紹介本 『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』

目次

サクッとわかる ビジネス教養 地政学/奥山 真司/ 新星出版社

この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。

今回は世界地図を見ながら、世界情勢を考える地政学分かりやすく解説された本の紹介です。

2020年発売で昨年のベストセラーであり、ロシアのウクライナ進行に合わせて中田敦彦さんのユーチューブ大学でも取り上げらています。

地政学の知識や考え方を少し理解するだけで、混迷する世界情勢のなかで、主要各国の動きや振る舞い本音などに自分なりの解釈が出来るようになります。

またこの本はいたるところにイラストがあり、そのイラストに解説がついています。

イラスト図解をビジュアル的に捉えることで見ながら、文字を読むだけで、世界情勢の根本が理解できます。

読書イメージ

国際政治を現実的に捉える6つの概念

著者の奥山さんは自身が提唱する「6つの概念」をベースに、地政学的な見地から世界の今を分かりやすく説明しています。

たとえば、リアリズム(現実主義)という概念があります。

地政学的には、国際舞台で国の振る舞いを決めるのは、イデオロギーやカリスマ指導者、世論などではなく、リアルな軍事力や経済力という考え方です。

言い換えれば、自尊心や恐怖心、経済的メリットなど、人間の本音の部分が、国を動かす要因というような考え方です。

国際政治を「劇」とすれば、地政学は「舞台装置」とも表現していています。

また、国際政治を冷酷に見る視点やアプローチとして、ここでは6つの基本的な概念について紹介しています。

「コントロール」

大国は自国を優位な状況に置きながら、相手国をコントロールすることを常に考えています。

コントロールにも色々な方法があり、その時の相手と自国の状況にあわせてコントロール法を使い訳けます。

「バランス・オブ・パワー」

p.19より引用

勢力を均衡させようとする国際関係のメカニズムです。

上記イラスト図面が分かりやすく、最大勢力は、時の3位の国と協力することにより第2位勢力と対立し、絶対的なパワーバランスを取ります。

その他の例として大英帝国時代のイギリスは、世界中の国と戦ったわけではありません。

ヨーロッパで強大な国が登場したときのみ、周辺国と協力しながら戦って勝利し、世界の覇権を守ってきたという歴史がある。

「チョーク・ポイント」

三つ目は、「チョーク・ポイント」を押さえるということです。

国際間での大規模な物流(たとえば石油など)は、すべて海路で行われています。

多くの船が通らざるを得ない海上の関所である運河や海峡を押さえることで、他国より優位に立つ戦略です。

アメリカは世界で重要なチョーク・ポイント10か所に軍隊を駐留させています。

「ランドパワー」と「シーパワー」

四つ目は、「ランドパワー」と「シーパワー」です。

「ランドパワー」とはユーラシア大陸にある大国を意味します。ロシア、中国、ドイツ、フランスなど陸上戦力に強みを持つ国のことだ。

一方の「シーパワー」は、イギリス、日本といった海洋国家に加え、大きな島国と考えられるアメリカのことを指します。

歴史的に大きな国際紛争は、常にこのランドパワーとシーパワーのせめぎ合いのなかで起きているという考え方です。

「ハートランド」と「リムランド」

五つ目は、「ハートランド」と「リムランド」という考え方です。

この本では、ユーラシア大陸の中心エリアを「ハートランド」と呼んでいます。

そのユーラシア大陸のハートランドの周縁(リム)にある国をリムランドと呼んでいます。

リムランドは気候もいい地域が多く、海上輸送もでき、昔から繁栄した地域が多くあります。

厳しい環境の「ハートランド」の国は、「リムランド」の国々へ侵攻することを常とする歴史があります。

朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争は、まさに両勢力が衝突して起こった戦争と解説しています。

拠点の重要性

最後は「拠点」の重要性について述べています。

たとえば沖縄の米軍基地は、距離的にも主に中国や北朝鮮に影響力を持つための拠点です。

ほかにも米軍は、インド洋のディエゴ・ガルシア島やドイツのラムシュタインなどにも大規模な拠点(基地)を展開しています。

この考え方で言うと北方領土はロシアにとってはアメリカと対峙する意味において重要な拠点です。

なぜ北方領土がなぜ返還されないのかを著者は端的に、ロシアにとって重要拠点で返還されても日本にはメリットが少ないからという見解です。

読書イメージ

日本の地政学

日本の歴史を振り返ると、江戸時代までの海外との衝突は、たった3回のみです。

古くは飛鳥時代の「白村江の戦い」、鎌倉時代の「元寇」、そして安土・桃山時代の豊臣秀吉による「朝鮮出兵」の回です。

衝突が少なかったのは、日本が自給可能な面積を持つ島国で、海外から攻めづらかったからという理由です。

そして、ヨーロッパから遠っかたという地理的環境も良かったという事です。

その為戦争による復興のような歴史もなく、明治時代に産業を発達させる時間が稼げ、富国強兵を進めることが出来ました。

中国のように植民地にならずに、独立を維持できたのもこのためだ。

島国は攻めにくい地の利はありますが、フィリピンやイギリスも支配された歴史があることを踏まえても日本は植民地にされなかった少ない国のひとつです。

尖閣諸島における中国との対立は、単純な領土争いではありません。

経済発展を果たし、世界の大国・覇権国になろうとしている中国は、海洋進出を目指すうえで、まずは近海の支配権を獲得したいと考えています。

そのうえ中国は、台湾を自国の領土であると主張し、独立した国と主張する台湾と対立しています。

台湾を攻撃する際の3方向攻撃においても尖閣諸島領域を通ることを想定しています。

日本海や東シナ海を制覇したいランドパワーの中国と、それを阻止したいアメリカ・日本のシーパワー勢力の、覇権争いの一部が尖閣問題と言えます。

沖縄基地については

・沖縄基地は1万km内に中国やロシア中東を収めICBM(大陸間弾道ミサイル)で牽制できる
・マラッカ海峡をはじめとするシーレーンの保護

といった利点があり非常に重要な拠点であると説明され、アメリカは手放すことないと解説します。

ロシアの戦略

今回のロシアによるウクライナ侵攻も地政学から読み解くことが出来ます。

プーチン大統領の思い描く対外戦略の原則は、「世界一の領土維持・拡充」「国際社会での影響力の拡大」。

内容的には、過去の統治者と変わりませんが、過去のロシアの“失敗”から、対外戦略を実現する手段に地政学を活用しています。(中略)

本書 p94

世界でもっとも広い面積のロシアは、国境を接する国の数も世界一。経済的にも国境を完璧に防衛するのは難しいため、隣接する国を協力的な状態にして、対抗力とのバッファーゾーン(緩衝地帯)にしています。

p79

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