SDGsには17の大きな目標があり、それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
今回は、米パタゴニア(Patagonia)の創業者イヴォン・シュイナードが9月14日(米国時間)、同社が生み出す事業利益を気候変動対策に充てるため、新たに設立したトラストと非営利団体に全株式を移管すると発表したニュースを紹介します。
パタゴニア(Patagonia )
パタゴニア(Patagonia )とは、アメリカの登山用品、サーフィン用品、アウトドア用品、軍用品、衣料品の製造販売を手掛けるメーカー、及びそのブランド名。環境に配慮する商品で知られており、環境問題に取り組むグループの助成を行っている[1]。日本での事業を取り纏めるパタゴニア・インターナショナル・インク日本支社の所在地は横浜市戸塚区[2]。
ウィキペディア
パタゴニアは、イヴォン・シュイナード氏が1973年にアメリカ・カリフォルニア州で立ち上げた、アウトドアのウェアや用品を取り扱うブランド。
明確な思想を掲げているため、消費者の中で好き嫌いが大きく別れながらも、アメリカをはじめ日本や世界中でも熱狂的なファンを集めています。
地球が私たちの唯一の株主 / イヴォン・シュイナードの手紙
今回の一連の株式委託・譲渡に関する創業者イヴォン・シュイナードのメッセージは以下の通りです。
事業の繁栄を大きく抑えてでも地球の繁栄を望むのならば、私たち全員が今手にしているリソースでできることを行う必要があります。
これが私たちにできることです。
イヴォン・シュイナード
私はビジネスマンになりたいと思ったことはありません。
クライミング用具を友人や自分用に作る職人から始めて、後にアパレルの世界に入りました。
世界中で温暖化や環境破壊が広がり、自分たちのビジネスが及ぼす影響を目の当たりにするようになったことで、パタゴニアは自分たちの会社を活用して、これまでのビジネスのやり方を変えることに取り組んできました。
正しい行いをしながら生活に十分な資金が稼げるならば、顧客や他のビジネスにも影響を与えられるし、そうしている間にこの仕組みも変えられるだろう、と。
まずは製品に環境負荷が少ない素材を使用することから始めました。
毎年売上の1%を寄付しました。
Bコーポレーション認証を受け、カリフォルニア州のベネフィット・コーポレーションとなり、私たちの価値観を保持するために会社定款にこれを記載しました。
最近では2018年に、パタゴニアの目的を「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」に変更しました。
環境危機への取り組みにベストを尽くしてきましたが十分ではありません。
私たちはパタゴニアの価値観を維持しつつ、この危機と闘うためにより多くの資金を投入する方法を見つける必要がありました。
“本当のところ、優れた選択肢はなかったのです。だから自分たちで作りました。”
選択肢の一つはパタゴニアを売却してその売却益をすべて寄付すること。
しかし、私たちの価値観や世界中で雇用されている人材を維持してくれる新たなオーナー(所有者)を見つけられるという確信はありませんでした。
もう一つの選択肢は、会社の株式を公開することでした。
とんでもない失敗になったでしょう。
どんなに素晴らしい志のある公開会社でも、短期的な利益を得るために長期的な活力や責任を犠牲にしなければならないという過剰なプレッシャーに晒されます。
私たちは「株式公開に進む(Going public)」のではなく、「目的に進む(Going purpose)」のです。
自然から価値あるものを収奪して投資家の富に変えるのではなく、パタゴニアが生み出す富をすべての富の源を守るために使用します。
その仕組みは、会社の議決権付株式の100%を会社の価値観を守るために設定されたthe Patagonia Purpose Trustに譲渡し、無議決権株式の100%を環境危機と闘い自然を守る非営利団体the Holdfast Collectiveに譲渡する、というものです。
また、毎年、事業に再投資を行った後の剰余利益を配当金として分配することで、パタゴニアから環境危機と闘うための資金を提供します。
私たちが責任ある事業という試みを始めてから約50年になり、それはまだ始まったばかりです。
事業の繁栄を大きく抑えてでも今後50年間の地球の繁栄を望むのならば、私たち全員が今手にしているリソースでできることを行う必要があります。
これが、私たちが見つけたもう一つの方法です。
地球のリソースは、莫大ではありますが無限ではありません。
そして、私たちがその限界を超えてしまっていることは明らかです。
しかし、まだ回復可能です。
私たちが最大限努力すれば地球を救うことができるのです。
イヴォン・シュイナードの手紙
パタゴニアの創業者であるイボン・シュイナード氏(83)は、本人と家族で保有していた同社の発行済み株式のすべてを寄付したことを明らかにしました。
米ニューヨーク・タイムズによると、30億ドル(約4300億円)に相当するそうです。
利益を環境保護活動に投じる新たな枠組みは、イヴォン・シュイナードの手紙に詳しく説明されています。
株式の98%を環境NPOのホールドファスト・コレクティブに移したほか、残りをパタゴニア・パーパス・トラストに信託する形としています。
議決権はすべてトラストが握り、環境を重視する経営理念を守るように監視する方法です。
シュイナード氏は、全株式を売却して現金を寄付することを考えましたが、経営理念を維持できなくなる可能性があるとして断念しました。
新規株式公開(IPO)も検討したが、「長期的な活力や責任が短期的な収益を求める圧力の犠牲になる」と判断しました。
同社は配当金の規模感を年1億ドル(約140億円)と見積もっている模様です。
同社は財務情報を公開していないものの、米フォーブスの試算によれば、年間売上高は8億ドル(約1100億円)です。「パタゴニアの広報担当は『不正確である可能性が高い』と述べています。」
今回の決定について、シュイナードは米ニューヨーク・タイムズ(9月14日付)の取材に応じ、以下の様に述べています。
同社の動きが「少数の富裕層と大勢の貧しい人々という構図に帰結しない、新たな形の資本主義(の形成)に影響をもたらす」ことを期待する
今後は「地球を救うために積極的に活動している人たちに対して最大限の資金を提供していく」と語っています。る
米ニューヨーク・タイムズ
パタゴニアの株式移転の仕組みづくりを支援した米マーチャントバンクBDT(ウォーレン・バフェットら著名資産家のお気に入りとして知られる)のダン・モズレーは上記のニューヨーク・タイムズ記事で、パタゴニアの今回の判断は過去に類を見ないものと評しています。
シュイナード・ファミリーは、ここまで生涯を通じて財産のほとんどを寄付しており、アメリカで最も慈善活動に熱心なファミリー企業です。
大富豪による慈善活動家
「裕福な人はその富を浪費するよりも、社会がより豊かになるために使うべきだ 」
貧しいスコットランド移民 から全米の「鋼鉄王」と呼ばれる大富豪に上り詰めたアンドリュー・カーネギー氏 。
彼は著書『富の福音 』のなかで上記のように述べている。
カーネギー氏は、文字通りアメリカンドリームを象徴する「伝説の大富豪」であるが、一方で、事業で築いた莫大な富を2,500以上の図書館建設等の社会福祉に投じるなど、フィランソロピー(慈善活動家)としても、その名を歴史に残している。
フィランソロピーとしてのカーネギー氏の精神は、多くの資産家に継承されている。
たとえば、ビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏がカーネギー氏の影響を受けて、寄付啓蒙活動「ギビング・プレッジ (資産家が生前もしくは死後に自身の資産の半分以上を慈善活動に寄付するという寄付誓約宣言)」を設立しています。
ギビング・プレッジには2015年9月時点で150名の誓約者が登録しており、そのなかには映画監督のジョージ・ルーカス氏や前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏、ビジネスソフトウェア企業オラクルの共同設立者のラリー・エリソン氏、メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)、著名投資家のカール・アイカーン氏などが名を連ねている。
ZUU online 抜粋
上記の通り米国では「ギビング・プレッジ」は有名ですが、今回のシュイナード氏の取り組みはそれを上回る「全株の寄付」なので、富豪の社会貢献のありかたにも一石を投じる形になりそうです。
パタゴニア創業者、巨額寄付の真実
この記事は、米Quartzから一記事の翻訳としてお届けします。NEWS PICS 参照
大きな話題をさらったこのニュースだが、実はその真相はあまり伝わっていない。
この措置のポイントは、シュイナード家がパタゴニアの支配権を維持しつつ、気候変動対策を推進するNGOに莫大な活動資金をもたらし、さらに一連の取引に関わる税負担を事実上ないに等しくしたことだ。
具体的には、パタゴニアの株式の98%が1つのNGOに寄付されるが、それについてシュイナードに贈与税は生じないのだ。
NEWS PICS 参照
米国では8月にも、シカゴの実業家バリー・サイドが、自らの所有する電気機器メーカーのトリップライト(Tripp Lite)の全株を保守系政治団体に寄付している。
こちらは気候変動対策に反対する人物が代表を務める団体で、シュイナードが寄付した環境NGOと方向性は正反対だ。
だが、税金対策という意味では、やっていることは同じという見方もある。
Quartzは、ニューヨーク大学法科大学院のダニエル・ヘメル教授(行政法・非営利団体・税法)に、シュイナード家の決定と、サイドの寄付との違い、そしてメディアの報道について話を聞いた。
NEWS PICS 参照
①わずか「2%」の贈与税
──今回のパタゴニアの措置は慈善行為なのでしょうか、それとも租税回避か、それともその中間なのでしょうか。
そのすべてでしょう。
シュイナード家はパタゴニアを使って世界をより良い場所にしようとしている。そしてそれを、税制的に有利な方法でやろうとしている。とても、とても、たくさんの慈善活動家が利用しているのと同じ仕組みを使ってね。
株の寄付を受けた非課税団体は、その株式の配当金を受け取ったり、売却したりしても税金がかかりません。これは、内国歳入法(IRC)501(c)(3)条の公益団体(典型的な非営利慈善団体)でも、501(c)(4)条団体(市民団体や社会福祉団体。政治団体も含まれる)でも同じです。
シュイナード家は、慈善団体に寄付をしたとき、項目別税額控除を受けようとする10%のアメリカ人とは違う方法で、控除を受けようとしています。
多くの大型寄付案件では、寄付先が501(c)(3)条団体であれ、501(c)(4)条団体であれ、寄付者にとって控除効果はさほど重要ではありません。多くの慈善活動家(寄付者)は、税負担を最小限に抑える方法をとっくに考えてあるからです。
たしかにウォーレン・バフェットが、バークシャー・ハサウェイの株をゲイツ財団に寄付すれば、わずかな控除を受けることは可能ですが、そもそも寄付額と比べると課税所得はごくわずかですから、所得控除など微々たるものなのです。
本当に重要なのは、ゲイツ財団がその株を売却しても税金がかからないことです。それは脱税ではなく、合法的な租税回避と言えるでしょう。
──でも、シュイナード家は今回、1700万ドルの贈与税を払いますよね?
そんなのは、ほとんどどうでもいいわずかな金額です。実際の贈与の規模を考えれば、ごく少額なのですから。
シュイナード家は、パタゴニアの支配権は維持したいと思っている。それなのにパタゴニアの株をすべて501(c)(4)条団体に寄付してしまったら、その団体がパタゴニアを支配することになります。
そこで彼らは二重株式構造をつくりました。
グーグル(アルファベット)やザ・ニューヨーク・タイムズ・カンパニーもやっているように、一握りの内部の株主が、大多数の一般株主よりも大きな議決権を持つ仕組みです。
その上で、98%の株式を501(c)(4)団体に寄付し、残りの2%の議決権付き株式の持ち分を家族信託に組み入れた。家族信託は非課税団体ではありませんから、贈与には40%の税金がかかります。だから1700万ドルの贈与税を払うことになったわけです。
でも、わずか2%分の株式に対する贈与税ですよ。
30億ドル(推定されるパタゴニアの企業価値)を普通に贈与すれば、12億ドルもの贈与税がかかるのです。そう考えると、シュイナード家が全株を手放すにあたり、贈与税をほとんど払わなくて済んだと言えるでしょう。
──今回のパタゴニアの税金対策や、この税制についてどう思いますか。
まず、ニューヨーク・タイムズ紙に違和感を覚えました。
実質的に同じような贈与なのに、報じ方が違っていましたから。第2に、501(c)(3)条団体や(c)(4)条団体に株式を贈与しても、贈与税もキャピタルゲイン課税もかからないということは、莫大な財を成しても、政府を通さずに、つまり基本的に税金を払わずに、それを運用できるということです。
ゲイツやバフェット、マーク・ザッカーバーグ、サイド、シュイナードらがやっているのは、まさにそれです。
慈善団体への寄付を政府が推進するのはわかりますが、このような形はおかしいと思います。
しかもその恩恵を、慈善的な活動を全くする必要のない(c)(4)団体にまで認めるのは、もっとおかしいと思います。
とはいえ、すでにこの制度が存在すること、そして気候変動が喫緊の課題であることを考えると、リベラル派が「我々はできるだけ多くの税金を払うつもりだ」などと言うのは聞きたくない。
彼らから聞きたいのは、「それなら税法の改正に力を注ごう。そしてそれまでは、現行のルールに従おう」という言葉です。
NEWS PICS 抜粋
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