SDGs 石油化学コンビナートのサステナビリティ

SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。

今回は、2022年6月14日の日経新聞で大きく取り上げられた出光興産が大きく出資している、山口製油所の停止についてや、現在の石油化学コンビナートの課題について紹介します。

山口製油所精製設備停止と次世代エネルギーへの転換

以下は2022年6月14日の日経新聞の抜粋です。

出光興産は38%を出資する西部石油(東京・千代田)の山口製油所(山口県山陽小野田市)を停止する方針を固めた。

10月までに同社を完全子会社化したうえで2023年度中にも精製設備を止める。

原油処理能力は日量12万バレルで、出光グループ全体の約13%を占める。

ガソリン需要の減少が続くなか、水素など脱炭素の拠点に改めようと検討する。

カーボンゼロの実現に向けた企業の構造転換が広がってきた。

14日午後に発表する。西部石油が運営する製油所は山口のみ。

同社にはほかにUBE(旧宇部興産)や中国電力など地元企業も出資している。

出光はこれらの企業が保有する株式をすべて買い取ったうえで、精製設備を止める。

山口製油所は精製設備の停止後も閉鎖はしない方針だ。

燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素やアンモニアなど、今後の需要拡大が見込まれる次世代エネルギーの受け入れ基地に転換することを検討する。

約400人いる従業員の雇用は維持し、グループ内のほかの製油所への配置転換などを打診する。

日経新聞 抜粋

出光興産と言えば私の中では映画にもなった「海賊とよばれた男」が印象的で映画・小説からモデルとなった出光佐三氏は石油メジャーと対決するためには、産油国から原油を直接輸入し、自ら精製する必要性を痛感します。

アメリカから巨額の融資を受けることに成功し、昭和32年(1957年)、徳山に、自らの理念を込めた製油所を常識外れの速さで完成させます。

米国の対日石油禁輸を発端に、大東亜戦争が始まります。

近代国家の血液ともいえる石油がなくなれば、海軍は2年以内に行動不能となり、重要な産業は1年以内に生産を停止することになります。

戦前から戦後の長きにわたり石油は国家の血液であり続けてきました。

現在の地球温暖化問題からカーボンニュートラルの方向性が示される中、車の燃費向上や電動化が進み、ガソリン需要の減少は歯止めがかからない状況です。

石油連盟によると、21年3月末時点の日本の原油処理能力は1日当たり345万7800バレルと直近20年間で35%減っています。

現在の需要は各社の能力削減を上回るペースで縮んでいて、国内の燃料油販売は同期間に38%減少しています。 

石油元売り各社は需給を調整するため余剰な精製能力の解消に取り組んでいますが、ウクライナ危機など懸念から、エネルギー問題と安全保障の観点からも石油の精製・備蓄の必要性を考えてしまうのは、私だけでしょうか。

石油コンビナートは、石油、化学、鉄鋼等の基幹産業が集積し、長年にわたり日本経済を牽引してきましたし、今でも日本の産業競争力を支える素材・エネルギーの供給拠点として重要な役割を担っていることは間違いありません。

エネルギー安定供給のための取り組み

日常生活や社会活動を維持していくためにはかせないのがエネルギーです。

ですが、日本はエネルギー自給率がとても低い国です。

2018年の日本の自給率は11.8%で、ほかのOECD諸国と比べると低水準となっています。

10年ほど前の2010年には自給率が20.3%あったのですが、さまざまな要因が重なり、現在の水準となっています。


資源エネルギー庁

自給率が低い大きな原因は、国内にエネルギー資源がとぼしいことです。

エネルギー源として使われる石油・石炭・液化天然ガス(LNG)などの化石燃料はほとんどなく、海外からの輸入に大きく依存しています。

1970年代に起こった「オイルショック」をきっかけに、化石燃料への依存度を下げようとエネルギー源の分散が進みました(「【日本のエネルギー、150年の歴史④】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む」参照)。

しかし、2011年に起こった東日本大震災の影響で国内の原子力発電所が停止し、ふたたび火力発電が増加しています。

そのため、現在の化石燃料への依存度は85.5%となっています。

円安が進み化石燃料は高騰していく中、段階的に再生エネルギー需要を増やしていくにしても稼働出来る原発は稼働し、エネルギーの化石燃料への依存度は下げていく必要があります。

コンビナートに新設備 プラごみを新技術で再生産

2022年2月21日東京新聞の記事によると日本で最大級の千葉県市原市の京葉臨海コンビナートで、プラスチックのリサイクル方法を劇的に変える新たな試みが、官民一体で始まりました。

以下記事の抜粋です。

「かつてはコンビナートといえば、公害のイメージなど環境に負荷を与える印象も強かった。プラごみの減量や二酸化炭素(CO2)排出削減を通じ、市原からそれを覆していく」。

同市総合計画推進課長の石川教男さん(53)はこう語る。

県内自治体で唯一、内閣府が選定する「SDGs(国連が掲げる持続可能な開発計画)未来都市」に選ばれた同市は昨年、二〇三〇年までのSDGs戦略を策定。その象徴的な取り組みが、コンビナート内に新設されるプラスチックの一種のポリスチレン(PS)のリサイクル設備(プラント)を活用し、市と市民も一体となって資源の循環的な利用を推進する計画だ。

PSは、食品スーパーの総菜パックやカップ麺の発泡スチロール容器など多用途に使われる。

生活に身近な一方、使用済み容器を溶かして再生する従来のリサイクル方法では、衛生上の課題から食品包装向けには原則再使用できなかった。

同市のコンビナート内で化学メーカー「東洋スチレン」(東京都)が整備するプラントでは、使用済みPSを加熱分解して生み出したガスから原料を回収する、最新の応用技術でPSを再生産する。食品の汚れなどの不純物が除かれるため、食品包装も含めあらゆる用途向けに何度でも再生できるという。

同社によると、国内民間企業が過去に実証実験以外で本格的に事業化した例はなく、二三年度の実証開始を予定する。

「この技術で海洋プラスチックごみの削減といった環境効果が期待できる」と同社担当者は説明する。

環境省などによると、国内からは年間数万トンもの海洋プラごみが流出。県が旭、富津両市の二海岸で漂着物を調べると、二〇年十〜十一月の二カ月間で計百キロのプラごみが確認された。

東京新聞 記事抜粋

石油コンビナートは戦後の日本の発展に大きな貢献をしてきたことは言うまでもありませんが、同時に環境破壊や地球温暖化の要因の一つであることも間違いありません。

化石燃料に替るエネルギーの開発と石油消費量が減少トレンドの今後を考えると日本の石油コンビナートに隣接する産業地帯の今後の活用方法を考えていく必要も感じます。

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