『戦略的読書日記』本質を抉りだす思考のセンス / 楠木 建
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
読書は経営のセンスを磨き、戦略ストーリを構想するための筋トレであり走り込みである。
即効性はない。しかしじわじわ効いてくる。
三年、五年とやり続ければ、火を見るより明らかな違いが出てくるはずだ。
本書 はじめ
スキルとセンスの違い
この本は「読書の戦略」とか「戦略的な読書法」について書かれた本ではなく、一般的な書評書でもなく、戦略と経営の本質についての考えを本を通じて主張する内容です。
「すぐに役立つビジネス・スキル」は身に付かないという前提で書かれています。
本書の冒頭で「戦略構想のスキル」というものはなく、誰かが作った戦略の分析ならば何かの分析フレームワークというスキルでなんとかなるという事です。
ただし自らオリジナルな戦略ストーリーを作るというのは、まるで違う仕事と言う事です。
戦略の構想は何よりも「綜合」(シンセンス)の思考を必要とし、戦略をつくるという仕事にはそもそも「分析」(アナリシス)の思考とは相入れない面があると言います。
「分析」と「綜合」の違いは「スキル」と「センス」の違いと言いどちらも大切ですが、「スキル」は見える化しやすいが「センス」は千差万別であり、定義が容易でありません。
「センス」を身につけるための定型的な方法もないというやっかいなもので、多くの人がスキルに傾くのは分かりやすいからでもあります。
「スキル」と違い「センス」は直接的に育てられないが、仕事の中で磨くことができると言います。
「文脈に埋め込まれた、その人に固有の因果論理の総体」を意味し、ひらたく言えば「引き出しの多さ」と言うことです。
センスを身につけるのにセンスのいい人の隣にいて、よく見て、「見破る」(背後にある論理をつかむ)ことが早道ですが、都合よく自分の周りにセンスのいい人がいるとは限りません。
疑似的ではあっても日常的に手軽にできる方法が読書です。
情報源として読書が優れているわけでなく断片的な情報であればネットニュースやあらゆるメディアから送り出されています。
センスとは因果論理の引き出しの多さと言うことから、論理を獲得するための深みとか奥行きは「文脈」の豊かさにかかっているので、あるテーマについてまとまった記述のある本であれば有効と言うことです。
戦略のセンスを磨くにあたり読書はもっとも「早い、安い、美味しい」方法です。
原理原則の経営
ファーストリテイリングの会長兼CEOの柳井正さんが書いた『一勝九敗』の巻末付録あるファーストリテイリングの「二十三条の経営理念」の重みを経営に参画する様になった著者は肌で理解するようになります。
商売上の話が具体的な案件になると、柳井さんは必ず原理原則の抽象レベルにまで問題を引き上げ、ことの本質を突き詰めます。
その上でもう一度具体的な問題に降りてきて、意見や判断を述べます。
この具体と抽象の振幅の幅がとんでもなく大きくて頻度も高く、脳内往復のスピードが極めて速いそうです。
戦略ストーリーを構築する経営者の能力はどれだけ大きな幅で、どれだけ高頻度でどれだけ速いスピードで具体と抽象を行き来できるかで決まります。
情報は少なめに、注意はたっぷりと
情報整理についての本で著者がおすすめするのが「スパークする思考」です。
「情報の豊かさは注意の貧困をつくる」と経済学者のハーバード・サイモンが言葉を残しているそうです。
ネット上に大量の情報が存在しているだけでは意味はありません。人間がアタマを使って情報にかかわって初めて意味を持ちます。
人間と情報をつなぐ結節点となるのが「注意」。人間が注意を振り向けることで脳の活動を経て、意味のあるアウトプット(仕事への成果)へと変換されます。
ITの進化で情報は指数関数的に増大していますが、人間のアタマのキャパシティは変わりません。
情報を効率的に取り込むためのツールが時代と共に変化しても、本当に必要なものは「注意の方法論」と言う事です。
それを教えてくれるのが「スパークする思考」です。
戦略のジレンマ
競争戦略の本質は「他社と違った良いことをしろ」に尽きますが、同時に「違ったこと」で成果(競争戦略における長期利益)を出すうえで「よいこと」で「儲かる」ことでなくてはなりません。
「よいこと」をしてボロ儲けしていると必ず他社も真似してくるので、戦略の長期目標は違いを維持するための障壁をいかにつくるかと言うことです。
「バカなる」こそが持続的競争優位の本命であり、その最強論理について書かれているのが『「バカな」と「なるほど」』と言う本です。
まとめ
戦略のセンスを磨くにあたり読書として21章に別れて本を紹介しながら著者の考えを述べています。
この本で紹介された本は今まで読むことがない本ばかりで興味ぶかく、改めて読んでみたいと思うものも多くあり、いつかこのブログで紹介します。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] この本は以前紹介した『戦略的読書日記』の中で著者の楠木 建さんが知識の深さに驚嘆されており、30年前の本を取り寄せて読んだ次第です。 […]
[…] また、『戦略的読書日記』においても、ユニクロの創業者柳井正氏も経営の最前線で起こる事象を具体と抽象の思考で経営されている事を紹介されており再読することにしました。 […]