紹介本『多様性の科学』

目次

多様性の科学  マシュー・サイド


【目次】
第1章 画一的集団の「死角」
第2章 クローン対反逆者
第3章 不均衡なコミュニケーション
第4章 イノベーション
第5章 エコーチェンバー現象
第6章 平均値の落とし穴
第7章 大局を見る

才能や知識、スキルがあるからといって成功できるわけではない。
致命的な失敗を未然に発見し、生産性を高める組織改革の全てがここにある。

多様性とは

最近、さまざまな分野で「多様性」を意味する「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にするようになりました。

とりわけビジネスの世界では、企業経営のキーワードのようにダイバーシティが用いられています。

ダイバーシティとは以下のような、意味や文脈で使われるようになりました。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティ(Diversity)という言葉の意味は、

  • 多様性
  • 相違点
  • 多種多様性

など。ダイバーシティを企業経営で用いる言葉として解釈すると「個人や集団の間に存在しているさまざまな違い」といった意味になります。

たとえば、

  • 年齢
  • 性別
  • 国籍
  • 学歴
  • 職歴
  • 人種
  • 民族
  • 宗教
  • 性的指向
  • 性自認

といった人材の多様性を認めるだけでなく、積極的に労働市場で採用、活用しようという考え方も表しているのです。

ダイバーシティという考え方は、もともとアメリカ国内における

  • マイノリティ
  • 女性

が差別を受けない採用活動や公正な処遇の実現を求める運動から広がったものです。

カオナビ 参照

今回紹介する『多様性の科学』では、多様性のない組織は思考が偏ったり硬直し、大きな失敗を起こしてしまう事例が多く紹介されています。

また、単にダイバーシティーとしての多様性だけでではなく、業績やイノベーションの要因とし思考の多様性の重要性も紹介されています。

一部陥りやすい事例を紹介し、ビジネスシーンに活かして頂きたいと思っています。

画一的集団の「死角」

2001年9.11の大胆なテロ計画を何万人もの人員と何百億ドル(何兆円)もの資金を誇るアメリカの一連の情報機関が阻止できなかったのは、破壊的な失態だど結論付けられています。

1998年以降アルカイダが同時多発テロ計画に着手することを最高指導者のオサマ・ビンラディンが承認した時点から9.11の当日までCIAにはその実行を阻止する猶予が29ヶ月あまりあったができませんでした。

人材の偏りが失敗を助長している

1974年のCIA創設以来厳格な人事採用基準を設けていましたが採用された人材は、ほとんど白人、アングロサクソン系、プロテスタントで「同類性選好」でした。

「同類性選好」とは外見や考え方が自分に似た者を選ぶ傾向で人材採用の場面で非常によく見られます。

CIAの民族的マイノリティの採用に消極的だったのは、二重スパイなどへの懸念もありましたが、一番の要因は選び抜かれた最高の人材であるべきだとう強い信念です。

本書のテーマが「多様性」で考え方が異なる人々の集団がもたらす大きな力を色々な角度から検討しています。

「有能だから」「速いから」といった基準のみで選ばず、人と違うという理由で採用する方が複雑な物事を考えていくために必要な視点になります。

テロ当時出回っていたビンラディンの画像は、洞窟に住みキャンプファイヤーを前にしゃがんでいました。

CIAの分析官にとってビンラディンは現代文化とは、ほど遠い男に映っており、時代錯誤な存在でしかなかったのです。

しかしイスラム文化に詳しい人であれば、ビンラディンの質素な姿で洞窟にいたことは、イスラムの「預言者」のイメージに重ねていたことはすぐに理解されます。

ビンラディンの行動は全て計算されていて、イスラム教に馴染みのない者には、価値が微塵も感じさせないイメージを多用しています。

ビンラディンはプロパガンダに関する天賦の才能により、自身を預言者に仕立て上げ、イスラム社会がかつての力を取り戻す日を待ち望だ大勢のイスラム教徒の心をつかみます。

その頃、アメリカでは「イスラム教徒の時代錯誤の無知な連中」が2万人も訓練キャンプに参加していて、メンバーの多くは殉教者となる覚悟をしていました。

危険な警告の芽が顔を覗かせていましたが、CIAはまともに取り合わず、アメリカに対する危険な兆候としてアルカイダの優先順位は低いままだったのです。

イスラム教徒にとって、詩は聖なるものでタリバンも常に自分たちの声明を詩にして読みあげていました。

CIAが優秀な人材を集めたのは、知識の幅を広げてより深い分析を可能にする為でしたが、多様性に欠けた組織は巨大な盲点を生んでいた。

ビンラディンには、アメリカの諜報機関にブラックホールのような盲点があることが分かっていたに違いないと分析する者も多くいます。

ヨルダンの諜報機関はその当時、通話データから「大いなる婚礼」という言葉を傍受し、アメリカ政府に報告しましたが、ことの重大さが認識されることはありませんでした。

9.11のテロ攻撃の悲劇は当時のCIAにとって、危険な兆候を明らかにすることはできなかったことです。

多様性の欠如が世界髄一の情報機関を弱体化させていました。

もし多様性に富んだ集団であったのであれば、アルカイダのみならず、世界の脅威に対してもっと深い洞察力が発揮できたというのが著書の見解です。

多様性の価値

多様性はまだ差別問題や倫理的な問題の一部として語られることが未だ多く、業績を上げる要因やイノベーションを起こす要因として取り上げられることは少ない状況です。

多様性を正しく理解し始めれば視野が大きく開けていきます。

CIAの事例にように、画一的な集団の危険性について理解することができます。

我々は自分よ同じ考え方の人、同じ視点や同じ偏見を持つ人と一緒にいることを無意識に好みます。

その方が自分たちの考えの自信を持て、頭がよくなった気になりますがそれが愚かな集団だとは気づけいません。

そのような状況に陥らないための対策として、多様性を正しく理解する以上に効果的な方法はありません。

素晴らしい企業文化では、問題や意見の相違が水面下に潜ることなくうまく解決される。

社員はみなそれまで作ったことのないものを想像したり、実際に作ってみたりすることを楽しんでいる。

それが組織の進化を支える。

そのためにわが社で取り入れているのは、「アイデアの能力主義」だ。

誰もが率直に発言できる環境を作り、透明性を徹底して、有意義な仕事、有意義な人間関係につなげることを常に目標としている。

本書 ブリッジウォーター・アソシエーツ 創業者レイ・ダリオ団」

企業にとって重要なことは社会にとっても重要で、新たなアイデアを推奨し、異論を排除せず、強力なネットワークを広げて反逆者のアイデアを生み出し、融合のイノベーションを起こすことが重要で

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