このブログ「介護役立つ情報」では、事業所選びや介護の仕事情報等を紹介します。
今回は人手不足が深刻な介護業界で、自前の人材育成や生産性向上に向けたデジタル投資で大手が先行している事例について紹介します。
現行1人で3人介護から1人で4人介護可能に
年末のこのブログで政府が介護の人員規制の緩和をすることに検討に入ったことは、紹介しました。
介護系施設サービスの殆どは現在入所者3人につき、少なくとも1人の職員を配置する基準があります。
その基準を1人で4人に対応できるようにする案を軸に調整に入ったようです。
この人員基準に現場が対応していくにはテクノロジーの活用が必須要件となります。
人財育成や生産性向上に向けたテクノロジー導入には大きな投資も必要で助成金だのみでなくデジタル投資が可能な大手が先行するのは自然の流れです。
学研HD事業拡大
2022年1月17日の日経新聞によると、学研ホールディングス(HD)は2030年9月期までに国内で運営する介護施設数を現在の2倍に当たる1000拠点に増やす予定です。
学研HDはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の「ココファン」シリーズなどの介護施設を展開している。
21年時点の拠点数は約490と、拠点数ベースでSOMPOホールディングス傘下のSOMPOケア(東京・品川)などを上回り国内最多だ。
運営ノウハウに強みを持つサ高住とグループホームの2業態で拠点を増やす。
まず23年9月期までに子会社の学研ココファン(東京・品川)がサ高住を65拠点、18年に買収したメディカル・ケア・サービス(MCS、さいたま市)がグループホームを31拠点増やす。
土地のオーナーが建てた物件を学研が20~25年借り上げるサブリース方式を採用して初期費用を抑える。少子化が進むなか、介護施設は高稼働が見込め、不動産投資の需要がある。
学研HDは施設の拡大に合わせて自前で介護士の育成に力を入れる。
学研の教育機関「学研アカデミー」で年間採用者の約2割に当たる800人を養成し、介護現場に配置
日経新聞 抜粋
厚生労働省は介護人材は23年度に22万人、40年度に69万人が不足すると試算しています。
日経の取材によると学研は自前の人材育成でサービス品質の向上につなげ、非正規雇用者の資格取得を支援し正規で雇用することで人材を確保するとあります。
多くの事業者が自前で職員確保の為研修を開催していますが、研修受講者の集客に苦戦している状況です。
また、資格取得のみで実際介護現場で働かないケースも多く受講者集客と受講後の就労に関してのインセンティブが必要になってくると思います。
人手不足でも質の高い介護サービスを維持するにはデジタル技術を使った生産性の向上が課題です。
となる。学研HDはグループ全体で介護記録システムを導入した。
手書きの書類を減らして記録時間を短くすることで残業時間の短縮につなげている。一部施設では人工知能(AI)を搭載したロボットを試験導入している。
テクノロジーに関しては、このブログで紹介した『落合陽一34歳、「老い」と向き合う』が参考になります。
SOMPOケア事業拡大
日経新聞記事によると、SOMPOケアも今後5年で33拠点を新設。ベネッセホールディングス傘下のベネッセスタイルケア(東京・新宿)は移転を含め、25年度までに年12拠点ペースで出店する計画です。
SOMPOケアも入居者のベッドにセンサーをつけて心拍数などを計測するなどデータを活用した職員向けの健康管理システムを開発しています。
まとめ
日経新聞の調べによると、国内の有料老人ホームなどの特定施設とサ高住、グループホームの施設数の合計は約3万6000拠点あります。
そのうち学研など民間大手4社の現時点の拠点数は約1600と全体の1割に満たしていません。
社会福祉法人や地域の中小企業の運営が大半ですが、経営難や後継者不足などから事業譲渡が増えている現状もあります。
菅政権当時、成長戦略会議のメンバーのデービッド・アトキンソン氏が中小企業の再編を提唱していました。
その際「頑張っている中小企業もあるのに潰せというのか」「従業員を露頭に迷わせるつもりか」といった反発の声がネット上で多く上がっています。
大手がけん引し、デジタル投資でテクノロジーによる生産性向上や人手不足解消策の成果を出し、政府が助成金等で中小企業に導入していく方法が現実的なラインと思います。
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