紹介本 『生き方』―人間として一番大切なこと

『生き方』  / 稲盛 和夫

この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。

今回は8月30日に京セラが創業者で名誉会長の稲盛和夫氏が死去したことを発表されたこと受けて希代の名経営者・稲盛和夫氏の哲学が書かれた「生き方」について紹介します。

稲盛和夫氏の功績

稲盛氏の経営者としての功績は大きく3つ。京セラの創業、第二電電の設立、そしてJALの再建だ。

1932年に鹿児島で生まれた稲盛氏は、地元の大学を卒業して京都の碍子(がいし)製造会社に就職した。

大学で合成樹脂などを扱う応用化学を専門にしていた稲盛氏は、就職先では技術者としてファインセラミックスの研究をしていた。

しかし、会社は赤字で立ち行かず、稲盛氏の最新セラミック開発の技術も理解されなかった。

数人の仲間とともに京都セラミックス(現京セラ)を創業したのは、就職してから3年後のこと。

知人のつてで宮木電機という会社の支援を受け、ファインセラミックスの専門メーカーとしてスタートした。

ブラウン管などに使われていた絶縁部品に始まり、電子部品や産業用部品などのメーカーとして成長を遂げていった。

今ではファインセラミックスに加えて、通信機器や自動車関連部品など幅広く製品を手がけており、売上高約1兆8000億円、営業利益約1500億円の巨大企業に発展を遂げている。

NEWS PICS 参照

ジャック・マーも惚れた

人気は、海外にも広がっている。稲盛氏の経営哲学を学ぶ勉強会「盛和塾」は2019年末に終了したが、閉塾当時、海外の約1万4000人が学んでいた。

海外の中でもダントツで人気だったのが中国だ。当時の海外塾生の半分の約7000人が中国人だった。

あまりの人気に、日本など他の地域が閉塾した後も、中国国内だけは特例で「盛和塾」の活動が継続されている。

代表的な著書の『生き方』は、日本国内での販売部数が約140万部に対して、中国では約500万部売り上げている。

実際に中国の検索大手「百度(バイドゥ)」の検索ランキングでも30日夕方時点で、稲森氏の死去を伝える記事は1位にランクインしていた。

パナソニック創業者の松下幸之助氏やソニー創業者の盛田昭夫氏らと合わせて「経営四聖」と評したり、「経営の神」と表現する記事もあった。

中国での人気を押し上げたのは、中国国内でも著名な経営者が稲盛氏のファンだったことも大きい。

代表的なのは、中国の通信設備大手「ファーウェイ」の創業者の任正非CEOやアリババ創業者のジャック・マー氏。

NEWS PICS 参照

「生き方」は刊行10年目にして100万部を突破した、不朽のロング・ミリオンセラーです。

二つの世界的大企業・京セラとKDDIを創業し、JALを再生に導いた「経営のカリスマ」が、その成功の礎となった「人生哲学」をあますところなく語りつくした一冊です。

目次

プロローグ(混迷の時代だからこそ「生き方」を問い直す;魂を磨いていくことが、この世を生きる意味 ほか)
第1章 思いを実現させる(求めたものだけが手に入るという人生の法則;寝ても覚めても強烈に思いつづけることが大切 ほか)
第2章 原理原則から考える(人生も経営も原理原則はシンプルがいい;迷ったときの道しるべとなる「生きた哲学」 ほか)
第3章 心を磨き、高める(日本人はなぜその「美しい心」を失ってしまったか;リーダーには才よりも徳が求められる ほか)
第4章 利他の心で生きる(托鉢の行をして出会った人の心のあたたかさ;心の持ち方ひとつで地獄は極楽にもなる ほか)
第5章 宇宙の流れと調和する(人生をつかさどる見えざる大きな二つの力;因果応報の法則を知れば運命も変えられる ほか)

求めたものだけが手に入るという人生の法則

世の中は思うようにならないと私たちは人生で起こってくるさまざまな出来事に対して、思う事があります。

マーフィーの法則にもある通り「思うとおりにならないのが人生だ」と考えているから、そのとおりの結果を呼び寄せているとも考えられ、「思うようにならない人生」も、実はその人が思ったとおりになっているといえます。

不可能を可能に変えるには、まず「狂」がつくほど強く思い、実現を信じて前向きに努力を重ねていくこと必要と本書では記し、その事が人生においても、また経営においても目標を達成させる唯一の方法です。。

京セラが、IBMから初めて大量の部品製造の発注を受けた際、その仕様は、寸法精度を測定する機器すら当社にはないほどの厳格さで、開発は困難を極めました。

その時の不可能を可能にした描写は本書に譲りますが凄まじさが伝わってきます。

稲盛氏は創業当時から、大手が断った高度な技術水準の仕事をあえて引き受けることで仕事を取ってきています。

引き受けた時点では不可能だと思えることも、最後は神が手を差し伸べてくれるまで必死の思いでやり続ける京セラの仕事ぶりが今の京セラの原点でもあります。

結果完成すれば、安請け合いという嘘は実績という真実を生んだいきます。

迷ったときの道しるべ「生きた哲学」

私たちの悩みの多くは、物事を複雑に考えすぎてしまう事です。

しかし、物事の本質は実は単純なもので、いっけん複雑に見えても、抽象化された原理原則は、単純なものの組み合わせです。

技術者出身の稲盛氏は、創業当時、会社経営の知識も経験もなかったが、悩み、行き着いた答えが「原理原則」でありました。

人間として正しいか正しくないか、よいことか悪いことか、やっていいことかいけないことか。そういう人間を律する道徳や倫理をそのまま経営の指針や判断基準にしていきます。

例えば、バブル景気の際、京セラには多額の現預金があったため、それを不動産投資に回さないかという提案が多くあったようです。

その時、稲盛氏は「土地を右から左へ動かすだけで多大な利益が発生するなんて、そんなうまい話があるはずがない。あるとすれば、それはあぶく銭であり、浮利にすぎない」として、すべて断っています。

働く喜びは、この世に生きる最上の喜び

稲盛氏は、自分の有している能力や果たしている役割は、たまたま天から与えられたもので、借り物でしかないと考えています。

才能や手柄を私有、独占することなく、それを人様や社会のために使うべきであるという考え方です。

戦後の日本は経済成長至上主義を背景に、人格というあいまいなものより、才覚という、成果に直結しやすい要素を重視し、自分たちのリーダーを選ぶ傾向が強くなりました。

リーダーの器たりえない人物がトップに据えられたことによって、近年多発した組織の不祥事の要因のひとつにも思えます。

このブログで紹介した『起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』では、第二電電創業メンバーとして参画を希望する江副氏が稲盛氏の意向も受け参画できない事が描かれています。

経営に関する哲学が相いれないのではなかったと感じれました。

また、稲盛氏は物事を成就させ、人生を充実させていくために必要不可欠なこととして「勤勉」を挙げています。

FIREという「経済的な自立と早期リタイア」が話題になっていますが、人生において仕事が面白くなく早期リタイアであるのであれば、精神的な充実を獲得できないのではないかとも思います。

懸命に働き、まじめに一生懸命仕事に打ち込むことによって、精神的な豊かさや人格的な深みを獲得することが本書では書かれていています。

一生懸命打ち込んだことが報われる会社や経営者が増えることを願います。

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