『知識創造企業』/ 野中 郁次郎・竹内 弘高
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回する『知識創造企業』は、日本の経営学者から世界に向けて発信され、日本の成功モデルが経営理論として世界に知られたの金字塔的な一冊です。
日本的経営に普遍的な原理
この本は名著としてよく紹介されていたので知っていましたが、タイトルから尻込みして手に取ることはありませんでした。
読むきっかけはとして「ほぼ日の学校」の野中 郁次郎先生の授業です。
授業はインタビュー形式で図解説明で主催者の糸井重里さんがインタビュアでした。
この本が出版されて当時日本の製造メーカーを中心とグローバル企業が世界を席巻していました。
著者たちは長年にわたってグローバルに企業経営を観察してきた結果、日本的経営に普遍的な原理があることを発見しました。
その成功の要因を理論的に説明したの「組織的知識創造」は、西洋における「知識」のとらえかたからは出てこない仕組みであり、評価されました。
暗黙知が鍵
「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」との違い
欧米と日本において雇用条件の大きな違いが組織と個人の関わりにも大きな違いがある様に思います。
欧米企業はジョブ型雇用が多く、明確なジョブディスクリプションのもとに雇用されます。
業務内容や責任の範囲、必要なスキル以外にも勤務時間や勤務場所などを明確に定めた上で雇用契約を結びます。
そのため、別部署への異動や転勤などは無く、昇格・降格も基本的にはありません。
現在までの日本企業の多くはメンバーシップ型雇用です。
「仕事」に対して雇用されるのではなく、文字通り会社のメンバーになる雇用制度です。
多くの日本企業で導入されている終身雇用や年功序列、企業別組合といったシステムです。
この雇用形態にも大きく影響されていると思いますが、欧米において、組織的知識創造という発想にいたりません。
なぜなら彼らは、組織を「情報処理の機械」として取れ得ています。
こうした見方は、ありとあらゆる西洋的経営の伝統に深く根ざしています。
欧米において知識は明白なものでなければならず、形式的・体系的なものでなければなりません。
そうした知識を「形式知」と呼びます。
一方、日本企業はそれとはまったく異なった知識観を持っています。
言葉や数字で表される知識はしょせん氷山の一角であり、深層部分には表現しがたい暗黙的なものがあると考えています。
そのような知識を「暗黙知」と呼びます。
日本企業の知識創造の特徴は、暗黙知から形式知への変換にあります。
日本企業は、とくに製品開発の場面において、この暗黙知から形式知への変換を得意としています。
暗黙知から形式知への変換には、次の3つの特徴があります。
- 表現しがたいものを表現するため、メタファーやアナロジーが多用される。
- 個人の知が多くの人に共有され、知識が広まっている状態である。
- 新しい知識はつねに曖昧さと冗長性のなかで生まれてくる。
アナロジーとは、ほとんどの場合同じカテゴリーの中から部分的に似ている2つのものを比較することを指します。アナロジーとメタファーの違いは、メタファーは同じカテゴリーに属さないものを参照することが多い点です。
知識創造企業 事例 ホンダ・シティ
知的創造の初期段階の特徴として、メタファーやアナロジーが多用されていることがあげられます。
ホンダは、「クルマ進化論」、「マン・マキシマム、マシン・ミニマム」、「トールボーイ」といったコンセプトからホンダ・シティを生み出しました。
当時背の低いセダン車が主流でしたが、今や日本では普通になった「高くて短い」新世代車の先駆けとなりました。
メタファーを用いることで、既知のものを新しく組みあわせ、それまでは表現しにくかったものを創造しました。
一方のアナロジーはメタファーと比べるとやや論理的な手法です。
2つの事物のどこが似ていて違うのかをはっきりさせるという意味で、アナロジーは純粋な想像と論理的な思考を媒介する。
ホンダ・シティの場合、シビックとの相違を探るなかから、ブレイクスルーとなるコンセプトが生まれました。
これもアナロジーの活用法の1つです。
コメント
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[…] 暗黙知と形式知については、このブログの紹介本 『知識創造企業』で詳しく紹介していますが「暗黙知」という日本企業独特の知識観を持っています。 […]