イシューからはじめよ / 安宅 和人
この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。
今回はこのブログで紹介した「シン・ニホン」安宅 和人さんが2010年に出版された「イシューからはじめよ」の紹介です。
安宅さんは、本書の冒頭「圧倒的に生産性の高い人」の共通点と「本当に優れた知的生産には共通の手法」があることに気づき、ブログに書いたところ多くの人から反響があり、この本を出版するきっかけになったことを述べています。
ビジネスに関するノウハウ本が多く出版され、正しく使えば強い力を持つツールも目的を知らずにツールだけを使う事の危険性も伝えています。
知的生産の「シンプルな本質」
日本の労働生産性は先進国の中で最低であり、その状態が長く続いています。
なぜ日本の労働生産性は高まらないのでしょうか?
生産性の公式について安宅さんは以下のように述べています。
生産性=『アウトプット/インプット』=「成果/投下した労力・時間」となります。
国内における業種別の違い
ちなみに日本国内において労働生産性が高い業種は、不動産業、金融・保険業、電気・ガス・水道業、情報通信業などです。これらの業界では、生産に必要なリソースが効率よく使われていることが、労働生産性に結びついていると考えられます。
一方で、労働生産性が低い業種は、飲食サービス業、医療・福祉業、宿泊業など、サービスを中心とした業種です。サービス業は人手不足傾向にあり、また在庫が持てないため、計画的に生産性を高めることが難しい業種です。
本書では生産性を上げたいのであれば、同じアウトプットを生み出すための労力・時間を削り込む又は、同じ労力・時間でより多くのアウトプットを生み出すことの必要性を伝えています。
生産性の高い「意味のある仕事」を「バリューのある仕事」と言い、「バリューの本質」は、横軸を「イシュー度」で、縦軸を「解の質」と述べています。
イシューとは
この本のメインテーマである「イシュー(ISSUE)」について、一般には問題とか課題と説明されますが、本書では以下のように定義しています。
A)2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
B)根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
本書 知的生産の「シンプルな本質」抜粋
AとB、両方を満たす問題を「イシュー」と定義しています。
踏み込んではならない「犬の道」
バリューのある仕事とはマトリクスの右上の領域の仕事ですが、多くの人は、一心不乱に大量の仕事をして右上に行こうとします。
この「労働量によって上にいき、左回りで右上に到達しよう」というアプローチを安宅さんは「犬の道」と呼んでいます。
世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。
世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。
本書 知的生産の「シンプルな本質」抜粋
何も考えずに、がむしゃらに働き続けても、「イシュー度」「解の質」という双方の軸の観点から「バリューのある仕事」めで到達することはないとい言うのが安宅さんの考え方です。
「嚙みしめる」ことを大切にする
論理だけによりかかり、短絡的・表層的な思考をする人が増えていることに危惧し、「ロジカルシンキング」「フレームワーク思考」などの問題解決ツールだけでは解決しない問題があるという事です。
問題に立ち向かう際には、それぞれの情報について、複合的な意味合いを考えぬくこと、つかんだ情報を「自分なりに感じる」ことの重要性を説いています。
「一次情報を死守」し、どこまで深みのある情報をつかむことが出来るかがその人のベースとなっている力です。
脳は脳自身が「意味がある」と思う事しか認知できなく、「意味がある」かどうかは、「そのようなことが意味をもつ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まると言います。
イシュードリブン
第1章では、「解くべき問い=イシュー」を見極める方法を解説しています。
イシューを見極める
人は問題は解くもと考えがちですが、その前に本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことの方が重要です。
イシューの見極めについては、「こんな感じのことを決めないとね」といった「テーマの整理」程度で止めてしまう人が多いが、これではまったく不足しています。
「これは何に答えを出すためのものか」チーム内で「これは何のためにやるか」という意思統一をし、立ち返る場所を作っておくことが重要です。
仕事や研究で経験が浅い段階では、このイシューの見極めを一人で行わず、イシューを「見立てる力」を持った何人かに相談するのが近道です。
自分にとっての「知恵袋的な人」をもてるかどうかが突出した人とそうでない人の分かれ道となります。
仮説を立てる
「スタンスをとる」ことが重要
イシューの見極めには、強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心で、「やってみないとわからないよね」といったことが一番無駄が多く生産性の低いアプローチです。
一つ目は、仮説が単なる設問をイシューにするということだ。例えば「○○の市場規模はどうか?」という単なる設問ではなく、「○○の市場規模は縮小に入りつつあるのではないか?」と仮説を立てることで、答えを出し得るイシューとなる。
二つ目は、仮説を立てて、はじめて本当に必要な情報や必要な分析がわかるということだ。
三つ目は、答えを出すべきイシューを仮説を含めて明確にすることで、分析結果の解釈が明確になり、無駄な作業が大きく減ることだ。
何はともあれ言葉にする
イシューが見え、それに対する仮説を立てれたら、それを言葉に落とし込む訓練をします。
イシューと仮説は電子ファイルに言葉として表現することを徹底します。
人間は言葉にしないかぎり概念をまとまることができないと言う事です。
言葉で表現するときのポイント
言葉はシンプルであるほどよく、「主語」と「動詞」を含む文章で表現します。
イシューの言語化に優れているもうひとつの方法は「where」「what」「how」のいずれかの表現をとります。
「why」という表現には、仮説がなく、何について白黒をはっきりさせようとしているのかが明確でない為おすすめしません。
よいイシューの3条件
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
上記の3条件を満たす「よいイシュー」を他者にも伝わるように言語化することで、認識のズレを防ぎ、チーム一丸となって問題解決に取り組むことができるのです。
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