介護の未来 高齢者向け回想法開発

このブログ「介護役立つ情報」では、事業所選び・介護の仕事の他に介護に関するテクノロジーについても紹介します。

目次

認知症のリハビリに使われる回想法とは

回想法とは、昔の写真や使っていた馴染みの物を見たり、音楽を聴いたりすることで、昔の体験や思い出を語り合う心理療法の一つです。

回想法は、グループで行う場合と、個人で行う場合があります。

例えば、高齢者でなくとも、懐かしい歌を聴くことで、その頃自分がどのような人生を過ごしていたのか思い出すことがあると思います。

それが、回想法の大きな効果のひとつです。

例えば、懐かしい写真を見て、その頃自分が何をしていたのか、家族、学校・同僚・友人などと、どのように過ごしていたのか、楽しかった体験、苦い体験などを思い出します。

このように体験を、誰かに話すことによって、話した方も聞いた方もお互いが心地よい時間を過ごすことにつながります。

ただし、参加者の中には、辛い体験や思い出したくない体験をされている方もいらっしゃいます。

回想法を行う際のスタッフは、十分にメンバーへの配慮も必要です。

現在、日本でも介護施設などで取り入れられています。

認知症ネット 「回想法抜粋」

回想法は、個人の持つ過去の記憶に触れる心理療法です。1960年代にアメリカの精神科医が提唱して以来、注目され続けています。

高齢者は、直近の出来事を思い出す「短期記憶」が弱まっていきますが、比較的過去にあったことを思い出す「長期記憶」は強まっていくそうです。

それだけに、「回想法」は高齢者に適していると言われています。

「回想」にはトリガー(引き起こさせるためのきっかけ)の存在が効果的です。装飾品、写真、ビデオ、音楽がトリガーとされています。

台湾発高齢者向け回想法の研究経緯

今回初回する回想法は、台湾で研究・開発されているバーチャルリアリティと拡張現実の統合を利用した高齢者向け回想法です。

台湾は新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)対策を成功した事例として世界で報道されています。

その成功に導いた立役者として注目を浴びているのが。2016年に台湾史上最年少の35歳で入閣した台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン(唐鳳)氏です。

今回の新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)対策において、遅れる日本のDXについて取材でオードリー・タン(唐鳳)氏は以下のように述べています。

「DXが機能していくにはデジタルの発達だけでは、不十分。DXは人をつなげていくもの。機械をつなげていくITとは混同してはいけない」日経クロストレンド記事抜粋

台湾も日本同様に出生率の低下と医療技術の進化に伴い、台湾の高齢者の割合は年々増加し、世界で最も急速に成長している高齢社会の1つになっています。

日本と同様の高齢社会により認知症などの加齢に伴う病気が増えており、高齢者の日常生活に支障をきたしています。

特に、高齢者の認知症の蔓延は、台湾の経済的負担を悪化させる可能性があります。

台湾の高齢者の認知症を予防し、緩和するため一環として回想法の研究が進められています。

VR・ARとは

VR・ARについて簡単に説明します。

VRとは「仮想現実(Virtual Reality)」の略で、現実ではないけれど、機能の本質的には同じである環境をつくりだす技術です。

気軽に触れられるプロダクトとしては、Oculas Questや、PlayStation VRなどのイメージです。

ARとは「拡張現実(Augumented Reality)」の略で、現実の環境に対してコンピューターで情報を加える技術を指します。

一般的なプロダクトとしては、ポケモンGOなどが有名です。VRから派生した技術だと言われています。

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開発されているVRシステムによる回想法

VRには、場所も時間も制限がありません。彼らが作り出したノスタルジックな世界は、高齢者がVRヘッドセットをつけるだけで、どこでも、いつでも、その中を探索できるような取り組みです。

360°自由に見渡すことができるだけでなく、懐かしい家に入れば、その中にある物が、特有の音などの質感をもってユーザーを迎えます。

この体験をしながら、周囲にいる人間と会話をことで、多くのトピックが高齢者の記憶から誘発されて出てくることを期待しています。

VRシステムでは、場所や時間に制限なく、さまざまな要件に応じて虚像空間を設定できます。

VRシステムのシミュレーションプロセスは、現在、次の3つのアプローチのいずれかで構築されています。

ジオメトリベースのVR 

3Dモデル構築ソフトウェアを使用して3次元(3D)シミュレーションシナリオに必要なオブジェクトを作成します。

高齢者は任意の角度とパスでシナリオを表示でき、トリガーイベントをモデルオブジェクトに適切に実装して、メッセージ配信とトリガーの相互作用を実現できます。

VRソフトウェアの編集機能を使用して、オブジェクトのプロパティを定義したり、さまざまなレベルの対話のために特定のデバイスを駆動したりできます。

画像ベースのVR

これは、ネットワークの帯域幅不足によって悪化する可能性のあるグラフィックベースのVRのフレームレートに関連する問題を解決するために導入されました。

画像ベースのVRの初期の兆候は、画像処理技術を使用してAppleによって開発されたQuick TimeVRでした。

Quick Time VRは元々Mac用に設計されていましたが、その後PCにも拡張されました。

ハイブリッドVR

将来的に主流のネットワークVRシステムとして適用できる可能性があります。

画像ベースのVRと同様に、ハイブリッドVRは、360°のシーンを撮影することで複数の連続画像をキャプチャします。

これらの画像は、画像処理によってパノラマ画像に結合されます。

その後、元のシナリオに属していなかったオブジェクトをユーザーの要件に応じて追加し、これらのオブジェクトのプロパティを簡単なプログラミングで確立できます。

開発されているARシステムによる回想法

ARはVRから派生したテクノロジーでしす。

ARでは、VRデバイスを使用して仮想オブジェクトやシーンを現実世界の画像に投影する必要があります。

これにより、ユーザーは現実とVRの共存を認識できます。

現実世界の環境とコンピューターでシミュレートされた画像を組み合わせて、仮想メディアを介して代替現実を作成し、現実世界での仮想3Dオブジェクトのユーザーの認識と操作を容易にします。

ARの実験では、スマートフォンやタブレットを用いて「特定の写真を覗く」ことで、ユーザーが特殊な体験ができるように設計されました。

このシステムによって「入り口」に立つことで、前述のVRシステムの利用がかなりスムーズに進むとのことです。

没入と回想

以上のようなシステムによって、高齢者は「没入体験(その世界に入り込んだように感じる体験)」ができること、効果的に回想が行われることが示されました。

「回想法」が老化に対する倦怠感や無力感を軽減するために有効ならば、このようなテクノロジーでさらにその効率を高めるのは大事だと考えられます。

ちなみに、以上のようなVR・AR技術はごく一般的なソフトウェアで作られています。

脳をささえるテクノロジー

今回参照した文献に、かなり印象的な文章がありました。

寿命が限られていることに気づいている高齢者は、将来への興味を失うことがあります。

「過去を振り返るな」という言葉が時々使われますが、記憶を辿ることは、脳にとっては非常に素晴らしい側面もあります。

将来への興味でひたすら走ってきた人に、技術の力でそっと記憶を辿るサポートをしてあげられるのは、現代の大きな可能性です。

※この記事で参照している科学論文の情報
著者:Yung-Chin Tsao,Chun-Chieh Shu, Tian-Syung Lan
タイトル:Development of a Reminiscence Therapy System for the Elderly Using the Integration of Virtual Reality and Augmented Reality
URL:doi.org/10.3390/su11174792

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