このブログでは「介護役立つ情報」を紹介します。
今回は大阪市北区のクリニック放火殺人や埼玉県ふじみ野市の在宅医射殺事件等の凶悪事件が報道される中、医療・介護サービスにおける暴力・ハラスメントのリスクにおける対策の進捗状況を紹介します。
暴力・ハラスメント関 連
現場の認識を高めサービス開始時からの備え
埼玉県ふじみ野市の在宅医射殺事件等により、在宅医療や訪問介護における暴力・ハラスメントのリスクに光が当たり始めています。
「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書」においてもサービス種別を問わず半数近くの職員が利用者・家族から何らかのハラスメント(身体的・精神的)を経験していることが分かっています。
このような中、全国でわいせつ行為での逮捕事例が相次いでいます。
2019年12月自宅に来た訪問看護師の女性に睡眠薬のようなものを飲ませ、わいせつな行為をしたとして、兵庫県警東灘署は準強制わいせつの疑いで、神戸市東灘区の無職の男(79)を逮捕され、2020年2月懲役2年6か月の実刑判決が言い渡されいます。
また、2020年7月にはさいたま市で訪問介護職員の女性を脅迫して体を触ったとして、83歳の男性が強制わいせつの疑いで逮捕されています。
暴力・ハラスメントの被害を防ぐためには「危険を察知したら逃げる」「危険の兆候があれば事業所の上司・管理者に報告する」など対応方針・マニュアルの整備が必要です。
介護現場におけるハラスメント対策
厚生労働省では、介護現場におけるハラスメント対策について、地方公共団体や介護現場の職員が利用できるコンテンツを掲載しています。
掲載サイトには「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」や「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究事業報告書」など介護現場で役立情報が満載です。
懸念されるのは、「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究事業報告書」の調査聞き取りにおいて、多くの居宅サービスで半数以上の事業所が職員研修を実施していないことが分かります。
「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」の認知状況の調査においても存在を知っている事業所は1~3割程度です。
ここにおいても医療現場と比較しても小規模な事業所が多い介護現場の課題があります。
小規模事業所においては、サービス業務に加えて、事務処理の多さや慢性的な人手不足で研修に至っていない状況が考えらえます。
まずは管理職クラスには暴力・ハラスメントのリスクを遠い事業所で起こっているという感覚から自施設でも起きうる可能性と捉え、継続的な研修受講の機会を持つ必要があります。
契約書・重要事項説明書に解除規定の明記
介護保険サービスは事業者と利用者との契約によって提供されています。
サービス利用開始前にその認識を利用者・家族に持ってもらうため、重要事項説明書は丁寧に説明する必要があります。
暴力やハラスメントへの対応についても、契約書・重要事項説明書に以下のように解約条項を記載します。
「暴力、暴言、セクシャルハラスメントなど著しい迷惑行為、不当あるいは過度の要求、サービス提供が継続できないような行為等」
また、家族内には介護サービスや事業者に対してそれぞれが、異なった意見や要望を持ち、事業所にそれぞれの要求を訴えれる事例などもあります。
また認知症の方の家族が利用者の財産で揉めている事例も多くあります。
このような場合に備え、利用代理人とか身元引受人のような立場を明確にし、「利用者を代行すると共に家族代表者としての責任を負う」等明記することもお勧めします。
契約書に明記すべき内容例
- 暴力・ハラスメントの禁止
- 暴力・ハラスメントがあった場合の利用停止等の措置
- 暴力・ハラスメントを理由とする契約の解除
- 利用代理人等の役割・家族代表者として明記
重要事項説明書に活用すべき内容例
- 利用者の禁止事項・詳細に記載
- 提供するサービスと提供しないサービスも明記
- 利用者だけでなく利用代理人等も連名で署名
まとめ
職員に対する暴言・暴力行為の事例は年々耳にする機会が増えています。
そのような中で自治体の取り組みについては温度差があり、先行している兵庫県等はマニュアルや事業者向け研修や相談窓口の設置、2人以上の職員による訪問サービス提供時の費用の一部補助なども実施しています。
事業者としては自治体任せではなく大切な職員を守る体制を整えていく必要があります。
介護職の経験が浅い職員に継続的な研修・マニュアルの周知を行うことがひいては離職率の低下にもつながっていきます。
介護の仕事を探される方は面接時に研修制度や事業所の離職率など質問してみることもお勧めします。
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