SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
今回は、グリーンボンド(環境債)の紹介と3000億円という巨額資金の調達に踏み切ったNTTの戦略について紹介します。
グリーンボンド(環境債) とは
企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券をグリーンボンドと呼びます。
主な特徴
- 調達資金の使途がグリーンプロジェクトに限定される。
- 調達資金が確実に追跡管理される。
- それらについて発行後のレポーティングを通じ透明性が確保される。
主なグリーンボンドの発行主体
- 自らが実施するグリーンプロジェクトの原資を調達する一般事業者
(専らグリーンプロジェクトのみを行うSPCを含む。) - グリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関
- グリーンプロジェクトに係る原資を調達する地方自治体
主なグリーンボンドへの投資家
- ESG投資を行うことを表明している年金基金、保険会社などの機関投資家
- ESG投資の運用を受託する運用機関
- 資金の使途に関心を持って投資をしたいと考える個人投資家
グリーンボンドのメリット
発行のメリット
サステナビリティ経営の高度化
グリーンボンドに関する取組を通じて、企業等の組織内のサステナビリティに関する戦略、リスクマネジメント、ガバナンスの体制整備につながる可能性があります。
グリーンプロジェクト推進による社会的支持の獲得
グリーンボンド発行により、グリーンプロジェクト推進に積極的であることをアピールでき、それを通じて社会的な支持の獲得につながります。
新たな投資家との関係構築による資金調達基盤の強化
グリーンボンドを発行することで、地球温暖化をはじめとした環境問題の解決に資する性質を有する投資対象を高く評価する投資家等の新しい投資家と関係を築くことができ、資金調達基盤の強化につながります。
比較的好条件での資金調達の可能性
新興の再生可能エネルギー事業者など、金融機関との関係が十分に構築できていない企業等は、希望した条件で融資等が受けられないこともあります。
投資のメリット
ESG投資の一つとしての投資
ESG投資の一環として、グリーンプロジェクトへ積極的に資金を供給し、支援していることをアピールすることができます。
投資を通じた投資利益と環境面等からのメリットの両立
グリーンボンドへの投資を行うことで、債券投資による利益を得られます。
また、資金供給を通じ「環境面等からのメリット」に掲げるメリットの実現を支援し、持続可能な社会の実現に貢献できます。
グリーンプロジェクトへの直接投資
「パリ協定」を踏まえ、今後世界が更なる温室効果ガス削減に取り組んでいく中で、再生可能エネルギー事業や省エネルギー事業等のグリーンプロジェクトには、大きな投資需要があると考えられます。
オルタナティブ投資によるリスクヘッジ
プロジェクトボンドとして発行されるグリーンボンドについては、株式や債券等の伝統的資産との価格連動性(相関性)が低いとされ、分散投資によるリスク低減の一つになり得ます。
エンゲージメントの実施
グリーンボンドの場合、発行体から開示される環境改善効果等に関する非財務情報を分析・評価し、環境改善効果の持続性や環境に対するネガティブな効果等を踏まえ、環境改善効果の有無及びそのインパクトの大きさについて効果的なエンゲージメントを実施することが可能となります。
環境面等からのメリット
地球環境の保全への貢献
グリーンプロジェクトへの民間資金の導入が拡大し、温室効果ガスの削減や自然資本の劣化防止に資します。
グリーン投資に関する個人の啓発
グリーン投資や、自らが預金・投資した資金の使途への個人の関心の向上につながり、経済全体の「グリーン化」に貢献します。
グリーンプロジェクト推進を通じた社会・経済問題の解決への貢献
グリーンプロジェクトの推進により、エネルギーコストの低減、地域活性化、災害時のレジリエンス向上に貢献します。
グリーンボンド発行促進プラットフォーム 抜粋
国内のグリーンボンド発行額・発行件数
日本では2017年、環境省がこのICMAの原則を基に初代のグリーンボンドガイドラインを策定しています。
国内ではおおむね、このガイドラインに準拠する形で運用が進められており、発行額や発行件数は年々増加しています。
環境省によると、グリーンボンドの日本国内での発行総額は、2021年11月8日時点で1兆3831億円。2020年の年間の実績(1兆0330億円)をすでに大きく超えています。
2020年の発行額も2019年比で3割弱増えるなど、急拡大が
NTTの3000億円「グリーン債」
NTTは10月、グリーンボンド(環境債)の発行で3000億円の資金の調達を行っています。
「グリーン債」 の発行は大手でも100億単位は多く見受けられるようになりましたが、3000億円という金額の大きさは1事業体としては「世界最大規模」(NTT)となるようです。
さらに注目すべきは、発行額の約3倍に当たる9000億の応札があったということです。
2021年はNTTのほか、東京電力の関連会社やZホールディングスなどが数百億円規模のグリーンボンドを発行しています。
発行企業にとっては「一石二鳥」
NTTはなぜ今回、グリーンボンドによる巨額の資金調達に踏み切ったのか。
同社の島田明副社長は「投資家に(脱炭素化に取り組む)メッセージを伝えられるほか、金利自体も安くできる」ことが魅力だったと話す。
同社は今回、3年、5年、10年の償還期間で、それぞれ1000億円ずつを発行。利率は0.001%~0.27%とした。
一方、NTTが直近2020年12月に発行している社債(合計1兆円)の利率は0.05%~0.38%(償還期間は3~10年)。
発行時期や金額の違いがあるため単純比較はできないが、表面上の利率はグリーンボンドのほうが低い。
利率が低ければ、グリーンボンドは一般的な社債と比べ、投資家にとってのうまみが少ないことになる。
それでも買い手が殺到するのには理由がある。
今回NTTのグリーンボンドの買い手となった三井住友トラスト・アセットマネジメントは、「信用格付などの条件から考えると、仮に通常の社債が同じ条件でも購入した」(同社担当者)としつつも、「投資の社会的リターンを(株主など)ステークホルダーに伝えられるのはメリットになる」(同)と評価する。
「グリーン度」の高い債権、つまり環境によい事業のための債券が、一般的な債権より好条件で資金調達できる現象を「グリーンプレミアム(グリーニアム)」という。
持続可能な社会の構築を望む投資家が増え、彼らがグリーン度の高い商品を好んで購入するようになったことが理由だ。
この傾向は、ヨーロッパの債券市場ではすでに定着しつつある。
一方、「日本国内ではまだ明確に利率が下がることは確認されていないが、社債と比べて需要が高く買い手がつきやすいなど、メリットを感じる事業者も出てきている」(環境省環境経済課)という。
東洋経済記事 抜粋
まとめ
東洋経済の記事の冒頭で企業にとって自発的、付随的な活動にすぎなかったものが、いまや「生命線」といえる要素に変化していると述べています。
投資家にとって利率が低いグリーンボンドは投資の社会的リターンを(株主など)ステークホルダーに伝えられるのはメリットという側面もあります。
ステークホルダー経営は重要ですが、実践することは一般に思われている以上に難しい経営テーマだと一橋大学名誉教授兼CFO教育研究センターの伊藤邦雄センター長は述べています。
このブログで紹介した「経営者の条件」でP.F.ドラッカーは、成果を上げることが経営者 「エグゼクティブ」の条件と述べています。
組織活動や業績に実質的な貢献をなさなければ 経営者 「エグゼクティブ」ではありません。
ハーバード・ロー・スクール(ハーバード大学の法科大学院)の有名な教授である(ルシアン・) ベブチャックさんは「ハーバード・ロー・レビュー」に投稿した論文で「ステークホルダー資本主義は『幻想』ではないか」と述べています。
その論文はステークホルダー経営が企業の業績パフォーマンスを低下させ、ステークホルダー全体に経済的なパイを増やさないということを示唆する内容です。
また、業績が悪化すれば、株主どころか誰も幸せにしないと厳しく糾弾しています。
別の言い方をすると、「ステークホルダー資本主義は『広報宣伝』にすぎないのではないか」ということです。
2021年3月に、経済界を震撼させたといってもいい出来事が起きています。
(フランスの食品メーカーの)ダノンのエマニュエル・ファベールCEOが辞任に追い込まれたのです。
ダノンといえば、(環境や人権などに配慮する)「ESG」や「SDGs」にとても熱心な企業として、世界的に高く評価されているCEOでした。
一方、業績面では、ネスレなどの同業他社と比べると低迷していました。
いくらESGが重要とはいえ、利益率が低くては、株主から辞任圧力を受けることになるということです。
日本では、「ESGか、利益か」のような二項対立にしてしまいます。実際は、片方だけで経済は成り立ちません。
ESGも利益も両方を追求しないとならないという教訓であったと思います。
NEWS PICS記事 抜粋
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