『ニュータイプの時代』 / ダイヤモンド社 / 山口 周
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回する『ニュータイプの時代』は、自らのキャリアの築き方や方向性について悩む人にとって、役立つ内容です。
これから活躍する人材要件「ニュータイプ」とは?
従順で論理的かつ、勤勉で責任感が強い人材こそが優秀だとされてきました。
しかし、このような20世紀的な優秀さは、今後は「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくと本書では予測しています。
一方、「オールドタイプ」の対極として、自由で直感的、わがままで好奇心の強い人材、すなわち「ニュータイプ」が、今後は大きな価値を生み出し、豊かな人生を送ることになると伝えています。
本書では、旧態依然とした思考・行動様式を「オールドタイプ」として、一方、それと対置される新しい思考・行動様式を「ニュータイプ」として整理し提示しています。
正解を出す力はもはや価値がない
「オールドタイプ」の思考・行動様式が「社会への価値の創出」という観点から既に有効でなくなりつつあります。
オールドタイプが発揮してきた思考・行動様式は資本主義というシステムが生み出す問題拡大生産されていて、「問題解決」の能力が極めて高く評価されていました。
それは市場に多くの「不満、不便、不安」という問題を解消したいというニーズが存在していたからです。
物質的なニーズや不満があらかた解消された21世紀初頭の現在「問題解決能力が高い」だけでは価値を生まなくなったという事です。
ビジネスは常に「問題の発見」と「問題の解決」が組み合わさって成立するので、「問題」そのものが希少なっているので、「問題発見能力」必要となって来るという事です。
クソ仕事の蔓延
「モノの過剰化」「問題の希少化」というメガトレンドの掛け合わせは、「意味のない仕事の蔓延」という事態を引き起こしています。
イギリスの経済学者ケインズは、1930年に著した論文で、「100年後には、週に15時間働けば十分に生きていける社会がやってくる」と予言しています。
しかしこの予言は実現せず、私たちの労働時間は100年前とほとんど変わっていいません。
労働の需要が減少しているにもかかわらず、労働の供給量は変わらない。
そのため、多くの人が意義や意味のない仕事、「虚業的労働」に携わらざるを得ないのだ。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会人類学教授、デヴィッド・グレーバーはこれを「クソ仕事(Bullshit Jobs)」と呼んでいる。
このブログで『ブルシット・ジョブの謎』で詳しくクソ仕事(Bullshit Jobs)について紹介しています。
飽和するモノと枯渇する意味
現代の日本で生を営んでいるとあらゆるモノを入れることができた時代に生きています。
しかし一方で「恵まれた状況」にありながら、多くの人は何とも言えない欠落感を抱えながら生きています。
物質的な欠乏という課題がほぼ解消されてしまった世界において、人はどのようにして「生きる意味」を見出していけばいいのか、、、
その問題を最初に指摘したのは、ドイツの哲学者ニーチェで、現代人が「意味の喪失」という問題に陥り、ニヒリズムに捉えられると予言しています。
ニヒリズムについてニーチェは「何のために」という問いへ答えられない。「意味が失われた状態」こそがニヒリズムの本質と唱えています。
ニュータイプの競争戦略
能力は「意味」によって大きく変わる
私たちの労働の多くが、実質的な価値を生み出さない「クソ仕事」になっています。
この事は様々な研究結果からも示唆されていて、働く人の8割超が、自分の仕事に意味ややりがいを見出せていないそうです。
つまり、働く事へのモチベーションは経営資源として希少化しているという事です。
仕事に意味を与え、働く人たちからモチベーションを引き出すのがニュータイプです。
人間が発揮する能力は、与えられた意味によって大きく変わります。
事例として多くの業界のことは紹介されていましたが印象的だったのは、著者が「何のために存在する会社なのか」という対して明確な「意味」を与える例でLCC(格安航空会社)ピーチの例を挙げていました。
「ピーチは何のために存在する会社なのですか」という著者の問いに創業社長だった井上慎一社長は、「それは戦争をなくすためですよ」と答えています。
「過去には日本とアジアの国々のあいだで不幸な出来事がありましたね。ああいうことは二度と起こさないために、友達がいろんな国にいる状態にしたいんです。そのためには若いうちからどんどん外国に出て、いろんな文化に触れ、たくさんの人と知り合ってほしい。ではどうするか?財布の軽い若い人でも乗れて、いろんな国にいける、そういう航空会社が必要なんです。」
本書 抜粋
極めて分かりやすい「意味」がある事で「コストを下げよう」「路線の数を増やそう」という経営上の課題にシラケることなく、創意工夫が生まれるのです。
市場で「意味のポジション」を取る
現在は、グローバルニッチプレイヤーによる「市場の多様化」と、GAFAに代表されるグローバルメガプレイヤーによる「市場の寡占化」という真逆にも見える2つのトレンドが同時に進行するという二極化が起こっています。
どちらのトレンドが起きるかは、市場特性によって異なりますが、その市場が「役に立つ」という便益を提供しているのか、あるいは「意味がある」という便益を提供しているのかによります。
いわゆる「勝者総取り」が生じるのは、「役に立つけれども意味がない」という市場です。
わかりやすい例として、
コンビニの商品を「役に立つもの」と「意味があるもの」で分けて紹介していました。
「ハサミ」や「ホッチキス」って、「役に立つもの」で、一方、「タバコ」は「意味があるもの」として紹介しています。
「俺は、ガツンとくるタバコが好き」だとか、「僕は、当時、憧れの先輩が吸ってたこのタバコが好き」といったストーリなど意味があり200種類以上置かれています。
次に、「棚に並んでいる種類の数」では「ハサミ」や「ホッチキス」は、それぞれ一種類しか並んでいません。
これは、すなわち、「『役に立つもの』は一つでいい」という結論です。
2番目に切れ味の鋭いハサミや、2番目にとめられる「ホッチキス」なんて要らないんですね。
車の例では『役に立つもの』はトヨタ車や日産車で「意味のあるもの」はランボルギーニやフェラーリなどとしています。
こうした二極化が起きる世界では、企業は、「役に立つ」という市場において熾烈な戦いに身を投じるか、「意味がある」という市場で独自のポジションを築くかという選択を迫られることとなります。
「役に立つ」より「意味がある」ほうが高く売れる
現在の市場では、「役に立つ」ことよりも「意味がある」ことのほうに、経済的な価値が認められています。
「意味がある」市場においては、「意味」の持つプレミアム(価値の上乗せ分)次第で、極めて高い水準での価格設定が可能になります。
現代は、モノが飽和し、モノの価値が中長期的な低落傾向にあるからこそ、これからは「役に立つ」ものを生み出せる組織や個人ではなく、「意味」あるいは「ストーリー」を生み出せるニュータイプに、高い報酬が支払われる時代になるという見解です。
コメント
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[…] ちなみに山口周さんの『ニュータイプの時代』は以前このブログでも紹介しましたが、とても面白い本です。 […]