SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
今回は、日本のエネルギー危機の恐れについて次の冬の寒さが厳しければ一般家庭で約110万世帯分の電気が全国で不足する見通しについて紹介します。
原発動かず節電頼み限界のシュミレーション
2022年6月6日の日経新聞の記事によると、火力発電所の休廃止が相次ぎ、原子力発電所の再稼働は遅れています。
ロシアからの燃料調達の不透明感が高まる中、東日本大震災以来の節電頼みの需給調整は限界に達しています。
ウクライナ侵攻や資源高によるエネルギー危機が、抜本改革を放置してきた日本を直撃していています。
予備率マイナス、2年連続の異常事態
電力広域的運営推進機関によると厳冬の場合、2023年1月の東京電力ホールディングス(HD)管内の予備率はマイナス0.6%と想定されています。
予備率は電力需要に対する供給の余裕の度合いを示し、安定した供給には少なくとも3%が必要と述べています。
震災直後を除くとマイナスは昨冬の東電が初めてで、2年連続となれば、異常事態です。
23年1月は中部から九州の西日本6エリアも1.3%しかない想定です。
東電を含め7電力の予備率を3%にするには350万キロワットが必要で、試算では約110万世帯分にあたります。
宮城県の世帯数を超える規模で計画停電などが起きかねない。
現時点で1月までに再稼働を検討する火力は150万キロワット。
経産省は残りを新設火力の試運転などで埋められるか検討していますが稼働が不安定で当てにできない状況です。
仮にロシアからの液化天然ガス(LNG)の輸入が全て止まるとさらに400万キロワット強の火力が動かなくなるとの試算も出ている様です。
原発の状況
主力電源の一つの原発は、原子力規制委員会の安全審査を通過したものが17基あります。
その中で現在稼働しているのは4基のみで、残る13基の発電能力は計1300万キロワットと試算されています。
全て動けば危機下でも電力は十分賄えますが、地元の同意が得られていないことや定期検査、テロ対策工事などを理由にすぐには動けない状況です。
政策にほころび、限られる融通量
そもそも電気が不足するのは震災以降の政策のほころびに起因すると日経の記事では紹介しています。
燃料費がかからない再生可能エネルギーが増え、火力の出番が減りました。
2016年の電力自由化で競争が激化し、発電所の整備や運営費用などをルールに基づき電気料金で回収できる総括原価方式も崩れています。
電力会社は利用率や収益が悪化した火力を廃止していった経緯があります。
経産省によると30年度までの10年間に火力発電は新設と廃止の差し引きで約1300万キロワット分が減る想定です。
経産省は火力の投資確保のため「容量市場」を設けていますがまだ機能せず、代替電源の確保が進んでいない状況です。
容量市場とは、従来の卸電力市場で取引されている「電力量(kWh)」ではなく、「将来の供給力(kW)」を取引する市場です。
関西電力 抜粋
電気が余る地域から足りない地域に融通できる電気の量も限られています。
それは地域をまたぐ送電線が細く、大手電力10社ごとに送電網を管理してきたことが原因です。
戦後「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門は後戦後の日本復興を支えるのは電力であり、電気事業の競争による発展が欠かせないとの信念をもっていました。
安左エ門の構想は、戦中の日本発送電を含むすべての設備を分割し、九つの配電会社に配分し、地域ごとに電力配給の責任をもつ「九分割案」体制でその流れで戦後の電力体制が運営されています。
詳しくはこのブログで紹介した本「まかり通る」で詳しく描かれています。
戦後体制でうまくいったものでは社会情勢が変われば、臨機応変に対応していく必要がありますが西側諸国においても日本が遅れをとっています。
ウクライナ危機を受け、イギリスでは安定供給のため再生エネや原発の増設計画を公表しています。
ドイツはロシア依存のパイプラインで送られる天然ガス代替のLNGを増やそうと受け入れ基地を造る予定です。
送電網が欧州全体でつながり融通できるうえ迅速に対策を総動員を進めています。
2022年3月28日の日本経済新聞社の世論調査で安全が確認された原子力発電所の再稼働について「再稼働を進めるべきだ」が53%で「進めるべきでない」は38%だった。
2021年9月の調査ではそれぞれ44%、46%だった。
3月16日に東北地方で最大震度6強の揺れを観測した地震により、一部の火力発電所が停止し電力需給が一時逼迫しました。
東北における大震災の後原発稼働に関して安全性が担保されていても地域の合意が得られない等で稼働できていない状況ですが、政治主導で再生エネルギーや蓄電技術・送電網が整うまでの間原発稼働を進めていく必要があると思います。
自民党内にも原油や液化天然ガス(LNG)の相場高騰も踏まえ、原発の必要性を訴える意見もあります。
毎日新聞によると、政府は6月7日、電力需給に関する検討会合を開き、今夏、家庭や企業に対して節電要請することを決めました。
政府による節電要請は2015年以来7年ぶりです。
節電要請の期間は7月1日~9月30日で特に太陽光発電の出力が減り、電力需給が厳しくなる午後5~8時ごろの節電を呼びかけます。
この冬とはいわずこの夏も電力の逼迫が懸念されていて、早急に原発稼働等方針変更が必要です。
まとめ
日本においてもエネルギーデイ作見直し策の検討段階にあります。
資源高は進み2人以上世帯の月間電気代は3月に1万6273円と、2000年以降で最も高くなっています。
逼迫解消に向け、経産省は大手企業が対象の罰則付きの使用制限令や計画停電の準備も進めていますが経済成長に水を差す格好にもなりかねません。
電気が確保できなければ製造業は更に拠点を国外に流出の恐れもあります。
日本だけでなく石炭火力の発電が増えている状況はカーボンニュートラルの目標も遠のきます。
積み残してきた多くの課題に加え、目の前の海外情勢の危機に対応する新たな戦略が政治主導で求められます。
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