紹介本 『日本国・不安の研究「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』

日本国・不安の研究「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!/猪瀬直樹

この お勧め本紹介を通じて本を読むことの楽しさや色々な価値観を知り、成長に繋がることを紹介したいと思っています。

今回は日本のGDP550兆のうち今や1割を占める医療・介護の産業について、暮らしに密接していながら、内実が分かりにくところジャーナリストである猪瀬さんがわかりやすく“知られざる真実”を紹介しています。

長く介護のビジネスに携わっていて、介護に関する課題をこのブログでも紹介していますが、元地方行政のトップであり、ジャーナリストである著者の発信は、一般の方にもわかりやすい内容だと感じます。

本書では以下のような医療と介護のどちらの課題も多く紹介されていますが、このブログのテーマから介護中心に紹介します。

本書の主な紹介内容

  • 「なぜ、医療費は高止まりなのか」
  • 「クスリはなぜ多く出てくるのか」
  • 「医者や薬剤師はどれくらい儲かっているのか」
  • 「介護費用はもっと下がらないのか」
  • 「国内最大級のリハビリ病院」
  • 「高収益のグループホーム・老人介護施設」
  • 「介護予算を大幅削減させた地方自治体」
  • 「暴利を貪らない地域密着の調剤薬局」
  • 「障害者と健常者を一体で戦力化したメーカー」

成長産業として医療・介護について成功しているビジネスモデルやの、「医療・介護分野」の関係者へ、ビジネスヒントの提案もあります。

医療・介護業界の現状

日本のGDP550兆円のうち、医療費が43兆円、介護費が12兆円を占めています。

医療・介護業界に雇用されている人材は医師・看護師や理学療法士、介護福祉士など600万人います。

日本を代表する製造業、自動車関連の製造費出荷額が55兆円で、雇用が550万人と肩を並べるまでに巨大化しています。

医療・介護は、大半が税と保険で賄われているため、市場のチェック機能がはたらきにくく、また、その内実がわかりにくいことが課題です。

自動車とは異なり、AI導入などで効率化を進めることができず、人件費の比重が7割にも達している労働集約型の産業です。

少子化が進むにつれ、医療・介護の分野が成長産業になっていき、多くの人が、人生100年時代の後半部分は医療・介護産業に託すことになります。

増え続ける医療費削減策

病気にあなるから医療があり、精神障害があるのは孤独も一因であり、高齢になると介護が必要になる、とそれぞれを縦割り業態で考える習慣を変えることを提言されています。

増え続ける医療費削減策として障害者総合支援法から生まれた障害者のグループホームを一例として紹介されています。

2014年度の調査によると、精神療養病棟に入院する患者の半分が、在宅サービスの支援体制が整えば退院可能な状態にあります。

精神病院からの出口戦略、受け皿を検討する必要があるということです。

ヨーロッパの例rでいうと精神病院の患者数を劇的に減らせたのは、施設への収容から地域での医療・ケアへと転換できたからです。

イギリスやドイツ、オーストラリアでは、社会復帰に向けてグループホーム型の中間施設をつくり、脱精神病院から退院の流れを造りました。

一方、日本では、認知症患者のためのグループホームはかなりのペースで増えていますが、精神病患者としての受け皿になるものが少ない状況にあります。

精神病患者の受け皿を用意すれば、間違いなく精神病院の運営にかかっている医療費を削減できるということです。

医療費削減ばかりが問題ではなく、日本全国には精神障害者と知的障害者が、合わせて500万人います。

彼ら彼女らが就労し、生きがいを持って働くことで、その結果、給付を受ける側から納税する側に移行できることが大切です。

現在、厚労省も就労支援や幼少期から療育を行う放課後等デイサービスも進めているところです。

一石三鳥、四鳥を狙うグループホーム

千葉県八千代市にあるわおん障害者グループホームは、全国各地にフランチャイズ展開する、新しいスタイルのグループホームです。

八千代市の住宅街の空き家7軒で、精神障害者、知的障害者などがそれぞれ3人から4人ずつ居住しています。

ホームは、木造二階建ての家に犬が一匹いる、一見ごく普通の家で、一般家庭と異なるのは、すべての個室に鍵が付いており、アパートのように独立しています。

運営にかかる給付コストは、精神病院の半分になります。

犬が飼われているのは、アニマルセラピーによる癒(いや)し効果を狙っていて、また、会話が得意でない人がいても、犬がコミュニティの中心になってくれます。

わおん障害者グループホームでは、殺処分前の保護犬、保護猫を引き取って、各ホームで飼っています。

わおん障害者グループホームの取り組みは、医療費削減だけではなく、障害者も健常者も共存できる社会づくり、就労促進、空き家対策、ペットの殺処分などの観点でもメリットがあります。

ケアマネジャーの矛盾

ケアマネジャーの役割はこのブログでも以下の通り多く紹介しています。

制度的な矛盾について本書で丁寧に紹介されていてわかりやすいものとなったいます。以下はその抜粋です。

もし両親か配偶者に介護が必要となった場合、介護を依頼する側は市区町村の窓口(あるいは地域包括支援センター)などでケアマネジャーを紹介されます。

ケアマネジャーはどのような介護が必要なのか、ケアプランをつくる介護サービスのキーパーソンです。

いわば命運をユダネルわけだから、医療介護サービス履歴は必要な情報です。

被介護者にとってもケアマネジャーの役割は重要だが、それだけでなく介護費の無駄な給付を抑制する意味でもキーパーソンです。

ケアマネジャーは公正かつ誠実にケアプランを作成しなければならないと介護保険法で義務付けられています。

だがケアマネジャーは介護施設に所属して給与を得ている場合がほとんどなので、その施設を経営している事業者の利益を最大化するためのケアプランを作成しがちです。

ホームヘルパーが訪問介護で食事や入浴の介助をしたりする回数を多めに設定すれば、ヘルパーを派遣する施設の収入が増えます。

たとえば食事と入浴で1時間ずつ(自己負担1割=450円×2)やると9000円施設に給付費が入ります。

おむつの交換、排せつの介助、通院の付き添いなど適正なケアプランをつくるかどうか、サービス供給側の論理のもとづく過剰サービスの提供につながる傾向があります。

ケアマネジャーが施設側に属していれば利用者本位の介護サービスになりにくくなります。

この問題は、介護保険制度の創設以来ずっと懸念されていた事柄でした。

ケアマネジャーが弁護士のような独立した存在で、弁護士同様にケアプラン作成の際に直接に相談料をもらうなどの仕組みになっていない。

ケアプランを1件つくると10,000円ほどの報酬が全額給付されるが、40件を超えると報酬単価が減額されるため大きな収入は見込めません。

事務所維持費などもあるから、とても独立は維持できず、結局、どこかの施設に所属して給料をもらうしかありません。

法人格を別にしてあっても専属契約をしていれば独立しているとはいえません。

その結果独立ケアマネジャーは一割程度でしかない状況です。

ケアマネージャーの公正・中立を確保しつつ、ケアプラン1件につき20,000円に増額したり、介護プラン作成依頼者からも相談料を得られるような仕組みづくりを急がないと膨らむ介護費の抑制は不可能になります。

医療や介護はいわば義務的な経費で、実際にサービスが提供されていまうと自動的に給付費という請求書が届いていまう世界だからです。

必要かどうかわからない手術をしても手術代は払わなければならないように、要らないかもしれない余計な介護をされても介護代を請求されてしまいます。

医療費、介護費の一貫生産システム

医療費と介護費を減らすためには、医療と介護の分野で重複しているシステムを“一貫生産システム”に変える必要があると提言されています。

まず、医療については、元来、大きな病院、中小の病院、診療所などがあって、機能による分類はなされていませんでした。

厚労省はようやく、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」と、機能別に病院・病床を分ける指導を始めています。

急性期を経過した患者は回復期機能を備えた病院、集中的な医療とリハビリテーションを提供できる病院に移り、在宅復帰をめざします。

ところが、リハビリにより在宅復帰がなかなかできないと、長期にわたる入院が必要となります。

医療と介護が接続または重複するのは、回復期と慢性期です。

老人病院には、寝たきりの長期入院患者がいます。

医師・看護師の配置基準を薄くすることで入院費用の点数は下がっているものの、年間1人500万円近くが医療保険から充当されています。

そこで厚労省は2000年、医療費を減らすために介護療養病床を考案しました。

老人病院の病床の一部に介護保険を適用させ、残りは医療療養病床とするという考えです。

そのねらいは、医療の分野から介護の分野へ移動させることによってリハビリ的な要素を持たせること、そして、医療費を削減するために介護費を使うことです。

とはいっても、特養(特別養護老人ホーム)と中身が変わらなければ存在する意味がく、病床を廃止・縮小して、介護療養病床を「介護医療院」へ転換し始めています。

まとめ

身近でありながらなかなか見えてこない医療、介護業界の内実について斬りこんでいます。

その実情は、非常に興味深いものがある一方で、この先このままでは破綻してしまうという不安も感じてしまいます。

給付費の抑制や人手不足対策として介護施設の人員配置基準の柔軟化が提言されればすぐに利用者団体から反対の声が上がります。

持続可能な医療・介護制度を維持していくには痛みを伴う大きな改革は避けて通れないと感じます。

医療・介護制度は多くの有権者が見え隠れするためなかなか前に進めにくい改革であることも理解できますが、本書で猪瀬さんが提言する構造改革は、きわめて合理的で多くの人が理解すれば合意形成されるようにも感じます。

強いリーダーシップで制度の課題を解決しながら構造改革を進めてほしいものです。

あとがきの猪瀬さんの言葉が印象的でいたので紹介します。

日本人は規則を守るという美徳があるが、同時に杓子定規なところがあり、それはこの国を生き辛くし、追い詰めてもいる。

日本の文化は、くそまじめなところだけでなく、いっぽうで「粋」を大切にした。

医療・介護問題のいちばんの課題は財政である。

高齢社会がより進展すると解決が難しくなる。-中略-

ひとりひとりが些事において粋な計らいをできるかである。機転を利かせないと世の中は窮屈になるばかりだ。

本書 あとがき

介護良いケアマネジャーの見分け方 」

失敗しないケアマネージャー選び

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • 総合事業の訪問・通所、住民主体サービス実施は伸び悩み | takamyublog より:

    […] 一部このブログで紹介した本 『日本国・不安の研究「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』で紹介された大東市のように主体的に介護予防を進めている自治体もありますが、そこには突出したリーダーの存在があります。 […]

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