ジェフ・ベゾス 果てなき野望 / 日経BP / ブラッド・ストーン
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回は今や誰もが知るアマゾン創設者の半生記『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』について紹介します。
2014年出版の少し前の本ですが、藤原和博著「本を読む人だけが手にするもの」で勧めれていたので改めて読む事にしました。
著 者
著者はブラッド・ストーンで、ビジネスウィーク誌のシニアライター。ニューズウィーク誌、ニューヨーク・タイムズ紙などで15年にわたり、アマゾンやシリコンバレー企業について報道していました。
これまでのジェフベゾスの発言や本人のインタビュー、会社の元社員から現役社員までAmazonにかかわった人へのインタビュー、両親、妻などのインタビューを通して丁寧書かれたビジネス書です。
ジェフ・ベゾスの生い立ち、Amazonの立ち上げや様々なサービスが出来て、中には頓挫したものなど詳しく描かれています。
スタートアップ企業の創業期に関わった多くの人や新たな産業に懐疑的な人など人間ドラマの側面とAmazonの歴史を負の側面も含め書かれています。
アマゾン誕生
『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』という邦題は、現在のアマゾンの躍進をみればその野心にライバル会社は戦々恐々としています。
大学を出たジェフ・ベゾスはウォールストリートの金融工学の会社で働きます。
アマゾン構想のきっかけは、D.E. Shaw創業者のデビッド・ショーが、ベゾスにインターネットでのビジネスについて調査させたことです。
この調査でインターネットが成長率の高さに驚き、あらゆるものを販売する「エブリシング・ストア」を考案します。
インターネット販売に適した商品としてまずは書籍を検討するようになります。
書籍は差別化とは無縁の商品で、ユーザーが商品の質を気にすることなく買い物ができ、取次会社を使えばたくさんの出版社にひとつずつ当たる必要がありません。
さらには書籍のスーパーストア、バーンズ&ノーブルでも300万点以上に及ぶ書籍の全在庫を持つことは不可能です。
オンラインでしか実現できない店舗を作ることができると考え、書籍のインターネット販売業で起業することを決意します。
退職してオンライン書店を始めるつもりだというベゾスは、所属していた会社のオーナー Dデビッド・ショーから強く慰留されます。
起業を決断した背景は、遠い将来に人生の岐路をふり返ったとき
「インターネットという、世界を変える原動力になると思ったものに身を投じなかった場合、あのときやっておけばよかったと心から後悔する可能性がある」と考えたからです。
このエピソードはインターネット起業の伝説となっています。
チャンスの神様には前髪しかなく後で気付いても手遅れというエピソードトークを彷彿する逸話です。
D.E. Shawを退社し、1994年ウォールストリートの東部から西部に拠点を移し起業します。
社是は「早くでかくなる」
1996年に入るころには、アマゾンの売上は月に30%から40%も伸びるようになっていきます。
成長速度はすさまじく、事業計画が役にたたないほどの成長で、当時の社員はこの頃のことを思い出せないほどの忙しさです。
その夏にアマゾンが生み出す最初のイノベーションが登場します。
書籍を購入するようアマゾンに誘導すると、誘導したウェブサイトに紹介料が入る仕組みです。
承認サイトに対する紹介料率は8%。アマゾンのプログラムは、アフィリエイトマーケティングと呼ばれる何十億ドル規模の業界を生み出します。
アマゾンにとっては他のサイトを傘下に置くような画期的なアイデアで、ネット販売創世記に競合サイトに対して優位性を築くこととなります。
この頃の社是は「早くでかくなる」だ。
会社が大きくなる事で書籍取次から仕入れる価格を引き下げられ、流通能力も高まります。
評判の高まりやアフィリエイトプログラムにより、アマゾンはますます成長していきます。
アマゾンが最も重要視するのが顧客第一主義(主に価格の安さで破格のサービス)であり、そこに繋がらない要素は徹底的に倹約&排除していきます。
創業当初からベゾスには、ワークライフバランスなんて考えはなく、子供が出来たことで退職するエピソードも紹介されています。
全ては顧客にこれまでに無い価値、サービス、体験をもたらすために滅私奉公で働くことを求めていきます。
ドット・コム・バブル崩壊
アマゾンの経営が全て順風満帆だったわけではありません。
2000年から2001年はドット・コム・バブルが崩壊した年で、IPO以来右肩上がりだったアマゾンの株価は107ドルをピークに反転し、21か月連続で下がり続けます。
多くのインターネット関連企業が合併したり倒産が続く中、アマゾンは何とか経営危機を乗り越えていきます。
大きく低迷した2年間で、EDLP(エブリデーロープライス)に注目し、有効な広告宣伝手法や、商品配送のコストの改善など組織体制を整え次の変化の時代に備えていきます。
1時期は経営を任せ、自らは新たなサービスを手掛けることに専念することも試みたがうまくいかず、トップダウンの経営スタイルに戻されます。
ベゾスが考える高い要求に満足な結果を出さない幹部は激しく叱責され、激しい性格の一面が見え始めるのはこの頃からです。
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなど、テクノロジー業界の優れた経営者には、ワンマンで激しい一面があり、その経営についていけず去ってい者も少なくありません。
ベゾスも同じような側面があり、それに加え躁的な推進力と大胆さも備えています。
ビジネスに関しては専門知識や現場での経験がなくてもベゾスの指摘はいつも正しく、多くの経営幹部が去っていった後もアマゾンは躍進し続けます。
小売企業からテクノロジー企業に成長
1990年代末ごろから、アマゾンはテクノロジー企業であって小売企業ではないとベゾスは主張しています。
これを打破したのが、ストレージやデータベース、処理能力といった基本的なコンピューターインフラストラクチャーを提供するクラウドサービス、アマゾンウェブサービス(AWS)です。
現在アマゾンの売上構成の大きく貢献しているアマゾンウェブサービス(AWS)のサービスが開始されたのは、2006年です。
パブリッククラウドサービスは多くありますが、その先駆けがAWS です。
2006年当時は、まだクラウドサービスの概念はなく、そんな状況下でサービスを開始したのです。
開始当初のサービス
今では175を超えるサービスが提供されている AWS の開始当初サービスは以下の2つだけでした。
- Amazon Simple Storage Service (S3)
- Amazon Simple Queue Service (SQS)
名前から分かるとおり、外部ストレージのサービスとキューイングのサービスです。
携帯電話がガラケーの時代に、こんな革新的なサービスを開始していました。
ただこのような概念を日本でも事業所として先駆けようとしていたのがいたんですね。
かつて日本にも江副浩正とういう「企業の天才」がいて現在アマゾンの収益源の柱となっているAWS(企業向けクラウド・コンピューティング)を、 30年以上も前に構想していました。
『起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』にはその事が詳しく書かれいて、出る杭は打たれる日本の文化が現在の世界における日本の低迷の遠因のような気がします。
今の当たり前は、昔の当たり前ではない
企業でも個人でも、データをクラウド上に保存することは、今や当たり前の時代。
例えば、スマホのデータをインターネット回線を通じてバックアップすることも、クラウド上のストレージを利用しています。
2006年頃のデータ管理は自社のデータは、自社のサーバにおいて厳重管理が当たり前で個人も自分のお気に入り写真は、自分の持っている媒体で保存していました。
オンラインショップとは全く違う事業に進出した背景についても本書で詳しく書かれています。
GAFAMの中でも安定的な経営を行うアマゾンの底力はAWSの成功とAWSが導いた価格戦略が大きいと言えます。
ベゾスはAWSの収益予想を尋ねられたとき、長期的には収益が上げられるようになるが「スティーブ・ジョブズの失敗」を繰り返したくないと回答したといいます。
iPhoneは驚くほど利益があがる価格で販売されています。
そのためにグーグルが進めるアンドロイド系スマホなど低価格市場を引き寄せてしまったことをベゾスは失敗だと考えます。
AWSでの成功をもってアマゾンはベゾスの望み通り、ついにテクノロジー企業になったと言えます。
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