このブログ「介護役立つ情報」では、介護に関わる仕事情報や介護人材不足の課題解決の情報を紹介しています。
今回は大手介護事業者のテクノロジーを活用した介護の質を向上させる取り組みを紹介します。
AIで介護の質高める ベネッセスタイルケア
ベネッセホールディングス(HD)傘下で介護事業を手がけるベネッセスタイルケア(東京都新宿区)は3月、認知症ケアなどの高い専門性を持つ職員のノウハウを組み込んだ人工知能(AI)システムを開発し、介護施設に試験導入しました。
AIが入居者の日々の記録データから「認知症の行動・心理症状(BPSD)の要因分析」や「いつもと違う予兆検知」を行い、経験の浅い職員でも、高い専門性を持つ職員に近い判断ができるよう支援します。
開発グループの詳細はベネッセのサイト「マジ神とテクノロジーで介護の質を向上」で詳しく紹介されています。
熟練職員の「暗黙知」共有
暗黙知と形式知については、このブログの紹介本 『知識創造企業』で詳しく紹介していますが「暗黙知」という日本企業独特の知識観を持っています。
言葉や数字で表される知識はしょせん氷山の一角であり、深層部分には表現しがたい暗黙的なものがあるという考え方です。
日本企業の知識創造の特徴は、暗黙知から形式知への変換にあります。
日本企業は、とくに製品開発やサービス提供の場面において、この暗黙知から形式知への変換を得意としています。
暗黙知から形式知への変換には、次の3つの特徴があります。
- 表現しがたいものを表現するため、メタファーやアナロジーが多用される。
- 個人の知が多くの人に共有され、知識が広まっている状態である。
- 新しい知識はつねに曖昧さと冗長性のなかで生まれてくる。
アナロジーとは、ほとんどの場合同じカテゴリーの中から部分的に似ている2つのものを比較することを指します。
アナロジーとメタファーの違いは、メタファーは同じカテゴリーに属さないものを参照することが多い点です。紹介本 『知識創造企業』
ベネッセスタイルケアが施設に導入したAIシステム「マジ神AI」は、認知症ケア、安全管理、介護技術の3分野で高い専門性を持つ職員「マジ神」がこれまでの知識・経験を基に正解データを付与(アノテーション)して開発しています。
マジ神の暗黙知を教師データとしてAIに組み込んでいっています。
マジ神でない職員でも、マジ神に近い判断ができるよう支援することがシステム開発の目的でもあります。
職員に最適なケアを勧め、入居者の生活の質(QOL)向上と職員の育成につなげていく取り組みです。。
介護現場では、優秀な職員の視点や判断など暗黙知が多くその知識を形式知へ変換していく取り組みです。
介護職員誰でも「匠」に DXで技能見える化 SOMPOホールディングス
2022年5月26日の日経新聞の記事によると、SOMPOホールディングス(HD)がデータを駆使して、人手不足が深刻な介護サービスを変えようとしています。
米新興データ解析会社と、3万人超の介護データを使って利用者の状態を予測する仕組みを構築しました。
アプリが指示
SOMPOケアでは既に開発されている「自立支援アプリ」に体重や介護記録などのデータを、のべ3万人以上のデータを蓄積しています。
そのデータと照合し、利用者の状態を予測することで、個別の利用者の状態が数カ月前から体重が少しずつ減っているのことを、アプリがつかみ介護職員に知らせることができます。
自立支援アプリは介護経験が浅い人でも利用者のささいな変化に気づけます。
これまでは、ベテラン職員の経験や勘という暗黙知に頼って予測を立てることが多いのが施設現場の状況です。
それでは経験の違いで介護の質にばらつきが起こります。
データの活用でこの差を埋め、質の高い介護を誰でも提供できることが理想です。
利用者の状態が一目でわかる、アプリでは利用者の現在の状態をスコア化して表示することもできます。
「(移動などの)活動」「認知」「栄養」の3項目でスコア化し、3カ月後に状態が悪化する可能性があるかを予測します。
悪化が予測される場合は、悪化の要因や悪化するとどのような状態になる可能性があるのか、効果的な予防策を示すことができます。
まとめ
介護現場の人手不足は年々深刻化しています。
介護保険制度が持続的に運営されるように中小零細企業が多い介護事業者の現状に関して財務省の審議会(財政制度等審議会)等で規模拡大の提言がなされています。
今回紹介したテクノロジーの活用事例は資本力のある大手介護事業者だからなせる取り組みという一面もあります。
介護保険サービスが社会保障制度の枠組みという側面からも行政と事業者が一体となり、テクノロジーの活用が進んでいくことで日本全体の介護サービスの質の向上に繋がる思います。
日本企業の知識創造の特徴である暗黙知から形式知への変換が進むことで今後世界で進む高齢化にインセンティブとなることに期待したいものです。
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