このブログ「介護役立つ情報」では、事業所選びや介護の仕事情報等を紹介します。
今回は介護の仕事探しにおいて採用担当者視点で採用コストの削減策について紹介します。
「介護現場が崩壊する」人材紹介料
2020年2月17日、日本介護福祉士会の石本淳也前会長は会見で、「このままでは現場が崩壊する」趣旨の発言を行うほど、人材紹介会社の紹介手数料に苦慮している介護施設・事業所が多いことを伝えています。※介護のニュースサイトJOINT抜粋
高騰し続ける人材紹介料が経営を圧迫していることは、福祉医療機構が2019年10月に全国3568の特養を対象に実施した調査結果にあらわれいます。
調査結果によると、紹介手数料の平均は1人あたり59.7万円。「80万円以上」と答えた施設も24.6%あったと報告されています。
増え続ける採用コストとコロナ禍で高齢者の福祉サービス利用自粛による売り上げ低迷の二重苦で経営状況が悪化している事業者が増加しています。
介護職の離職率に関しては処遇改善加算も功を奏した形で下方傾向であり、その他の接客サービス業と遜色のないところまできています。
介護職の離職率は特別高いわけではない
1年間(平成30年10月〜令和元年9月まで)の訪問介護員、介護職員(2職種計)の離職率は15.4%。昨年度と比較して離職率は横ばい傾向です。
出典:令和元年度 介護労働実態調査結果|介護労働安定センター
増え続ける高齢者数に合わせての新規開設等による人手不足に他業種の人手不足の両方で採用経費を上昇させています。
テクノロジーの活用で若干夜間勤務等の人員基準は緩和されましたが、人手不足を補うまでのインパクトはありません。
技能実習生に関してもコロナ禍で入国数が減り当初の計画通りには進んでいません。
このような状況下では、いかに工夫して採用経費を抑えるかが経営状況に与えるインパクトは更に大きくななります。
採用経費とは
採用経費とは人を雇う際にかかる費用のことで、内部経費と外部経費の2種類があります。
人材紹介や求人広告費など外部経費に目が向かいがちですが、内部経費も大きな経費であると認識する必要があります。
内部経費
求職者との面接や電話対応をはじめとした、採用のためにかかる社員の人件費が主な内容です。
特に小規模事業所においては、管理者や幹部等がこの役割を行い、サービス提供に関わるオペレーションや営業活動に割くべき時間の減らす要因にもなります。
その他、応募者や内定者へ支払う交通費、新卒内定者の懇親会などの経費も掛かります。
外部経費
求人広告費用は紙面・web広告など大きな経費がか掛かります。社内採用サイトを立ち上げる場合にも多くの費用が掛かります。
新卒の会社説明会の参加費や採用ツール制作も多くの費用がかかります。
人材紹介会社への手数料は年々高騰しています。人気の介護求人サイトには、自社と紹介会社が両方掲載し、更に広告料が高騰している要因にもなっています。
採用単価とは
採用単価を出すには以下の計算方法を用います。
内部経費 + 外部経費 = 採用経費総額
採用経費総額 ÷ 採用総人数 = 採用単価
たとえば、採用に年間総額1000万円をかけて20人採用した場合、採用単価は50万円になります。
より正確な採用単価を把握するには、新卒・中途・アルバイト等それぞれの外部経費・内部経費を分けて計算できれば、どの形態の採用経費を削減できるか詳細な戦術を立てることができます。
採用経費の削減戦術
採用コストを削減するには、どのような方法で募集をかけるかが大きなポイントになります。
求人広告、人材紹介、人材派遣、ハローワーク別の経費と採用になるまでの決定率・手間など、内部経費の削減効果を一覧表にしました。
起業規模と就業場所や職種の多さにもよりますが、ある程度の規模がある事業所は採用担当を選任し、独自の採用戦略を立てることをお勧めします。
上記のイメージも参考に今現在有効な採用方法を紹介します。今後は有効求人倍率など外部要因で影響されることもありますので、都度見直しをしていく必要があります。
それぞれの求人の特徴
求人掲載サイトのそれぞれの特徴やメリット・デメリットについて紹介します。具体的な求人転職サイトの情報は独断で以前のこのブログで紹介しました。
今回は全体的な費用相場感など初めて採用担当になられた方が理解しやすい形で紹介いたします。
掲載課金型
新聞や求人誌などの紙媒体も含め、求人情報サイト(介護特化サイト含む)に掲載することで料金が発生します。
新聞折込ではディスター・アイデムなどがあり、情報誌ではタウンワークなど紙媒体(掲載時プラスセット料金でネット掲載)です。
一般中途求人サイトでリクルートエージェント・リクナビNEXTやdodaなのです。求人情報量が圧倒的に多く採用サイドにしてみれば競合他社が多く正直反響は少ないのが実感です。
一般中途求人サイトに掲載するのであれば介護に特化した求人サイトの定額もあります。こちらには紹介会社が大量の費用をかけて掲載しているのでレッドオーシャンな感じが否めません。
新卒採用のマイナビ・リクナビなどもこの掲載方法です。1年以上とロング掲載になりますが、費用も100万以上が当たり前になってきています。それ以下のスペックでは反響は少ない状況です。
ここ数年ワンキャリアの採用サイトを活用する企業と学生が増えています。優秀な人材を採用するために手間暇を惜しまない傾向です。
かなり費用をかけてフルスペックの掲載をするのであればかなりの費用が掛かり従業員数が300人以下の中小介護事業所には馴染まないように思います。
メリット
- 何人採用しても採用費用が変わらず、予算を立て計画的に運用ができます。
- 多くの人が閲覧する可能性が高い求人媒体が多いです。
- 求人原稿の作成にキラーワードなどライターが掲載情報を手伝ってくれ手間がかかりません。
- 原稿掲載キラーメッセージ等自社のサイトに汎用できます。
デメリット
- 掲載に関して費用が発生するので、採用者がゼロでも経費が発生します。
- 掲載競合他社が多く問い合わせ案件がない場合もあります。
費用相場
1週間~数万円~十数万程度(新聞折込・情報誌・掲載サイト)
新卒サイト年間 30万~100万以上(フルスペック機能)
応募課金型
求人掲載を見て求人への応募があった場合、その成果として料金が発生します。以前のブログでも紹介したとおり、以前は介護求人に特化した採用サイトからの応募案件が多かった時期もありました。
手軽のスマホで採用サイトにアクセスするようになってから、派遣会社・人材紹介会社もこぞって掲載するので自社の求人までたどり着く応募者が少なくなった感は否めません。
クリック単価課金の中心サイトはインディードです。採用に特化した検索サイトなので、システムを理解し上手に付き合う必要があります。
メリット
- 掲載料が無料です。
- 広く母集団を形成できるので、引っ越し先での求人探しなどは応募者にもメリットがあります。
デメリット
- 応募が入った時点で課金されるため、応募者が多いと費用が割高になります。(上限額が決めれます)
- 選考段階で応募者と連絡が取れなくなった場合や、内定を辞退された場合でも費用が発生します。
- 募集原稿作成は事業者が行い多くの事業所・職種の担当者は手間が掛かります。
- クリックひとつで簡単に応募できる為、応募者との電話連絡・面接日程調整など管理業務が増えます。
費用相場
クリック単価は年々上がっています。大手介護求人サイトは1クリック2万以上は当たり前です。
インディードのクリック単価は掲載情報数により異なりますが上位表示には工夫と費用が高くなる傾向があります。
完全成功報酬型
掲載・応募までは無料で実際に採用が決まり勤務を開始することで料金が発生します。介護求人サイトのスタンダードはこの形態にシフトしています。
独自サイトではジョブメドレーやインディードとの連携サイトAirワークやengageなどが反応がいいように思います。
メリット
- 掲載料が無料です。
- 応募者が多くても、採用に至らなければ費用が発生しないので、不採用者に費用発生がありません。
- 年齢・職歴・地域などから採用担当者が候補者に直接アプローチできるサイトが多くあります。
デメリット
- 掲載課金型に比べる集客が弱い傾向は否めず、全体応募は少ない傾向です。
- 募集原稿作成は事業者が行い多くの事業所・職種の担当者は手間が掛かります。
- クリックひとつで簡単に応募できる為、応募者との電話連絡・面接日程調整など管理業務が増えます。
- クリック単価の応募課金型より採用経費は高くなります。
費用相場
数万円~数十万円(介護福祉士資格者の費用相場な10万~20万です)
人材紹介
人材紹介サービスです。まずは人材紹介会社に登録します。そこから求職者を紹介してもらい、採用が確定すると費用が発生します。
一番案件提案は多いですが広告費用を多くかけていて、応募者も複数エントリーしているケースがあり複数紹介会社から提案される事例も増えています。
メリット
- 初期費用がかからず、求人情報も人材会社が自主的に探す為手間暇がかかりません。
- 採用担当が面接調整まで業務を省くことができます。
- エリアや採用事業所の規模によりますが、専任担当者がつき、効率のよい採用活動ができる場合があります。
デメリット
- 他の採用活動より採用経費が一番高く小規模事業所では依頼しにくい傾向があります。
- 介護人材紹介業界への参入障壁が低く参入が多く人材紹介コンサルティングの質が悪い業者も多いです。
- 上記から応募者のフィルターチェックが機能せず、日程調整後のキャンセルや音信不通なども起こる傾向にあります。
費用相場
50~80万円程度 年収の約20%~30%で提示されますが値引き交渉で15~20%前後になる可能性もあります。
人材派遣
人材派遣会社から登録しているスタッフを派遣してもらうことで派遣料金が発生します。
メリット
- 採用コストと手間を削減できます。
- 即戦力になる人材を確保できる場合があります。
- 入社手続きや保険加入等労務管理の手間が省けます。
デメリット
- 最長期間が決まっているため、専門的なスキルが育たない傾向にあります。
- 事業所判断になりますが、デイ送迎や夜勤勤務など任せられる業務が限定されます。
- 派遣会社への手数料が発生するため、月々の費用が高額です。
- 中には直接雇用されず、派遣社員でしか働けない、スキルの低い人材もいます。
費用相場
採用スタッフの年収の約20~30% 時間給でみると自社時給プラス1000円程度のイメージです。
ハローワーク
事業所のある地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に申し込むことで、無料でハローワークの求人情報へ掲載されます。紹介してもらった場合も紹介料などは発生しません。
インターネットに疎い中高齢者が比較的多いよいうに思います。
メリット
- 採用コストがかかりません。
- 条件によっては特定求職者雇用開発助成金などの助成を受けることが出来ます。
デメリット
- 掲載や選考などの手続きに手間がかかります。
- 3か月に1度掲載する必要があります。
- 情報量が少ない為、採用ターゲットと異なる応募もあります。
- 掲載情報も特定のルール化で柔軟な表現で掲載出来ません。
- 退職中の方が多く、比較的中高年の応募が多くなります。
採用コストを削減する6つの方法
それぞれの求人媒体のメリット・デメリット、費用相場を肌感覚でお伝えしましたが、地域によって相違はあると思いますのでご了承下さい。
今回は上記の採用経費を念頭に採用コストを削減する提案を紹介します。
ミスマッチを防ぐ
せっかく経費をかけて採用しても、早期に退職されたのでは採用にかけたコストが無駄になってしまいます。
特に人材紹介等は費用が多額に掛かることを応募者に伝えた方が最近の傾向ではいいように思います。そうすることで応募者本人も自らのスキルがその相場感にあるかも判断でき、安易な転職を防ぐ効果にも繋がります。
採用のミスマッチの原因は入社前後のギャップにあります。「思っていた内容と違っていた」「社風が合わなかった」ということがないよう丁寧な説明が必要です。
誤解したまま何も言わず退職する事例を減らすために、メンター制度等が有効です。
求人広告媒体の見直し
有料の求人広告を有効活用できていないのであれば、求人広告媒体との相性も含め見直しを検討してみましょう。
インディードのシステムを理解し上位表示と自社の求人サイトの連携をお勧めします。
上位表示の為には、インディードのクローラを理解し検索ワードや掲載時期などやれる手段はたくさんあります。
以下に心がけて掲載内容を検討してみて下さい。
- 検索ワードを意識する。
- ターゲットの登録者数、他社の掲載情報
- 出稿のタイミング
- 募集原稿の内容
場合によってはインディードの求人をSEO対策に強いweb系の業者に依頼する方法もひとつです。
ソーシャルリクルーティング(SNS)の強化
ブログをはじめFacebookやInstagram、Twitterなどを活用した採用活動を行っている企業も増えています。
採用担当者が継続して情報を発信することで効果は次第にあがっていきます。
発信者は現場経験のある採用に携わる人がベストです。
自らがつまずいた点ややりがいなどリアルな生の声ほど熱量が伝わります。
SNSは無料で採用活動が可能なためコストの削減につながります。
SNSを用いた採用は、応募数を増やす目的ではなく、自社の求める人材について多く発信し、ミスマッチを防ぎます。
自社サイトの内容を充実させる
自社サイトだけで人材確保をするのは困難です。
それでも自社に魅力を伝えるには有効です。
興味・共感を持ってもらうようなサイト作りに配慮してみて下さい。
企業理念や社長や施設長のメッセージはもちろんのこと、そこで働く職員の様子や研修風景など職場の雰囲気を伝えることができれば十分です。
日々更新を行い継続して発信していくことが効果的です。
リファラル採用の強化
リファラルとは「職員紹介採用」のことです。
職員からの紹介は会社の雰囲気や仕事内容も直接伝えれるので、ミスマッチが少なくなります。
また、人材紹介会社に紹介料を支払うのであれば、紹介者の職員に紹介料を支払うことも可能です。
リファラル採用を増やしていく前提はまずは職場環境をよくすることです。
離職率が高く慢性的な人手不足の職場に大切な知人を紹介することはありません。
複数の事業所を運営されている事業者の採用担当者はそのあたりにも配慮する必要があります。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 介護事業所 採用コスト削減方法 2021年最新版 […]