巨人たちの本棚 / 偉大な経営者はこんな本を読んでいた / 久我 勝利
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回は10年ほど前に販売された本で日本の偉大な経営者が読んでいた本と併せてその経営者の略歴を紹介している本です。
昔買って積読していた本ですが改めて実業界の巨人たちの「読書ガイド」と「簡単な伝記集」は、知らないエピソードが多く書かれていて興味深く読みました。
実際に紹介されている経営者が読みすすめていた本は、時代による書物も多くありますが、現在出版されている書物についても、読みやすさなども紹介されていて、お得感があります。
以下は本書で紹介されている経営者です。
第1章:井深大
理系人間を精神世界に走らせた『ターニング・ポイント』
井深大の読書ガイド
第2章:土光敏夫
行革の鬼を運命づけた著者不詳の『スチーム・タービン』
土光敏夫の読書ガイド
第3章:松永安左エ門
トインビーの大著全訳に挑んだ電力の鬼
松永安左エ門の読書ガイド
第4章:豊田佐吉・喜一郎
“トヨタ帝国”の糧となった1冊の本
豊田佐吉・喜一郎の読書ガイド
第5章:渋沢栄一
実業界の巨人が愛してやまない『論語』
渋沢栄一の読書ガイド
第6章:安田善次郎
『太閤記』を地で行った銀行王の人生
安田善次郎の読書ガイド
第7章:大倉喜八郎
『心学先哲叢集』に凝縮された豪傑の教養の深さ
大倉喜八郎の読書ガイド
第8章:岩崎弥太郎
政商の枠で括れない大教養人が好んだ『日本外史』
岩崎弥太郎の読書ガイド
この本の「はじめに」に、次のように書かれている通り、紹介されている偉大な経営者に関する伝記的な出版は多くあっても、だれに学び、どんなアドバイスがあり、偉大な業績をのこされたかを知ることが出来ます。
「多くの伝記には『だれに学び(師事し)』『どんなアドバイスを受けたか』ということは比較的詳しく書かれているのですが、彼らが『どのような本を読んで』『どのような影響を受けてきたのか』、については意外に書かれていないのです。
なかには、日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一のように、愛読書が『論語』であることがあまねく知れわたっている場合もあります。
しかし、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎が頼山陽の『日本外史』を生涯愛読していた話はどうでしょう。
数ある弥太郎の伝記のなかには、下手をすれば、『日本外史』という本の存在にさえ触れていないものもあります。
本書 「はじめに」
「実業界の巨人」と呼ばれるような人々は、どのような本から影響を受けたのか?
そのことに興味を抱いた著者は、いろいろ探しても「そのものズバリ」の本がなかったため、「それなら自分でつくるしかない」と本書を執筆したそうです。
この本のおかげで当時の時代背景やその紹介されている偉人の人となりを知ることも出来ます。
一部本書で紹介されているエピソードを紹介します。
行革の鬼を運命づけた著者不詳の『スチーム・タービン』
土光敏夫に関しては、東芝の再建、経団連会長、臨時行政調査会長を歴任され、人間わざとは思えないほどの活躍されたことは知っていました。
土光敏夫の人生の進路を決めたのが、学生のときに神田の古本屋で見つけた『スチーム・タービン』という本ことはことは驚きです。
残念ながら、この本についての情報は今はないようですが、スチーム・タービンとは蒸気タービンで蒸気の力で動かす原動機のことです。
その技術書との出会いから、スチーム・タービンをつくってみたいという思いからスチーム・タービンの研究開発をやらせてくれるという石川島造船所に入社した経緯が書かれています。
また、土光敏夫の母親の教育に関わる信念のすごくその後の学校経営に関わるくだりも興味深く読みました。
実業界の巨人が愛してやまない『論語』
渋沢栄一に関して「論語と算盤」については有名ですが、幼いころ親に勧められる本以外に自ら手にして無類の読書家になった経緯は面白い一面です。
渋沢家の縁者、尾高惇忠に読書を習う。ひととおり漢文を読める様になると渋沢栄一は『通俗三国志』や『里見八犬伝』など娯楽読物を読みあさる様になり、ある時栄一はそれがいい読書の仕方かどうか、尾高に尋ねたところ意外にも賛成してくれます。
本書 抜粋
後に栄一は尾高の教えを以下の様に記しています。
読書に働きをつけるには読みやすいものから入るのが一番良い。
ドウセ四書・五教を丁寧に読んで腹に入れても、真に我物になって、働きの生ずるのは、だんだん年を取って世の中の事物に応ずる上にあるのだから、今の処なんでも面白いと思ったものを心をとめて読みさえすればいつか働きがつく
雨夜譚 渋沢栄一
尾高の教え方が実ったのか栄一は無類の読書家になります。
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