介護 強まる利用者負担アップの議論

このブログ「介護役立つ情報」では、介護保険制度の改定情報等も紹介しています。

今回は2021年の介護保険制度改正時に先送りされた利用者負担アップについて2024年に向けた議論等を紹介します。

定率負担が導入された経緯

現在介護保険サービスは利用者の所得に応じて1割~3割の利用者負担率が設けれらています。

2024年の利用者負担アップの議論の前にそもそもの負担割合が始まるまでの経緯を紹介します。

介護保険制度創設時の判断

介護保険制度はそれまでの措置制度からまったく新しい制度として2000年にスタートしました。

一般的に社会保障制度の負担を考える場合には以下の2種類に大別されます。

  • 「応能負担」所得など能力に応じて負担を求める。
  • 「応益負担」得られる利益に着目する。

介護保険制度の創設に際しては、所得とは無関係に1割の定率負担を導入したため、応益負担が選ばれたことになります。

応益負担が採用された理由

  • 介護保険制度の創設理念では「高齢者の自己選択」を重視し「選択したサービスについて応益負担は当然」と判断されました。
  • 全く新たなサービスだったので、創設当初、応能負担を採用すると、被保険者の理解を得られないという判断も働いたとされています。

1割負担になった理由

制度創設時の叩き台の1996年12月の老人保健福祉審議会(厚相の諮問機関)最終報告で「受益に応じた公平な負担」として1割負担をベースとしつつも、2割負担、8%という案を併記していました。

当時は老人医療費無料化の軌道修正を図っている最中であり、高齢者に負担を強いることが今ほど一般的とは言えない状況でした。

全く新しい制度を作る中、ゼロに最も近い整数として1割負担になった経緯があります。

ケアイメージ

高齢者が支払う保険料の負担ルール

65歳以上の人が支払う保険料は、市町村が3年に1回の頻度で変更しており、保険料は市町村ごとに異なります。

その際、保険料の徴収については、応能負担が採用されており、所得が高いほど負担額が大きくなる仕組みになっています。

具体的には、国の定める標準的な考え方では表1の通りに所得に応じて9段階に分かれており、基準額に対して0.3~1.7を乗じて決まります。

実際の保険料水準は市町村の判断で決まります。

つまり、表1は国の標準であり、所得区分などは市町村が独自に設定できます。

例えば、弊社が立地する東京都千代田区の場合は15段階、隣の新宿区は16段階となっており、段階数や段階を区分けする所得基準、基準額に乗じる割合なども市町村の判断で決められます。

このように保険料という「入口」で応能負担が採用されているため、サービス利用の「出口」では一律1割の応益負担が採用されたわけですが、年々増え続ける介護保険費用により、自己負担が引き上げられてきました。

利用者負担アップの議論

2021年の介護保険制度改正時にも利用者負担アップに関しては議論されましたが、コロナ禍における生活苦もあり最終的には見送られて経緯があります。

2024年の介護保険制度改正に関する昨年の財務省の審議会でも「後期高齢者医療における患者負担の見直しを踏まえ、2024年度から介護保険制度における利用者負担を原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を検討する必要がある」という趣旨の指摘がされました。

そのようななか、今年10月から、介護保険制度の隣接領域といえる後期高齢者医療制度において、従来の患者負担1割(一般所得者)、3割(現役並み所得者)に加え、新たに2割(一定以上所得者)の負担区分が設けられます。

以下は今年10月からの後期高齢者医療制度の患者負担と介護保険制度の利用者負担の比較です。

jointo 参照

前述の財務省の審議会の指摘は、おそらく「(せめて)介護保険制度での2割負担の下限の所得水準は、後期高齢者医療制度の水準まで拡大すべき」ということを意味していると読み取れます。

自己負担の現状

介護保険財政の逼迫に伴って2015年8月から2割負担、2018年8月から3割負担が導入されました。

その際、所得基準は表2の通りに設定されており、2019年3月のデータとして、受給者に占める割合は2割負担の対象者で4.9% 3割負担対象者で3.7%とされています。

2015年度の介護保険制度改正で2割負担が導入される際の想定では、その対象となる高齢者は約20%と予測されていたもののが、実際には合計で9%弱にとどまっているという実態もあります。

医療と介護の違い

審議会の議論として医療と比較した負担の議論は必ず起こると思われます。

ただし介護サービスは日常的に利用されるケースが多く、医療よりも暮らしに密着したものであるので、高齢者の生活への負担は大きく医療費用と比較することは適切ではないと思います。

例えば、私たちが医療機関に足を運ぶ際、何か不具合を感じている時です。

そこで医師から診察を受け、何かしら治療や手術、処方を受ければ、病気は治ります。

慢性疾患の患者や在宅療養を受ける高齢者などの場合、完全に治癒するのは難しい面がありますが、それでも医療サービスを毎日あるいは毎週、使い続けなければならないことは稀です。

7月に控えている参議院議員選挙までは突っ込んだ議論は行われず、選挙後に急ピッチでの議論となるものと考えられます。

上記も踏まえて負担割合の議論がすすむことが望まれます。

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