SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
今回は、8月24日GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議で2011年の福島原発事故から削減の方向で進んできた原子力政策の大転換が示されたことについて紹介します。
日本のエネルギー安定供給へ政策転換
この度の岸田政権のエネルギー政策に関して大転換が示されたのは、ロシアへの経済制裁の影響で電力不足が問題となり、安定的に供給しながら脱炭素を目指す両立が課題となっった為です。
7月の参議院選挙の自民党政党公約からは原発削減がなくなり、安全が確認された原発を最大限活用していく立場と変化していました。
参議院選挙で国民の信認を得た形で岸田政権は、参院選挙後にいわゆる「黄金の3年」を手に入れました。
そのため、国民に痛みを伴う政策を含めて、目先の選挙を意識せずに中長期の視点に基づく、そして自らの信念に基づく骨太の政策を実行できる時間を岸田政権は手に入れ、エネルギー政策も大きく転換することになりました。
岸田内閣の至上命令として、グローバルにどのような事態が生じたとしても国民生活への影響を最小化すべく、事前にあらゆる方策を講じる指針が示されました。
電力需給逼迫の克服のため、あらゆる施策を総動員し、不測の事態にも備えて万全を期していくための具体的な対応が以下の通りです。
GXの前倒し・加速化
- 産業転換 →成長志向型カーボンプライシングと支援・規制一体での早期導入
- グローバル戦略→アジア大での「トラジション投資(GX移行投資)の拡大など
「エネルギー政策の遅滞」解消のために政治決断が求められる事項
- 再エネ→送電インフラ投資の前倒し、地元理解のための規律強化
- 原子力→再稼働への関係者の総力結集、安全第一での運転期間延長、次世代革新炉の開発・建設の検討 、再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化
原子力発電所については再稼働済み10基の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応をとっていく予定です。
GXを進める上でも、エネルギー政策の遅滞の解消が急務で再生可能エネルギーの導入拡大に向けて定置用蓄電池の導入加速や洋上風力といった電源の推進など、政治の決断が必要な項目も示されました。
エネルギー自給率がとても低い国 日本
日常生活や社会活動を維持していくためにはかせないのがエネルギーです。
ですが、日本はエネルギー自給率がとても低い国です。
2018年の日本の自給率は11.8%で、ほかのOECD諸国と比べると低水準となっています。
10年ほど前の2010年には自給率が20.3%あったのですが、さまざまな要因が重なり、現在の水準となっています。
自給率が低い大きな原因は、国内にエネルギー資源がとぼしいことです。
エネルギー源として使われる石油・石炭・液化天然ガス(LNG)などの化石燃料はほとんどなく、海外からの輸入に大きく依存しています。
次世代原発、日本は従来型を改良
次世代炉には出力30万キロワット以下の「小型モジュール炉(SMR)」や使用済み核燃料を再利用できる「高速炉」など主に5種類があります。
経済産業省が新増設の検討の軸に据えるのが「革新軽水炉」と呼ぶもので、既存の大型軽水炉の技術を基に改良を加え、福島第1原発事故後にできた新規制基準で求められる安全対策などを標準装備します。
現行原子力発電所が第3世代と呼ばれていて、「革新軽水炉」は次世代と呼ばないという意見もあるそうです。
「革新軽水炉」は大型飛行機が衝突しても放射性物質を外に漏らさない頑丈な構造とされ炉心への冷却水の配管も複数備えています。
経産省の審議会は2030年代の運転開始を目指すとの技術開発の工程表案をまとめています。
個人的には、ビル・ゲイツ氏も投資する「小型モジュール式原子炉」の安全性は今後の商業化加速に興味があります。
「小型モジュール炉(SMR)」の開発が進んでいる背景
SMRには、大型炉に比べて優位と期待されている特徴がいくつかある。
一つは安全性。小型化で冷却が容易になる。例えば、炉心の冷却機能喪失時にも自然冷却が可能になると見込まれている。
また、部分ごとに工場生産することで建設期間・費用を圧縮できる可能性がある。
日本を含め、国際的に電力自由化が進んでいるが、その流れの中でも投資収益の見通しを立てやすい。
発電に使用する核燃料の量が少なくて済むため、事故時の防災対策重点区域(EPZ)、つまり防災・避難計画を縮小できる可能性もある。国際的に議論が進んでいる最中で不確実だが、期待されている部分だ。
EPZが縮小できれば、事業者の安全対策に要する費用負担の軽減や立地地域の方々の安心感向上につながるだろう。
日本では、再生可能エネルギーの「主力電源化」という政策方針が掲げられ、国際的にも「再エネ普及拡大」が優先課題に取り上げられている。
近年では「水素の利活用」もうたわれているが、SMRは再エネや水素などとの共生・共存に向いている。
日本で研究開発されているSMRに、日本原子力研究開発機構の試験研究炉がある。炉の出力を柔軟に調整できるため、太陽光を利用する発電所の出力が増加した際などに発電量を低下させることが可能だ。発電量低下時、炉の熱源は、水素製造に利用できるとされている。
JIJI.COM 抜粋
ー過去に大きな事故が起きた。SMRは懸念を払拭(ふっしょく)できるか。
東京電力福島第1原発は炉心溶融を起点として過酷事故に至った。
大型炉では、事故が起こって冷却機能が喪失した場合、炉心温度が異常な水準まで高熱になり、熱が除去できなければ炉心溶融が起きる。
それを防ぐために非常用発電機を動かすなどして冷却するが、福島第1原発は冷却系統が全てストップしたと報告されている。
SMRは原理上、そうしたことは起きない。大型炉よりも外気に熱を逃がしやすい構造で、外部電源が喪失しても、万一のときでも、自然に冷却がなされ得る。そのような点を踏まえ、安全性が高いと言われている。
JIJI.COM 抜粋
ー普及への課題は。
まず、安全基準や規制の整備だ。小型炉の特徴を踏まえた合理的な安全基準や規制の整備が大事になる。
それから経済性の確保。発電単価は出力が大きくなればなるほど下がっていく。
出力規模の小さいSMRはどうしても単価が高くならざるを得ず、経済性の点は大型炉の方が優位だ。
国際的にも、いかにコストを抑えていくかが非常に重要なポイントと認識されている。
量産効果を発揮するためには、十分に大きな市場が不可欠と言われている。
JIJI.COM 抜粋
ー大型炉とはどのくらいのコスト差があるのか。
商業化した例がほとんどないので、実際にコストがどうなるかというのは分からない。ただ、政策的な支援策などが追い風になる可能性はある。
過去の経済産業省の審議会で(SMR開発で先行している)米ニュースケール・パワー社が示した資料では、出力1KW当たり、だいたい5000ドル、おおよそ50万円くらいが目標とされた。
いま、足元の発電コストは1KW当たり約40万円なので、それより高めだ。プラスアルファで、追加的安全対策費用などを考慮に入れたものになるだろう。
確定的なことは言えないが、安全基準や規制にSMRの特徴が反映され、大型炉に必要だった安全対策費用が減ることになれば、その分、SMRのコストが改善する可能性はある。
JIJI.COM 抜粋
ー将来的な活用の見通しは。
長期的視点ということであれば、SMRの特徴を踏まえた安全基準や規制が整備され、国際的に多くの商業炉が普及した段階になれば、日本でも大型炉や石炭火力発電所を廃止した跡地に建設することが議論になるかもしれない。世界の動向がキーになってくる。
時期は何とも言えないが、経済協力開発機構(OECD)は、2035年に世界のSMR導入量が最大約2000万キロワットに達すると推計している。
日本で原子力を考える順番は、まずは既設原子炉の再稼働。
SMRは中長期的に研究開発を進めていくことになるが、福島第1原発事故で原子力に対する信頼感が低下した中、人材の育成という観点からも、魅力的なプロジェクトという肌感覚がある。
JIJI.COM 抜粋
まとめ
福島の事故処理が終わっていない状況で原発再稼働への方向転換への批判も想定されますが世界が目まぐるしく変化する中、どのエネルギーを開発するにしても10年以上という長期計画です。
国内にエネルギー資源がとぼしく、エネルギ自給率の低い日本にとっては、限られた予算の中で選択肢が多い必要はあると感じています。
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