介護施設 カスタマーハラスメント・クレーム対策

このブログでは「介護役立情報」を紹介します。

今回は世間でも課題になっているカスタマーハラスメントについて、介護施設で発生するカスタマーハラスメント・クレーム対策を紹介します。

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目次

介護現場におけるカスタマーハラスメントの現状

介護現場におけるカスタマーハラスメントの実態

施設・事業所に勤務する職員のうち、利用者や家族等から、身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどのハラスメントを受けた経験のある職員は、サービス種別により違いはあるものの、利用者からでは4~7割、家族等からでは1~3割になっています。

この1年間(平成 30 年)で見ると、利用者からのハラスメントを受けたことのある職員は、割合が高いサービスで6割程度、低いサービスで2割程度となっており、いずれのサービス種別においても、ハラスメントを受けている実態がうかがえます。

職員から見たハラスメントの対応として必要な取り組み

職員から見た ハラスメントへの対応として、

  • 利用者・家族等と事業者・施設による相互的な確認
  • 相談しやすい組織体制の整備
  • 事業者内での情報共有
  • 利用者・家族等への啓発活動

などを必要と感じています。


施設・事業所に希望する対応

利用者・家族等からハラスメントを受けた場合に、施設・事業所に希望する対応は以下の通りです。

  • ハラスメントの報告をした際、今後の対応について明確に示して欲しい
  • 具体的な対応について話し合う場が欲しい
  • 利用者・家族等へ注意喚起し、再発防止に努めて欲しい
  • ハラスメントの報告をした際、事実を認めて欲しい

ここでも組織・事業所としてハラスメント発生時の防止対策の整備状況への強い希望が伺えます。

職員は、相談しやすい体制と今後の対応への明確な方針の提示、事業者内での情報共有、利用者・家族等への啓発や再発防止の働きかけなどを求めています。

カスタマーハラスメントを受けた介護現場の職員の2~4割は、「仕事を辞めたい」と思った事がある状況です。

職員に与えるダメージは大きく、組織としての対応を誤ると大量離職をまねく恐れがあります。

介護現場におけるハラスメント対策マニュアル 株式会社 三菱総合研究所 抜粋

介護イメージ

クレームへの対応について

クレーム対応のしんどさは、介護現場における通常業務や担当者の心身の健康の維持に影響を及ぼす可能性があります。

組織全体で報告制度の整備や対応策のマニュアル化を行い担当者が精神的に追い込まれない様組織のバックアップがあると信じれる環境が重要です。

介護サービスの重要事項説明書には苦情受付窓口の明記が義務付けられています。

苦情受付担当者には、組織として、どこまでが苦情・要望でそれ以上がクレーマーか具体的な共通認識となる具体的な基準が必要です。

まずはそれぞれの事業者が具体的な基準を設けるための事例や対応例を紹介します。

それぞれの事業者が基準を設けらることでカスタマーハラスメントが原因で離職する介護職が減ることを期待しています。

クレーム対応のしんどさ

・苦情申出の窓口が当面の間矢面にたつこと 

・苦情申出が利用者又は家族(お客様)であること

・常にマウントを取られる(取ろうとされる・相手の理不尽な正義等)こと

・「不合理」な言い分にも当面はお付き合いせざるを得ないこと

・ゴールが見えないこと(いつまで??)同じ事の申し出が繰り返される

初めて苦情対応を行う職員は、苦情申出に対して全てに真摯に受け入れようとします。

まずは、クレームの基準や事業者内での過去事例を事前に共有しましょう。

クレーム対応の重要性

・担当者の心身の健康の維持への配慮は事業者にとって最重要

・クレーム対応の失敗が,新たなクレームを呼ぶ

真面目な職員ほど「大ごとしたくない」意識で自ら抱え込んでしまう可能性があります。報告制度を明確にし、意識変化が重要です。

また、対面での苦情受付は一人で対応しない等のルール化も必要です。

クレーマーの常套手段,常套句(やり口)の理解

苦情担当者を(精神的に)追い込む事例を事前に知っているだけで、担当者の心の準備に繋がります。

苦情申出の窓口が当面の間、矢面にたつとしても、下記内容の頻度で組織として毅然と対応する方向性を決定します。

・「納得できる説明がない」 ←説明しなければ・・・

・「説明責任を果たしていない」 ←説明しなければ・・・

・「訴えてやる」,「市役所に報告する」←大ごとになってしまう。会社に迷惑が・・・

・回答を急がせる ←ご要望に添わなければ・・・

・こちらの「落ち度」につけ込む ←こちらにも落ち度が・・・

・倫理観につけ込む ←利用者さんのためになんとか・・・ 

・担当者を引き込む(共犯) 

「利用者様」と「クレーマー」の区別

利用者の苦情・要望とクレーマーの区別を行うには、それぞれの事業者でクレーマー・ カスタマーハラスメントの定義、基準を設ける必要があります。

以下を参考にそれぞれの組織で合意形成していく基準を設けましょう。

「クレーマー」って何?定義づくり

  • 「苦情を言ってくる人」頻度、内容、態度等
  • 「不当な要求」「不合理な要求」「常識を逸脱した苦情」過去の事業者に寄せられた「不当な要求等」から具体化していく

「クレーマー」認定を行う

・「認定」も「非認定」も1人の判断では行わない。

・必ず複数の人間の価値観,常識から判断

対策の最終決済者である経営陣への報告と情報共有は早ければ早いほど選択肢が増え、対策に時間をかえる事が出来ます。

以下は株式会社メグラスさんがまとめられた利用者・家族からの「正当な指摘要望」「過剰要望」「ハラスメント・クレーマー」を区別する基準です。

具体的でそれぞれの組織で基準を設ける際の参考になると思います。

正当な指摘要望、過剰要望、ハラスメントを区別する基準 (株)メグラス基準例参照 

参考図書 【社長、クレーマーからの「誠意を見せろ」と電話がきています。】も具体的事例が多く記載され基準作りの参考になります。

クレーマーと向き合うときの具体的対応事例

  • 傾聴 先ず初めは傾聴することが必要 頻度、態度等に対して傾聴に限度もあり、時間を決めておくのも一つの方法
  • 事実(何があったのか)を確認
  • 要望(要求)の内容を確認
  • 謝罪するべきは謝罪してもよい。謝罪と法的責任は別。痛い想いや心配をお掛けしたことへの謝罪等
  • (仮に落ち度があっても)責任範囲は「相当な範囲」に限られる。
  • 要望等に対してその場で判断しない。1人で判断しない。回答を持ち帰る。
  • 組織の最終決済者、経営陣への報告と情報共有
  • 証拠を残すことの重要性(法的対応)要望内容等記録又は録音で情報を残す。

対応のテクニック事例

クレーマーのタイプや態度、その時の間の取り方など正解はありませんが、少し知っているだけで役立つ対応テクニックを紹介します。

心がけ、気持ちの整理

誰においても苦情応対は嫌なもので憂鬱な気分になります。相手の感情に真摯に受け止めすぎると心身の負担も大きくなります。

そんな時お勧めが少し間が抜けているように相手に思わせ、こいつにいっても無駄とあきらめさせることです。

また、理不尽な要求がどうにもならないと思わせるよう相手に同様の要求を反復したりする方法です。

電話を切らせてくれない

何度も同じ内容で電話がかかる場合などは、最初に電話の終わりの時間「用事を作っておく」を伝えるようにします。

訪問時に帰らせてくれない

訪問前に事業所内で電話をかける役を依頼し、時間になれば携帯電話に連絡を入れてもらうようにします。

「今からすぐ来い」などの理不尽な要求には、会社のルール「夜間訪問は行えない等」のせいにする。

「木で鼻を括った」ような対応

最初は真摯に応対しますが、頻度や態度など会社で決めた基準を超えた場合など、あえて不愛想な態度で理不尽な要求には対応できない旨を毅然と伝えます。

まとめ

介護が必要な方々のお役に立ちたいという使命感で働く優しい人材が一部のクレーマー・カスタマーハラスメントで介護の仕事を辞めるようなことがあってはなりません。

ハラスメントや過度な要求を見逃せば、特定の利用者へサービスが偏り、質の低下や職員のモチベーションは下がる一方です。

クレーマー・カスタマーハラスメントに毅然と対応する組織づくりが職員の定着、安定経営に繋がることを経営陣は真剣に考える必要があります。

参考 厚生労働省 介護現場におけるハラスメント対策

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