教養として知りたい日本酒/八木・ボン・秀峰/ PHP研究所
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回は家のみブログでもお気に入りの日本酒を探すのに色んな書籍に触れている中、世界に日本酒を広める活動をされている八木・ボン・秀峰さんの本を紹介します。
八木・ボン・秀峰(やぎ ぼん しゅうほう)さんは、NYで24時間営業のアメリカンダイナーズレストラン「103」開業。
1984年、マンハッタンのイーストビレッジに江戸前鮨の「波崎」を開店。
以後シャブシャブ・すき焼き・焼き肉の「しゃぶ辰」、日本酒の酒場「でしべる」、日本酒のレストランバー「酒蔵」、手打ち蕎麦の「蕎麦屋」、関東風醤油ラーメンの「来々軒」、抹茶の和カフェ「茶庵」、カレー専門店「咖喱屋」、大正浪漫スタイルのコーヒーと日本酒バー「Hi-Collar」などを次々にオープン。
現在17店舗を数える。
2009年、NPO法人FBOおよびSSIから「名誉唎酒師」の称号授与。
2017年、農林水産省から日本食海外普及功労者表彰を受章。
2019年、日本食普及功労者として旭日双光賞を授与される。
著書 プロフィール抜粋
プロフィールからも分かるとおり、アメリカで飲食店の実業家として、成功されている八木さんは世界の流行の発信都市においての飲食の嗜好を知りつくしておられ、日本酒の世界進出も計画されています。
コロナ禍で計画が遅れることがあったとしても、日本酒が世界で戦えるポテンシャルがある商品として世界へ進出する上で欠かせないない人だと思います。
ただ美味しい日本酒が好きな私もこの本で「何を飲めばいいかわからない」というところから飲みたい日本酒が増え楽しみが増えた一冊です。
日本酒には造り手の想いが反映される
本書の前半では、八木さんがお勧めの日本酒50銘柄が、詳しく解説されていてそれを参考に購入した日本酒もあります。
その日本酒は家のみブログでも紹介していますし、
この本では日本酒のスペックの解説だけでなく、飲食店の経営者の視点でその酒の味わいに合う料理、原料や製法へのこだわりを紹介しています。
また酒造の歴史やこだわりから酒蔵を育んだ街の歴史まで紹介されており、外食でその銘柄に出会ったときも、物語を語れて会食の話はつきないと思います。
日本酒を味わうようになって出来るまでの工程や種類、酒米などを知っていく面白さを感じています。
この本でも詳しく書かれていてこれから日本酒を飲まれる方に選び方の参考となる点を少し紹介します。
日本酒は米、水、麹を原料に造られます。日本酒とワインは、同じ「醸造酒」というカテゴリーに分類されます。
大きく分けると、基本的な製造方法は同じなんですね。
酵母がアルコール発酵するためには、糖分が必要です。
ワインの原料であるブドウには、もともと糖分が含まれているため、酵母を加えてあげればそのまま発酵が進みます。
これを「単発酵」と呼びます。
一方で、日本酒の原料である米には、糖分が含まれていません。
そのため、麹菌の力を借りて、米に含まれるデンプンを糖分に変化させる必要があります。
そして、デンプンが変化した糖分を酵母の力でアルコール発酵させるのです。
このように、糖分への変化とアルコールへの変化がわかれている発酵のことを「複発酵」といいます。
美味しい日本酒を醸すには、原材料のお米は重要です。
米は全国各地で900種以上が栽培されていますが、そのうち酒造りに特化した米を「酒造好適米」といいます。
酒造好適米については、このブログで「純米酒を極める 酒造米へのこだわり」などでも紹介しました。
酒造好適米は全国に120種以上の銘柄があります。
米が違えば当然香味は異なりますし、同じ米を使っていても、同じ味わいの酒になるとは限りません。
たとえば「精米歩合」と呼ばれる精米の度合いによっても、香味は変わってきます。
精米の度合いは、食用米の場合90%程度ですが、酒造りに使う米は少なくとも70%、吟醸酒では60%に規定されています。
吟醸酒は60%以下、大吟醸酒は50%以下でなければ名乗れないという決まりがあります。
吟醸酒でいえば、米の表面を40%削り、大吟醸であれば、 米の表面を50% 削るということです。
また、水もお酒の味に大きく影響を与えます。
酒造りに使う水は「仕込み水」と呼ばれ、日本酒の成分の8割を占めます。
水に含まれるミネラルの含有量によって、味は大きく左右されます。
ミネラルが豊富に含まれる硬水ではどっしりした辛口に、軟水では口当たりの軟らかい甘口の酒になる傾向があります。
加えて、アルコールの発酵には酵母が必要になり、この種類や温度管理など杜氏の経験など、酒蔵によりそれぞれ違い、香りも異なるお酒ができます。
杜氏と呼ばれる酒造りの最高責任者は全国各地におり、それぞれに流派があります。
流派によって酒造りは変わり、同じ流派でも造る人によって味は違い、酒は造り手の人柄や想いを反映します。
日本酒を世界へ届ける
この家のみブログでも紹介しました「NY初の酒蔵「Brooklyn Kura(ブルックリン・クラ)」の挑戦についても詳しく経緯を紹介されていました。
現在、アメリカでも徐々に日本酒を提供する店が増えつつある中、現地をよく知る八木さんは日本酒が広く世界に認知されていくために必要と考える取り組みを紹介しています。
まずは、世界のトレンド発信地であるニューヨークに醸造所を造ることを提唱されています。
ニューヨークはトレンドの街であるだけでなく、キャッツキル山系のすぐれた水質の水道水が飲めることもあり、酒造りに必要不可欠な水資源もあることも可能性を秘めていると紹介されています。
また日本酒の工程は、ワインづくりよりも複雑で技術を要しますが、麹の発酵から現地で行うことも視野に入れています。
日本まで来ずとも、こうした技術が見られる場所がアメリカ現地出来れば、関心を持つ人が増え、クラフトビールやクラフトウィスキの様に「クラフトSAKE」がリーズナブルな価格で手に入ることを描いています。
日本酒に関心を持ってもらうためには、料理とともに提供することも効果的でその展開も現地の肌感覚で理解されています。
鮨やしゃぶしゃぶなどの日本食とともに、生酒や古酒、貴醸酒など、さまざまな種類の日本酒を取りそろえて提供する。
産地を日本地図で見られるようにするといった工夫なども紹介しています。
また、アメリカ進出を計画している獺祭の紹介などあります。
世界で造られる「クラフトSAKE」
日本酒の世界進出を狙ううえでは、日本から日本酒を輸入するだけではなく、世界各地で「クラフトSAKE」が造られるように支援することも重要です。
いまのところ日本以外の醸造所は、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、メキシコ、チリ、ニュージーランド、台湾に合計30あります。
このブログでも紹介しましたパリに進出している「WAKAZE」は、日本食よりも洋食を意識した風味の酒を現地の酒米で造り、肉料理やチーズに合う味わいです。
取り寄せて飲んでみましたが、日本酒の概念の外にある酸味のある白ワインに近い味わいです。
「クラフトSAKE」が発展していくには人材育成も欠かせません。
日本で酒造りを学んだ人材を世界へ送り出すだけでなく、現地の料理人を日本へ送り、その料理に合う味わいをつくることも重要です。
非営利団体「五絆(ごはん)ソサエティー」では、毎年アメリカの料理人を日本へ送り、酒造りの工程の見学や、味噌などの発酵食品を使った料理の習得などの研修が行われていることも紹介されています。
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