紹介本 『テクノロジーが予測する未来』

テクノロジーが予測する未来 / 伊藤穰一

この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。

今回は元、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を務めたデジタルアーキテクト、ベンチャーキャピタリスト、起業家、作家、学者として活躍する伊藤穰一さんの著書「テクノロジーが予測する未来」の紹介です。

著者の伊藤穰一さんを知ったのは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を辞任し日本に帰国されてからのNews Picksの対談で見る機会が多くなってからです。

長年インターネット事業への投資に携わった伊藤さんがインターネットの登場時と同様にワクワクするほどの歴史的な大転換が起ころうとしているとの事です。

「WEB3」「メタバース」「NFT」など言葉は良く聞きますが実際のムーブメントについて詳しく紹介されていますので一部紹介します。

WEB3

web3にある多くの要素のうち、特筆すべきはブロックチェーンの新技術により、「非中央集権的」という方向性をふたたび目指す点です。

ウェブ黎明期は、Yahoo!などみずから情報を発信しようとした人々は、自分の手でWWWサーバーを立ち上げました。

中心はなく、分散的なサーバーが世界中に点在する世界で、次第に大企業や大組織、各国政府も参入し、自からのサイトなどで情報公開し、その情報を閲覧することが主な目的でWeb1.0と呼ばれています。

Web2.0は、ブログなどを通じ、企業からふたたび個人が情報発信するようになり、やがてSNSも流行りだし、プラットフォーマーが提供する場に多数が参加し双方向でコミュニケーションが行えるようになります。

但しプラットフォーマーが提供するサービス上でのアカウント作成など場を提供する企業、プラットフォーマーが強大化し、力を持つようになりました。

気付けば、黎明期にネットの美点だった非中央集権的な構造が、数少ないプラットフォーム企業を中心に展開する中央集権的な構造になってしまっています。

そこでweb3が始まり、Web1.0、2.0との決定的な違いは、「分散的=非中央集権的」という流れです。

ブロックチェーンなどの仕組みの活用により、金融システムや組織ガバナンスなど、あらゆる層で分散化(非中央集権化)が起こっています。

それを象徴するのが「DAO」(Decentralized Autonomous Organization=分散型自律組織)で、新たな組織形態やガバナンス、仕事、働き方を根底から変える可能性があります。

メタバース

メタバースのメガトレンドは、やはりバーチャルリアリティ(VR)の世界です。

VRの世界で人と交流したり、アクションを起こしたりするアイデア自体は古くからありますが、ここへきてメタバースという言葉に置き換わって急激な盛り上がりを見せてます。

背景にはコロナ禍がある。リモートワークが推奨される中、Zoomなどを使ったオンラインミーティングが普及し、人々が対面ではなく、オンラインで「会う」のが当たり前になったことも要因の一つです。

バーチャル世界で「会う」ことへの身体的・心理的障壁が低くなり、人間が己の身体性や属性から解放される事は個人の身体的コンプレックスも意味を持たなくなります。

また、時空を超えて意思疎通できる場であり、自分たちのアイデンティティやコミュニケーションに大きな変化が起こる可能性もあります。

装着デバイスが更に進化すれば大きな流れは加速すると思います。

NFT

NFTは、Non Fungible Token(代替できない価値を持つトークン)の頭文字です。

デジタルデータはコピーでき、代替可能と思われがちだった。しかしブロックチェーン技術で、デジタルでありながら代替できない、唯一無二の価値を持ち得るものが登場しました。

高額落札で話題となったNFTのアート作品だけでなく、唯一の価値を持つものをNFT化する試みは、今後、確実に増えていくと考えられます。

現実には、お金に換算できない価値も数多く存在します。

NFTの仕組みを使えば、それらを1つの価値として扱える可能性があります。

人の思いや情熱、信仰心、さらに日々の善行、学位に至るまで、非金銭的な価値が可視化され得るのです。

例えば本書では、NFTによって、アートは単に「所有するもの」から「コミュニティに参加するもの」、自分は単なる「お客さん」から「コミュニティの一員として共に盛り上げていくメンバー」へと変質してきていく事例を紹介しています。

Bored Apeのように、当初のNFTアートの販売から、トークン(Ape Coin=APE)を発行・上場するまでになるなど、1つの経済圏を形成するほどの大規模コミュニティへと成長するケースも出てきています。

web3では、アーティストも、そのアーティストのファンも、誰もがコミュニティの運営主体になり得えます。

2021年ごろから流行りだしたNFTは、購入して価値が上がったら転売する投機対象として見られてきたので、初期にある詐欺案件などの危険性もあります。

しかし今後根付いていくのは、むしろ所有者が転売せずに持ち続ける、長期的な価値を持つNFTです。

「好きだから買う」ことにこそ意味があるという事です。

たとえば、著者が顧問を務めるジャニーズ事務所は、2022年に一部コンサートチケットのNFT化に取り組み始めています。

ジャニーズはもともとファンコミュニティとの結束が強く、ファンには代金以上の価値を常に感じてもらうことが理念だといいます。

チケットのNFT化はファンと直に結びつく「DtoF」(ダイレクト・トゥ・ファン)のビジネスであり、これによりファンコミュニティとの関係性は、より強固になっていきます。

ジャニーズに限らず、日本のコンテンツビジネスはファンコミュニティとの結びつきが強く、特徴的なファン心理があります。

クールジャパンの様にweb3の潮流にうまく乗れば、日本のコンテンツの価値はいっそう高まる可能性があります。

まとめ

時代の変化に取り残されないために必要なものは以下の2つと述べています。

  • テクノロジーに対するリテラシー
  • テクノロジーによって社会はどう変わるかの「ビジョン」

テクノロジーがもたらす新時代をどうとらえ、いかなる意識で迎えていけばいいかのヒントになる事が詳しく紹介されています。

web3は役に立つのか――。

こう聞いて著者が思い出すのは、まだWeb1.0の頃、中学校などで講演をした際に、たびたび寄せられた「インターネットは役に立つものですか?」という質問です。

著者はそのたび「あなたは、何に興味がありますか? 特に何にも興味がないなら、ネットはあなたの役には立ちません」と答えたそうです。

ネットは知識や情報を得る新しい手段であり、得たい知識や情報がない人には無用の長物ということでした。

web3が「役に立つか」どうかの答えは、テクノロジーそのものではなく、自分の中にあるという事です。

web3のテクノロジーは画期的ですが、テクノロジーはあくまでツールであり、有用性は使う側の目的意識によって大きく変わります。

失われた30年と言われ完全に世界から遅れをとった日本で来る時代に「社会の役に立つ」という大きな目的で、web3のテクノロジーを活用し、よりよい社会を作っていきたいと思いました。

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