このブログ「介護役立つ情報」では、介護サービス事業の今後の展望についての情報を紹介しています。
今回は増え続ける通所介護のトレンドと今後の事業展開における政策的動向を紹介します。
2016年を境にデイサービスのトレンドは規模拡大に変化
厚生労働省の統計(介護給付費等実態統計)の最新データによる通所介護の事業所数が明らかになりました。
通所介護事業所、地域密着型通所介護事業所の総数は、今年4月時点で全国に4万3392事業所あります。
総数は2016年に4万3000事業所を超えてから6年間、横ばいに近い状態が続いています。
通所介護の規模でいうと、地域密着型通所介護は2016年の2万3763事業所をピークに6年連続で減少し、今年は1万8947事業所となっています。
一方で、通常規模型・大規模型の通所介護は増加し続けています。
この傾向は、2015年度の大幅マイナス介護報酬改定による影響が大きいと考えれれます。
2015年の介護報酬改定は介護事業所の運営に大きな影響を与え中でも主に以下の改定内容がデイサービスの運営に影響を与えました。
デイサービス大幅マイナス改定
通所介護はあらゆる区分において基本報酬が切り下げられ、とりわけ地域密着型(小規模)については約9%の基本報酬のマイナス改定となりました。
同時に利用定員18名以下が地域密着型サービスへ2016年から移行されるなど、非常に大きな見直しとなりました。
地域密着サービスになることで市町を超えてのサービス利用が出来なくなり、市町の境にある事業所は通常規模の運営が余儀なくされました。
これにより地域密着型通所介護の経営環境が厳しくなり、事業所の統廃合が進んだことによって事業所数の減少が続いています。
また更には、地域密着型サービスへとサービス分類が移行され、市区町村が指定権者となり、一部市区町村では、新規開設が行えないケースも生じています。
所得が一定以上だと利用者の自己負担は2割に
介護保険の財源は、1/2が国と自治体、残り1/2を40歳以上の被保険者が支払う保険料で賄われています。
大介護時代に突入にあわせ、介護保険制度自体の持続性も危ぶまれ、全員1割を利用者が負担していたのが、収入におうじて自己負担が2割になりました。
自己負担2割は「年金収入280万円以上」が該当し、モデル年金や平均的消費支出の水準を上回り、被保険者の上位20%に該当する層にあたります。
「要支援」サポートが市町村へ
要支援は身体介護の必要はほとんどなく、買い物や調理、洗濯、掃除といった生活面の一部に支援が必要な状態と定義されています。
この「要支援」を対象とする予防給付のうち、訪問介護と通所介護について、2015年4月より3年かけて「医療介護総合確保推進法」を基に、「市区町村が取り組む地域支援事業」に移されました。
総合事業に移行されることで従来型の報酬単価も大きく引き下げれました。
これまでは、全国一律のサービスだったものが、市区町村に移行することで、市区町村の財政状態やトップの意識次第で、サービス内容や利用料に差が出る可能性はありましたが、現実的には進んでいません。
上記な主な改定による要因と小規模デイサービスの運営事業者の経営規模は小さく脆弱であったため、設備投資による規模拡大出来なかったこともあります。
通常規模型・大規模型についても、基本報酬はマイナス改定でしたが、下げ幅が限定的でありました。
また、規模の経済を活かした効率経営を行うことによって収益性の確保が可能であり、設備投資や人材確保においても経営規模が大きな事業所が収益を上げていきました。
通常規模型・大規模型デイサービスは着実に事業所数は増加しています。
要介護高齢者の数は年々増加していることから、通所介護のニーズは拡大傾向にあるため、従来は地域密着型を展開していた大手・中堅の通所介護事業者においても、通常規模型・大規模型にシフトチェンジして新規開設を行う傾向も見受けられます。
先を見据えてビジネスモデル再考
このブログでも何度か紹介して通り財務省の審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)でまとめられた軽度者改革の提言では、通所介護の要介護1と2の利用者を介護保険給付から総合事業へ移管する提言がなされています。
2015年の要支援者の総合事業へ移管時はマイナス改定と合わせてデイサービスの収益を圧迫し、倒産件数も増えた時期でもありました。
あくまで提言は財務省のみですが、社会保障費が増え続ける中、次期介護報酬改定や法改正で実現する可能性は低くてもシュミレーションする必要はあります。
5年から10年程度先を見据えるならば、介護保険外サービスの確立による新たな収入源の確保や、要介護3以上の中重度者への対応強化など、通所介護事業のビジネスモデルの見直しを検討していく必要はあります。
2021年の改定で導入された「LIFE」を中核とした科学的介護への取り組み、アウトカム評価などは、次期介護報酬改定において、いっそう評価・拡充されることは確実と思われます。
多くの事業所では表層的な加算への対応のみに事務作業が行われていますが、今後は、より本質的な取り組みに向けた準備を行うことが重要と思います。
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