経営者の条件 P.F.ドラッカー
邦題は、「経営者の条件」ですが、原題は「The Effective Executive」です。直訳すると「成果をあげるエグゼクティブ」となります。
本書でドラッカーはエグゼクティブについて、自らの知識あるいは地位のゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブと定義しています。
経営管理者は勿論、知識組織においては、責任ある地位、意思決定を行う地位、権限をもつ地位に、独自の貢献を行う専門家は全てエクゼクティブになります。
すべての組織人にとって、成果をあげるための条件について詳しく書かれた本です。
ドラッカーは「肉体労働者は能率をあげればよい。なすべきことを判断してそれをなす能力ではなく、決められたことを正しく行う能力があればよい」と言います。
つまり、エグゼクティブ(「肉体労働者」と対比して「知識労働者」と呼びます)は「何をなすべきかを決める」のが重要な資質となります。
私は能率をあげることもドラッカーのいうエクゼクティブの役割である思っていました。
多くのドラッカーのいうエグゼクティブの立場にある方においても決められたルールの中で能率を上げることに力を注いでいるようにも思われます。
本書でドラッカーは経営者になるための条件については書れていませんでした。
ドラッカーについては船井総研の創始者舩井幸雄氏がコンサルタント時代の著書で多く語られていて、いつか読もうと思っていましたが読書にも時期とご縁があると感じています。
この本の3つのおすすめポイント
私自身がこの本から学んだ3つのポイントについてご紹介します。
①成果をあげるには
②成果を上げる能力は習得できる
③人の強みを生かす
成果をあげるには
本書でエクゼクティブが成果を上げるには、著者のコンサルタントとしての経験から八つの習慣が成果を上げるにには必要と分析されています。
(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
(3)アクションプランをつくる
(4)意思決定を行う
(5)コミュニケーションを行う
(6)機会に焦点を合わせる
(7)会議の生産性をあげる
(8)「私は」でなく「われわれは」を考える
彼らは、これらの八つのうち最初の二つによって知るべきことを知った。次の五つによって成果をあげた。残りに一つによって組織内の全員に責任感をもたらした。
経営者の条件 P.F.ドラッカー p2-3
ここでドラッカーは身につける習慣は自分自身が何をしたいかではなく、なされることを考える必要があると述べています。
成果を上げる為に組織としては自分のしたいことがあっても優先すべきは、最優先課題をすすめることでエクゼクティブとしての成果を上げる結果になること伝えています。
自分がやるべきことをやる。それが成果をあげることです。非常にシンプルな解答ですが、それが非常に難しいのです。
昨今自分自身の夢ややりたいことを最優先すべきという風潮もありますが個と組織(全体)と考えたとき、どちらで成果を上げるかで必然的に行動と考えた方が変わったくることを学びました。
成果を上げる能力は習得できる
成果を上げることはエグゼクティブの仕事であり、頭の良いものが必ずしも成果をあげれるものではありません。成果をあげるには別の能力が必要です。
成果を上げる人は天賦のものではなく、成果を上げるタイプというものも存在しないと断言し、成果を出す人の共通点はたった一つ「なすべきことをなす能力だけである」と記されていました。
この事は人は努力によって誰でも、なすべき事を愚直に行動していれば、大きな成果につながるという期待や希望が持てることでもあります。
成果を上げるために身につけておく習慣的な能力を五つ紹介しています。
(1)何に自分の時間がとられているかを知ることである。残されたわずかな時間を体系的に管理することである。
(2)外の世界に対する貢献に焦点を合わせることである。仕事でなく成果に精力を向けることである。「期待されている成果は何か」からスタートすることである。
(3)強みを基盤にすることである。自らの強み、上司、同僚、部下の強みの上に築くことである。それぞれの状況下における強みを中心に捉えなければならない。弱みを基盤にしてはならない。すなわちできないことからスタートしてはならない。
(4)優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中することである。優先順位を決めそれを守るよう自らを強制することである。最初に行うべきことを行うことである。二番手に回したことはまったく行ってはならない。さもなれれば何事もなすことはできない。
(5)成果をあげるよう意思決定を行うことである。決定とは、つまるところ手順の問題である。そして、成果をあげる決定は、合意ではなく異なる見解に基づいて行わなけらばならない。もちろん数多くの決定を手早く行うことは間違いである。必要なものは、ごくわずかな基本的な意思決定である。あれこれの戦術ではなく一つの正しい戦略である。
経営者の条件 P.F.ドラッカー p43-44
成果を上げる人は仕事からスタートせずに時間からスタートする様です。
時間からと言えばまず、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し行うことで、継続的な業務の改善を促す技法を思い出します。
しかしドラッカーは計画からスターするのではなく、まずは時間が何に取られているかを明らかにすることを進めています。
次に時間を管理すべく、時間に対する非生産的な要求を退けて、自由になる時間から計画することを勧めています。上手な時間の使い方として以下のことを紹介しています。
①成果の生まない仕事を捨てる
すべての仕事について、まったくしなかったならば何が起こるかを考える。何も起こらないが答えであるならば、その仕事は直ちにやめるべきである。
②他の人でもやれることはないか考える
成果をあげるべき者が行っている仕事の膨大な部分は、ほかの人間によっても十分行うことができる。重要なことに取り組めるようになるには、ほかの人にできることはほかの人にやってもらうしかない。
③時間浪費の原因を排除する
周囲の人間に聞いてみる。「あなたの仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを私は何かしているか」と。
人の強みを生かす
強みをいかすという場合私たちは、自らの長所について思い描くことが多いと思います。この本で成果を上げることは、強みをいかす組織特有の機能と説明しています。
個人においても弱みより長所を伸ばす「長所伸展法」は成功の条件と船井総研創始者舩井幸雄氏も述べています。
ドラッカーは組織においても弱みからは何も生まず、弱みを克服するのではなく、意味のないものにすることが出来ると断言しています。
エクゼクティブは、大きな強みを持つ者は大きな弱みを持つと割り切り、強みを中心に適材適所に配置する人事がより大きな成果を出すこととしてリンカーン大統領のグラント将軍の酒好きのエピソードをしょうかいしています。
アンドリュー・カーネギーの有名な墓碑銘に刻まれて言葉も同様の趣旨で紹介しています。
有名な鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓牌銘に刻ませた「おのれより優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」との言葉ほど大きな自慢はない。
経営者の条件 P.F.ドラッカー p104
まとめ
P.F.ドラッカーにはマネジメント関連の沢山の名著がありますが、この本は日本のエグゼクティブに参考になり、行動できる点が多く含まれていると思います。
昨今世界における日本の労働生産性が低い事が報じられています。
主な要因のひとつに長時間働くことがあるうですが、長時間を美徳せず、少子高齢化で労働人口が激減する日本に置いては労働生産を上げながら日本の得意分野であるモノ作り、サービスの質の向上は生命線だと思います。
そのような現状において今後組織において成果を上げる為になすべき事をやることが最優先です。
成果を上げる為に体系的に説明された習慣や時間の考え方など実践に適した内容です。
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