された薬物中毒の女性も自らの意思で行っていることは間違いありませんが、人の生殖機能を、金銭的インセンティブを用いる事に違和感を感じます。

薬物中毒に母親のもとに生まれた赤ん坊は不幸だと思うし、できれば女性に子供を産んでもらいたくないとも思う。

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まとめ 

市場主義の蔓延によって生み出された様々な事例を紹介するなかで、市場の限界を再認識しました。

紹介される事例は米国のものが多く、日本の道徳感では、未だに信じられない事例もありますが、既にその違和感がなくなっているものもあるので、近い将来日本でも当たり前になることもあると思われます。

日本でも最近の副業ブームで空き時間を活用して出来る副業を紹介するプラットフォームがたくさんあります。

自分の得意と苦手を売り買いする文化は当たり前になりつつあると思います。

道徳感ではなくても、退職を代行して行うサービスなど自己責任で行うモラルなど嫌なことを請け負うサービスはこれからも広がっていくことは避けれないのかもしれません。

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