このブログ「介護役立情報」では、事業所選びや介護に携わる仕事についても紹介しています。
今回は介護サービスにおけるデイサービス(通いサービス)やショートステイ(宿泊サービス)の送迎について新たな取り組みについて紹介します。
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送迎業務とは
デイサービス(主に介護・レクリエーション)やデイケア(主にリハビリ)などの通所介護施設やショートステイ(泊りサービス)では、ご利用になる方の送迎を行うことが多く、重要な業務の一つです。
送迎業務は、軽自動車で一人一人乗車していただく場合や、大型のワゴン車やリフト付き車両などで複数名乗車していただき運行する場合もあります。
介護職による送迎は免許のない職員もおり、送迎専用のドライバーを雇用するケースが増えています。
その専用ドライバーも朝と夕方の送迎業務のみの為、時間に余裕のある退職された高齢の方が多く、継続年数・安全性の課題もあります。
シェアリングエコノミーとは
インターネットを通じて、個人や企業が、空いているモノやサービス(時間)などを、それを必要としてる人・企業との間で、交換・共有することです。
介護施設が個別で実施している送迎業務は地域によっては、現状の個別施設がそれぞれ送迎することについて、人材不足の課題が見えてきています。
福祉介護・共同送迎サービス『ゴイッショ』
自動車メーカーのダイハツは21日、複数の通所介護事業所の送迎を地域一体で共同化する新たなサービス「ゴイッショ」の提供を、来年春から始めると発表しました。
もともとダイハツは、2018年より「らくぴた送迎」というインターネットによる送迎業務管理サービスを提供しています。
具体的にはスマホ、パソコン等にシステムを導入し、送迎前・送迎中・送迎後の各シーンの送迎業務をサポートしています。
このサービスは事業所単位の個別のサービスですが、その運用を行うことで地域のドライバー採用に関する人手不足の課題がより浮彫になった経緯があります。
これらの課題解決に向け、2019年10月よりダイハツと香川県三豊市で検討を開始。
2020年11月に実施した実証事業では、介護施設にとって送迎業務を外部委託することにより業務負担が軽減される。
また、地域で共同化することにより効率的な稼働が実現できることなどが明らかになりました。
さらに、他の自治体へヒアリング活動を行う中で、エリアや人口規模に関わらず、同様の課題を抱えている自治体が多い。
このことから、社会受容性が高いモデルであると考え、福祉介護・共同送迎サービス『ゴイッショ』として全国展開することと致しました。
2022年春の提供に先立ち、「ゴイッショ」の導入をご検討いただける自治体様を募集します。
<仕組み>
通所介護施設の送迎業務を地域一体で運行する共同送迎により、施設にとって、送迎業務の負荷軽減による人材不足解消、質の高い介護サービスの環境構築への寄与を目指します。
さらに、地域にとって、高品質な介護サービスを持続的に提供することを目指します。
また、施設の送迎に留まらず、送迎の空き時間を活用し、地域課題にあわせ、「買い物支援などの移動サービス」や「宅食サービスなどモノの配送」を付加することで、地域移動を支援する仕組を目指します。
ダイハツ「ゴイッショ」紹介HP 抜粋
送迎の課題
送迎に関しては高齢の専門ドライバーの人手不足の課題の他に、車いす対応等通常の車両よりも高価な車両本体価格の稼働率の悪さです。
車いす対応のハイエースクラスの車両は電動リフトを設置することで本体価格は通常使用と比べて1.5倍にもなります。
1日の使用であれば福祉車両を低額でレンタルすることも出来ますが事業所が運営する上で耐久消費財としては高額です。
また、自宅へのお迎えの為日常生活圏の車道は狭く、物損事故も後をたちません。
送迎車両の空き時間を活用
送迎に関する課題のうち、福祉車両の生産性を上げる試みを考え、空き時間の活用を模索している事例を紹介します。
送迎車で高齢者の外出支援
長崎県の佐世保市社会福祉協議会(社協)は2020年10月から、運営する介護事業所の福祉車両を活用して、地域の高齢者の外出支援に乗り出す。
事業所の利用者を送迎しない時間帯に、福祉車両を借り受けたボランティア団体が買い物などに出掛ける高齢者を乗せる。
公共交通が不便な小佐々町を皮切りに、市内全域へ広げる計画だ。
九州運輸局によると、こうした福祉車両の活用例は把握していないという。
社協によると、小佐々町の通所型介護事業所で使っている10人乗りの福祉車両を、地元のボランティア団体「こさざ・すまいる会」に無償で貸し出す。
すまいる会は午前10時から午後3時まで、買い物や通院、地域活動に出掛ける高齢者を送迎する。
利用は登録制。料金は一律500円で、運営費や保険料などに充てる。燃料費は社協が負担する。
西日本新聞抜粋
エムダブルエス日高の送迎車両活用法
群馬県に拠点を置く介護事業者「エムダブルエス日高」は5年以上の歳月をかけて送迎車両の有効活用に挑戦しています。
新たなサービスを始めたのは、 2015年1月のことです。
送迎用車両の空き時間を利用して、施設利用者を対象に外出時の送迎サービス提供を開始しました。
月の利用回数が12回以上の利用者を対象にチケットを配布しており、チケット1枚につき片道1回送迎サービスを利用する事をスタートします。
利用者は希望日の前日正午までに利用時間・場所を電話連絡し、送迎用の軽自動車などでサービスを受けます。
そこからスタートし紆余曲折の中現在では送迎車両を呼び出すアプリの開発も行っています。
地方では公共交通手段が少なく、車がなければ生活できません。
高齢ドライバーがひきおこす事故が年々増え、社会問題になっています。
高齢者が免許を返納しても移動手段に困らない社会の仕組みづくりが必要です。
エムダブルエス日高では、高崎~前橋の地域に約80台の送迎車を走らせております。
高齢者や障害者などのデイサービス施設の利用者がスマホを使ってこの送迎車を呼び、通所日のデイサービスへの送り迎えとは別に、「福祉Maas(Maas:Mobility as a Service=複数の公共交通や移動サービスの最適な組み合わせにより検索・予約・決済等を一括で行うサービスのこと)」として目的地までヒッチハイクのように相乗りするサービスを2019年から試みています。
みんなの介護取材 抜粋
このエムダブルエス日高さんの取り組みの中でも白タク問題は出てきています。
まとめ
ウーバーが日本に入ってきた際も「白タク」規制でライドシェアリングが進んでいません。
世界のテック企業をの中で伸び率が著しいライドシェアリングサービスにおいて日本は完全に開発途上国です。
タクシー業界も人手不足が課題の中コロナ禍で、人流が抑制された際には、人を運ぶ以外に物品を運ぶ取り組みなど行っていました。
世界に例のない超高齢化社会がすすむ日本において、高齢者の移動手段の課題はますます大きくなります。
介護福祉の分野では、介護を受ける方が「自分らしく充実した生活を送れているか」を評価します。 「QOLを保つ」「QOLを高める」と表現されます。
QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」「生命の質」などと訳され、患者様の身体的な苦痛の軽減、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味が含まれます。
たとえ介護が必要になっても、ご本人が生きがいや楽しみをもって暮らせるよう支援していく為に自らの意思で移動する手段の構築は必須なことです。
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